第37話 同じ蟹鍋をつついた仲間たち
「うまいっすねぇ。この蟹鍋は身がしまっていてぷりっぷり」
ホクホク顔の太った男、ポンヤ。少しお調子者で剣と盾を扱う。
「本当に申し訳ありません。迷惑かけちゃって……見たところによるとあなたは最近この世界に来た人ですよね」
対外的にとても気を遣う彼は、利幸。僕より前にこの世界にきたようである。
「まったく利幸はいつもこうなんだから。折角こんなに美味しそうな蟹鍋が目の前にあるんだから楽しい気分にならなくっちゃ」
紅一点、楽観的に物事を捉え、楽しい雰囲気にする彼女はセイロン。
「みるるといいます。彼女たちは、ひなつ、あんこ、わさびです」、言葉に合わせて軽く会釈をする彼女たち。
「ねえ利幸、今回の転移騒動はこの世界始まって以来だって言ってたよね」
「確かにね。セイロンの言う通り、今までは1年に1度程度、数人この世界に転移してくる人がいた程度なのですが、あなたたちは何十人と一気に送られてきたのです」
「えっ? そんなにたくさん……みなさんは何を目的に旅をしているんですか」
吹き抜ける一筋の風が蟹を茹でる薪の炎を大きく燃え上がらせる。鍋から飛び出た蟹の脚が黒く焦げ付き何事も無かったかのようにポンヤが掴んで食べ始める。
「思ったんです。この世界に飛ばされてきたという事は、逆もあるんじゃないかって。実は僕、この世界に来たのは2回目らしいのです……
利幸の話しでは、この世界に来て4年、その前は高校生の記憶が残っているが、明らかにその時の容姿と違っているってことらしい。確かに30歳位に見える。
……一緒に転移した同級生がいたのですが、僕のことを覚えていませんでした。そこで思ったんです。高校生で飛ばされた僕はもう一度日本に戻った。そしてまた飛ばされたんじゃないかって。その間の記憶が消されているんじゃないかって。そんな話しをしたらセイロンが
「じゃあみんなで色々巡って探してみよーって言ったのよね」
「それで鍵を集めているってことですか?」
「そうなのよ。鍵を集めればきっと世界のことが分かるんじゃないかってね」
「みるるさんはどうしてこんなところに?」
「僕も彼女たちと鍵を探しているんだ。成り行きだけどね……アハハ……今は彼女たちと出会って間もないからお互いのことを知ろうとここで生活してるんだ」
本当の理由は言えなかった。鍵を集めるのは建て前、わさびはユニコーン族へ送り届けるとして、世界を巡る中でひなつとあんこのふたりを家族の元に送り届けながら一葉を探したいと思っている。
* * *
その晩、女子会が行われていた。セイロンの一言で始まった恋バナ。
「ひなつさんはみるるさんのことが好きなんでしょ。見てれば分かるわ」
「Σ(ОД○*)」
「ひなは分かりやすいからな、わたくしは夫婦になるために一緒にいるのです」
「拙者はれんあいなぞ興味がないでござる。みるる殿には拾ってもらった恩がある故、護衛をしているのでござる」
「なんか仲間って感じでいいよね。私も好きな人と恋愛してみたいなぁ……」
「ΣΣ(゜Д゜;)」
「大丈夫よひなつさん、流石にみるるさんをとったりしないわ」
「セイロンは、一緒に冒険しているふたりのことはどう想っているのかしら」
「<●><●>」
「ひなつさん、そんな目で見ないでよ。……ハハハ、嫌いじゃないわよ。恋愛するより今の関係で一緒に冒険するのが一番楽しいの。慎重な利幸、お調子者のポンヤ、そんなふたりといると嫌なことが忘れられるのよ」
「(o゜-゜o)?」
「ひなには難しい話しですね。セイロンは自分の人生を生きる中で答えを見つけていけば良いでしょう」
「(o゜-゜o)??」
「わさびさんは妙に大人びているんですね。もしかして実は経験豊富なお姉さんだったりして」
「うふふ、セイロンさん。わたくしは客観的に言っているだけですよ。それにみんな同じ17歳です」
一気に後ずさりするセイロン、ピクリとするあんこ。
「えええ、ひなつさんとわさびさんは分かる。あんこさんも同じじゅうななさい!」
「セイロン殿、聞こえなくても分かるでござるよ。拙者のことをバカにしているでござるな」
「あんこさんは耳が聞こえないのよね。わたしたちの話しが分かってるように見えるけど」
「あんはね、わたくしとみるるの声は聞こえるのよ。ねぇ」
「そうでござる。何故なのかは『一族の秘伝』と言うように言われたででござる」
「p(*^-^*)q」
そんなこんなで夜は更けていった……そのころ、男部屋の方は全く盛り上がることはなかった。
* * *
「楽しかったわ。またどこかで会いましょう」
「蟹鍋美味しかったっす。また一緒にどこかでご飯を食べるっすよ」
「皆様、ありがとうございました。今度会った時はお礼させてください」
深々と頭を避ける利幸、セイロンに「かたーい! そんなんじゃあ仲良くなれないよー」と言われ、ポンヤには「そうっすよ。笑顔っす、こういう時は美味しいものを食べるような笑顔を振りまくっすよ」
「「「じゃあ、またどこかで (ござる)」」」
「p(*^-^*)q」
笑顔で利幸たちと別れた。ワイワイガヤガヤ光の精霊でも連れているんじゃないかと思うほどに明るさに包まれていた。
──数日後
パーティーの連携を深め技術を高め能力を把握。様々なことを学び有意義な時間を過ごした。
「あれ、馬車を牽いていたのって誰だっけ」
「みるる殿ではなかったでござるか」
「(゜ω゜)(。_。)ウンウン」
「そうだったかな~。言われてみればそんな気もするけど……ゆっくりしすぎて記憶から抜けちゃったのかもしれないね」
神妙な面持ちのわさび、僕たちはスカイブに向けて旅立った。
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《登場人物紹介》
・三流 所持金:金2,422:銀1大銅1銅1
・日向夏
猫耳ヘアーの女の子。喋れない。
・餡子
巫女のような服を着た女の子。聞こえない。
・山葵
ユニコーン族王女、オッドアイだが目が見えない。
通りすがりの冒険者
・セイロン 可愛らしい女の子。同じ年位。
・ポンヤ パンダ体型の男性
・利幸 普通の男性、慎重らしい。




