第35話 みんなを知ろう
マタシバから北に向かった小高い丘、草原に囲まれ風が遮られることなく吹き抜ける場所。時折強い風が緑の香りを連れてくる。
「ここに家を建てようと思うんだ」
「みるる殿、どういうことでござるか」
「ロンリを目指すミミには悪いんだけど、僕たちだけの力で生きられるか知りたい。これから先、何が起こるか分からないからみんなの力と僕のスキルを把握しておきたいんだ」
「|(*゜∀゜)*。_。)《にぱっ》」「良いでござるよ」「わたくしはみるる様と一緒なら」と急なお願いに快く了解し、ミミも「みんなと一緒にいた方が楽しいなー」と寂しげに頷いた。
まずは建物を作成、異次元ポケットにしまっておいた木材を『物理組換』で立方体にして組み上げていく。
* * *
「できたー!」
立派なログハウス。しかも二階建て、猫の額ほどの土地だが畑を作って柵で囲った。
ブロックを積み上げるサンドボックス型のクラフトゲームを参考にしたのは言うまでもない。
「それじゃあ、一応みんなのレベルを見せてもらってもいいかな」
ひなつ レベル:18 スキル:猫耳髪作成
あんこ レベル:32 スキル:武器長短
わさび レベル:25 スキル:精密射撃
「拙者はなんでこんなにレベルが高くなっているでござるか」
「あんは、みるる様と一緒に異魔人を退けたからレベルが上がったのかもしれませんね」
「それであればひなつもレベルが上がっているはずでござる」 (わさびの言葉はミミ経由で伝わっております)
どうやら表示詐称スキルでプレートをいじると、詐称時の値が保持されてしまうようだ。
実際の数値を確認してみるとひなつのレベルは38であった。
「Σ(ОД○*)」
「ひなつ殿、凄いでござるな。普通の魔物を相手にしていたら30はどうやっても越えないでござるよ」
「みるる様のレベルはいくつなのでしょうね」
「うーん、どうやらこの世界に来た時、池に落ちたせいで壊れてしまったらしいんだ。だから詐称しないとレベル1のままなんだよ」
「そうでしたか……と、言うことはみるる様が落ちたのは神の池ですね」
「神の池?」
この世界には『神の水』が溜まる池がいくつか点在して、資格を持たない者が触れると神罰が下るようだ。
「その水に触れるとプレートが壊れるんですか」
「そうです。でもその水に触れて生きているみるる様はなにか特別な運命を背負っているのかもしれませんね」
運命。確かにそうなのかもしれない。瑠璃色の少女、そして得た属性の理。この力にどんな意味があるのか、そして鍵を集めた先に何があるのだろうか。
「じゃあ、早速みんなの力を見せてもらっていいかな」
まずはひなつ、スキルは『猫耳詐称』を表示しているが、把握しているのは言霊詠唱と優斗先輩を見破ったスキルの2つ、短剣で2刀流を使えるが本業は魔法使いだろう。
「|(/>_<)/《えい》」──火炎放射を更に強くした炎が噴き出す。
「|(/>_<)/《やー》」──高圧洗浄を更に鋭くした水が噴き出す。
「|(/>_<)/《とー》」──巨大落石を凝縮した強固な岩が飛ぶ。
「|(/>_<)/《うー》」──美しい氷の結晶が辺り一面を凍らせる。
「|(/>_<)/《がー》」──旋風が徐々に──
「ああ、ひなつもういいから大丈夫大丈夫」
慌てて魔法を止めさせる。辺り一面を荒野にしかねない。
「ひなはレベルが上がったことで魔力を放出する出口が広がったのね。今のままじゃ危ないから、普段はもう少し下位の魔法を覚えなさい」
「|(゜ω゜)(。_。)ウンウン《素早く頷く》」
そしてあんこ、スキルは『武器長短』。そして新しく覚えた『百花繚乱』、このスキルを使えば能力がアップされ大人になる。ゲーム脳で考えると、体に入りきれないエネルギーを補うためか、人生で一番力のある状態に変化させるのであろう。
「行くでござる」──巨大化した刀が空を切り裂く。
「えいでござる」──放たれた弓……どこまで飛んでいったのだろう。
「やーでござる」──振り下ろした斧が地面を抉る。
「とーでござる」──巨大なハンマーが──
「ああ、あんこ、もういいから」
「あんはレベルが上がったことで全体的な威力が上がったのね。普段はもう少し加減しないとダメね。ミミ、通訳して」
「あんこは、百花繚乱スキルは危なくない場面で使用を控えてね。容姿も変わるし大人の姿で戦ったら危ないから」
「百花繚乱」
8頭身の美しい女性、巫女のような服装、艶やかな黒いロングヘアーは和風美人を思わせる。ゆっくりと歩いてくるあんこ。
「そのスキルは凄いね。同一人物とは思えないよ」
「みるる殿はこの姿の方が好みであろう」
頬をつんつん突いてくる。なんかもう性格まで変わってしまっているような。
「みるる様、あんのその姿は、性格まで変えるみたいですね。女性ホルモンが何倍も出て色気を演出しているようです。嫁候補が増えましたね」
カラカラ笑うわさび。
「あんこ、元の姿に戻ってよ」とお願いする。元の姿に戻ったあんこはさっきまでの色気はどこ吹く風、普段通りのマイペースに戻っていた。
「みるる様、それでは次はわたくしの番ですね。みるる様はそちらに立ってガードしてください。できれば全身を守っていただけるとよろしいかと思います」
わさびはどこからともなく弓を取り出した。微かに光に包まれている。矢筒もなく矢を持っている様子もない。
「わさびの持ってるスキルは『精密射撃』だったよね」
「そうです、わたくしの『精密射撃』は寸分なく狙った先を射止めることができます。でもそれだけなので動けば避けることができます。みるる様は出来るだけ避けるようにお願いします」
わさびの実力はどの程度なのであろうか。この時、レベルという数字に捉われてしまっていた。
==========
プレートには2つの機能がある。
①レベルなど本人ら情報を読み取る機能。
②お金や称号などの後天的な記録を保持する機能。
③プレート内容は表示、書換(②のみ)する機能
表示詐称スキルは、①に隠れた記憶領域がありこの部分に値を入れ込むことでそれを表示させるスキルである。書換えた値以外の項目は値がコピーされる。




