第29話 甘くも辛い山葵
「素晴らしい、素晴らしいぞ君は。約束通りユニコーン族の王女を返そうじゃないか」
男は大きくジャンプをした。その姿は舞うように美しく中央にふわりと着地する。
「あなたは……」
ジアンと同等の体格、今ある知識で言えばライオンの半亜人といったところだろうか。鬣のような豪快な髪型、漂う王者の風格。
「ユニコーン族のに私のことを知らない者がいるとはな、まぁ良い、ワシはダイモーン族の王、テオスだ。お前の戦いは素晴らしかったぞ」
「ダイモーン?」
「お前はダイモーンも知らないのか!……本当にユニコーンの人間か!」
そもそもなりゆきで連れてこられた上にバトルまでやらされて……ユニコーンにダイモーンっていったい何なんだぁ。
「テオス様大変です!」
甲冑の男が走ってきた。首にはWの文字、2メートルを越える大男である。
「どうした」
「はい、ユニコーン族の戦士が到着しました。どうやら昨日の大雨で遅れたようです」
「なに! ではジアンは一体誰に倒されたというのだ」
* * *状況説明* * *
「なんと、みるる様はあのジアンを倒したのですか!」
遅れてきたユニコーン族の一人が大声を上げた。
戦士ひとりにお付きの女性が4人、僕たちと構成が同じだったので勘違いされたようだ。
角がある彼たちとどうして間違えたんだ……。
「みるるとやらすまなかった。ジアンの早とちりは有名でな。あとできつく言って聞かせておくとしよう。それにしても人族がダイモーン族を倒すとは考えられん」
「テオス王、そのダイモーン族というのは何なのですか?」
「そうだな……お前たち人形が言う魔人だと思ってもらえればいい!」
「え、ヨクサは魔人の村だったのですか?」
「(o゜-゜o)?」
ダイモーン族、ユニコーン族は顔を見合わせて大笑い。
ミミが外観詐称スキルを忘れたまま耳をピクピク尻尾をフリフリしたまま「あの大雨で道がずれてしまったんだ!」と叫んだ。
到着していた村はセーメイオン。ダイモーン族の村でありヨクサの南西に位置する。どうやら暴風雨によって道を外れたことで到着したようだ。
「|(ρω・).。o○《眠そうに瞼を擦っている》」
「で、僕たちはこれからどうしたら良いでしょう。結果的に『王女奪還試合』というのを邪魔しちゃったわけですし」
「それはよかろう、勘違いとはいえ『王女奪還試合』という名の元に戦いお前は勝った、ユニコーン族でなかったとしても勝利は勝利、王女をお前に返そう」
「王女奪還試合とはなんなのですか?」
「幻族で最強の一角を担うユニコーン族、地上の住む民として最強種族の1角を担う我らで王女を賭けた戦いをしておるのだ。勝った国に王女が住み、次の戦いまでに王女をモノにすれば勝ちという娯楽だよ」
「みるる様のおかげでユニコーン族王女の奪還を果たせました。ダイモーン族王女を我らの国へ招くことが出来ました。このご恩に報いるためにユング王女のハートを射抜いて見せます」
膝をついてのお辞儀、西洋をイメージするお辞儀を向けられなんだか照れ臭い。お付きの女性たちも「ありがとうございます」と頭を下げた。
「ではダイモーン族王女、しばらくユニコーンの国へ滞在しなさい。いい男が出来たら結婚してもよいからな」
額に2本の角がある黒髪の女性は「はい」と頭を下げ、ユニコーン族戦士の元に歩んだ。男は王女の手を取ると淑女を扱うようなお辞儀で歓迎した。
「それでは、ユニコーン族王女様、城に帰りましょう」
「いやです」
膝ほどの長さがあるツーサイドアップ、結目にお団子がふたつ。緑を基調とした服装に青と翡翠色のオッドアイ。
「わさび様困ります」「わたくしは国に帰りたくありません」と国へ帰る帰らないで言い争っていた。
「わさび様、一体どうして国へ帰らないと言い張るんですか」
「わたしはみるる様に惚れました。あの素晴らしい気を持つお方のもとに参りたいのです」
「ん?」
「Σ(ОД○*)」
「ひなつ殿、何があったでござるか?」
「あんこさん、あんこさん実は……(略)……と、いう訳なんです」
ミミはスキルを使ってあんこに伝える。その顔はニヤニヤ楽しそうにしたいた。
「おー、それは凄いでござる。やるでござるな、みるる殿」
「わたくしは目が見えません。その代わり気を感じることが出来るのです。みるる様の気は私の理想とする素晴らしいもの、是非生涯に渡って連れ添わせて下さい」
「Σ(ОД○*)」
生涯って僕はまだ17歳、結婚は18歳から……いや16歳だっけ……って、何を僕は考えているんだ。混乱する頭を抑えつけようと「ユニコーン族の皆様は王女がこう言ってますが……困りますよねぇ」と必死に抵抗する。
ユニコーンの戦士は膝をついて見上げた。
「みるる様、相手種族に預けた女王はその国で見つけた相手と自由に恋愛できます。ダイモーン族の国でわさび様がみるる様をお選びになった以上、私たちが何かを問題にすることはありません。族長交代の継承戦が近くなったらお知らせいたします。
「戦士バランよ、すまないな。父のことはよろしく頼む。
王女『わさび』、戦士『バラン』ふたりの中で決定事項のように話が決まってしまった。
「継承戦? って……」
「みるる様、父は元気ですからそんなことは気にしなくていいのですよ。今はわたくしと愛を育むことを考えて下さい」
「Σ(ОД○*)」
「なんか女の戦いって感じですねぇ」
小さくミミの声が耳に入ってきた。
ジアンの勘違いから始まったダイモーン族とのバトル、勝利したことでユニコーン族の王女山葵を仲間に加え、隠れ里を目指すのであった。
* * *
「わさびさん、その立派な角は出したままで大丈夫なのですか?」
「いやだわぁみるる様、そんな他人行儀な……わさびとお呼びください」
わさびの話によると、角は特別な次元に存在するのでユニコーン族以外の者が見えていることの方がおかしいのだとか。
「だから、ダイモーン族は僕を戦士バランたちと間違ったんだね」
「みるる様はきっと次元をつなぐ何かを持っているのかもしれません」
ひなつやあんこたちにわさびの角を聞いてみるが見えないようだ。
「でもユング王女殿の可愛い角は見えたでござるよ」
「ユングはダイモーン族であり鬼族ですからね。まあ、容姿のことなんて良いではないですか」
高らかに笑うわさび、確かにひなつの角と羽、あんこの背、わさびの角……容姿がどうとか関係なくみんな仲間である。
「魔人ってもっと怖いものだと思ってたよ。前に襲われた魔人とは大違いだね」
「|(゜ω゜)(。_。)ウンウン《大きく頷く》」
「魔人は基本的には人形が嫌いです。出会った時にジアンがみるる様をユニコーン族と勘違いたのでしょう」
「勘違いされていなかったら襲われていたってことか……」
「Σ(ОД○*)」
「ひなつ殿、最近は良くその顔をするでござるな。気に入っているでござるか」
ポカポカあんこを叩くひなつ、この風景が微笑ましい。仲間がいることに心がほっこりする。
「いきなり襲ったりはしません。昔、種族間で色々とあったようです。ただ言えることは人形はダイモーン族を魔人と名付けて悪の象徴としています。しかし、わたくしからしてみれば魔人と呼ばれるべきはむしろ人形なのです」
「……僕たちが」
「いえいえいえいえ、みるる様は違いますよ~私の大事な旦那様ですから。それにみるる様は人族と違う何かを感じます」
撫でた声で抱きついてニコニコするわさび、僕の袖を掴んで『(´;ω;`)』なひなつ。
この語、山葵によってこの世界の現実を知ることとなった。
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《登場人物紹介》
・速水 三流 所持金:金1000:大銅2
レベル:15 スキル:衝撃波
ミミをデミハーフの村に送り届けるのが今の使命
・日向夏
レベル:18 スキル:猫耳髪作成
猫耳ヘアーの女の子。喋れない。
・餡子
レベル:16 スキル:武器長短
巫女のような服を着た女の子。聞こえない。
・山葵
レベル:?? スキル:??
ユニコーン族王女、オッドアイだが目が見えない。
・ミミ
レベル: 4 スキル:拈華微笑
ハーフデミの子、馬車を牽くのが得意。意外におませさん
その他
テオス・ダイモーン
ダイモーン族の王
ユング・ダイモーン
ダイモーン族の第1王女、実はみるるを見初めている。




