第23話 防衛拠点タカノス
「ひなつさんは凄いですねぇ」
「( ̄ー ̄)」
外観詐称は多くの魔力を消費するようで、それを常時維持しているひなつに賞賛していた。
「みなさん着きましたー」
タナトスは高い壁で覆われ、物々しい雰囲気に包まれていた。入口を抜けた早々に衛視が闊歩しているせいか空気が重く感じる。
街に入るにはアーチ状の扉をくぐり、兵士によって馬車の荷物をチェックされるなど物々しい。
積み荷は数日分の食料と薬草類が主で怪しいものは何も載せていないのですんなり通ることができた。
「おい、お前たちはなぜこの町に立ち寄った」
「僕たちは行商をしながら鍵を探しています。何か情報があったら教えてもらえませんでしょうか」
ドキドキドキ……。鍵を集めているなんて本当に言ってしまってよかったのだろうか。言葉とは裏腹に額に流れ出る汗は冷たく、手の平はベチャベチャ気持ち悪い。
「お前たちは冒険者ギルド所属か、レベルはどんなもんだ」
「いえ、力は教えることが出来ません」
ドキドキドキ……。鍵を集めて旅をしていることは話し、自分の力と鍵の所持は隠すこと。これはトカラ村長に教えられた知識である。
「まあでも大したスキルは持っていないようだな」
「え、分かるんですか!」
「お前はまだまだ新人だな。スカイブのアーチ状の扉はスキルランクを判定できるんだよ。お前の反応じゃあランクがあったことすら知らなかっただろう」
しまった……。スキルにランクなんてあったんだ。出来るだけ知ったかぶりをしようと思ってたのに。
「それだけじゃあ力なんて推し量れないんじゃないですか」
必死に言い訳を考える。『スカイブは力こそ全て、弱さを見せたら付け込まれるだけ。絶対にバレてはならん』、トカラ村長の言葉だ。
「まあいいさ、レベルは頑張れば上がるだろ、でもな、スキルだけは持って生まれたものだから変えようがないんだよ。Aランク以上のスキル持ちはスカイブにヘッドハンティング対象ってわけだ」
「そろそろいいでしょうか。宿の確保をしたいのですが」
ナイスミミ、おかげで助かったよ。
「おおいいぞ、お嬢ちゃん3人と未熟な君じゃあこの村では大人しくしてた方が良いぞ。ここはタマサイの国境付近、軍隊も配備されてるからな」
衛視は馬のお尻を叩き御者に顎で合図をすると村への道を開いた。門を抜けた左手側、いかにも軍事施設といった建物が並び、その先は巨大な塀が続いた。中からは掛け声や叫び声が折り重なり、戦闘訓練をしているように思える。
良かった。『言霊詠唱』は絶対にAランク以上のはず、表示詐称で変えてなかったら面倒なことになっていただろう。
「みなさーん宿に着きましたよ。私は厩舎に馬車を預けてきますので先に行ってください」
縦長のアーチ状の扉を開けると来客を知らせる鈴が店内に響く、音を聞いた店員が奥から駆けてくる。
「えっ、えっ! みるるくん?」
宿屋の店員は高校の先輩であり女子剣道部のA4であった高島美波であった。
「高島先輩!」
高校では先輩後輩の関係しかなかったが見知った顔に会えるのは嬉しい。
「みるるくん、苗字で読んじゃダメよ。この世界に来た時に聞いたでしょ。この世界で苗字を名乗っていいのは王族に認められた人だけだって。だから美波って呼んでね」
確かに学校では僕のことを速水くんって呼ばれていたが今は名前だった。
「そうだったんですね。僕は落ちた場所が悪かったみたいで最初の説明を聞けなかったんです。教えてくれてありがとうございます美波先輩」
「でもこんな所で知り合いと会えるなんて嬉しいわね。同じ高校の何人かは軍部に回されてるわ」
「みるる殿、拙者たちはいつまで待てばよいでござるか」
「(゜ω゜)(。_。)ウンウン」
「あら可愛い、みるるくんの彼女? こっちの小学生くらいの子は犯罪じゃない?」
あんこの頭をポンポンと撫でる美波。徐々にあんこの目が吊り上がっているのが分かる。
「お主、今、拙者をバカにしているのであろう。聞こえなくても分かるでござる」
「あ、美波先輩、この子はあんこ。耳が聞こえないんだ。あとこっちはひなつね。彼女は言葉を喋れない」入り口から入ってくるミミ「こっちはミミです。今はこの4人で鍵集めをしてるです」
「みるるくんが鍵集め? 剣道部でCランク最下位だった……」
「ヽ(`Д´)ノ」──ひなつが手を振り上げている。
「また悪口を言っているでござるな。お主は分かりやすいでござるよ」
「ゴメンナさい」深々と頭を下げる美波「最近はあんまり話しをする相手もいないし寂しかったのかな。お客様にごめんなさい」
「そういえば美波先輩はどうしてここに?」
……どうやら付与されたスキルが『選別眼:人の善悪を見極められる』だったようで、この仕事に就くことになったらしい。同級生の彼氏もこの地に飛ばされたが、戦闘用Aスキルを持っていたせいで軍部からの招集命令が出てしまいどこかに逃げてしまったようだ。
「まったく優斗はどこに行ったのかしら」
「きじませ……じゃなくて、優斗先輩は行方不明なんですか?」
「ふふふ、彼女たちが待ってるから早くチェックインしちゃいなさい」
僕は個室、彼女たちは大部屋を借りた。情報収集と食料調達を含めて5日分、金貨1枚を支払った。ん? 金貨1枚で5日だとするとキクは30日も泊まれたぞ。……物価が違うのか、ポンポ商人の力なのか……。
「じゃあ彼女たちは2階ね、みるるくんは1階のそこの部屋だから鍵を渡しておくわね。ひなつさんたちはこっちよ」
6畳ほどの部屋にベットと収納スペース、テーブルと椅子が置かれている。もちろん魔法が付与された調度品。
ふぅ……ベッドに横になって天井を眺めていた。不思議な光が上空に留まり部屋を照らしている。埃の匂いが雰囲気を醸し出しそうな古ぼけた部屋ではあるが快適そのもの。徐々に瞼が重く……
──コンコン
扉の前に立っていたのは美波先輩、僕の手を掴むと宿屋の外に引っ張りだした。
楽しそうな悲しそうな……そんな表情で。
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《登場人物紹介》 IN タカノス
・速水 三流 所持金:金1,007:大銅4
ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)
レベル:15 スキル:衝撃波
ミミをデミハーフの村に送り届けるのが今の使命
・日向夏
ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)
レベル:18 スキル:猫耳髪作成
猫耳ヘアーの女の子。喋れない。
・餡子
ランク:3流 ギルド:冒険者(黄)
レベル:16 スキル:武器長短
巫女のような服を着た女の子。聞こえない。
・ミミ スキル:拈華微笑《ねんげみしょう:心に直接話しかけられる》
ロンリとの交渉人。馬車をひくのがうまい。
タカノス
・高島美波 スキル:選別眼
女子剣道部の先輩。NO4の実力者だった。
・木嶋 優斗
美波の彼氏。Aランクのスキルを持つが戦闘が嫌で行方不明




