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第22話 トカラの願い、断れない依頼

「ミミを隠れ里(ロンリ)に連れて行ってもらえないでしょうか?」


 元村長(トカラ)の急な言葉に思わず一歩後ずさる。


「どういうことでしょう」


 トカラは腰の裏で手を組むと遠くを見つめた。


守手(まもりて)でもあり村長だったホッキョクが死にました。このままだとこの村はいずれ壊滅するでしょう。…………その状況を打破する担い手を、隠れ里ロンリに求めたいのです」


「そこに行けばこの村は持ち直せそうなのですか」


「はい。村を守る村長適性を持った人に来てもらえれば充分に可能性があります」

「それでミミを交渉人に選んだのですね」

「そうです。送り届けてくれるだけでいいのです。聞く耳をもってもらえなかった時にミミの拈華微笑(ねんげみしょう)スキルが役に立つはずです」



 本来なら断るべきだろう。世界の事を何も知らない僕が人の命が懸かる役割を受けるなんて。



 でも……どうしても断ることができなかった。この村が魔人に襲われる原因に心当たりがあったから……。


 ──ひなつ


 天井の破壊はひなつの魔法、これは仕方がなかったできごと。でも、魔人の狙いは明らかにひなつだった、それに村に来たキッカケはあんこが刀を落としたから。


「分かりました。出来る限りのことはやりましょう」

「おお! ありがとうございます。ロンリ()はここから東、タマサイとスカイブ、バチの国境が重なるバチ領に位置します」


 どうやら、この近辺では工業国家タマサイの北にある軍事国家スカイブと東の商業国家バチの3つが三大大国と呼ばれ三つ巴で絶えずにらみ合っているらしい。


「タマサイは半亜人(ハーフデミ)にとても厳しい国で姿を見られること自体が危険です。スカイブは強者を集めることに力を入れているので、言いがかりをつけられて戦うことにでもなったら生き残れません」


人族(ひとぞく)に仕えていることにしてスカイブを抜けた方が良いのですね」


「<●><●>……("A`)」──ジーっと見つめているかと思えば飽きた表情。目が合うと『(o^-^o)』で返してくれる。あんこは黙って座っている。


「はい、地下道を通ればスカイブに抜けられます。国境を超えるには鍵集めなど正当な理由がなくてはなりません。ミミは奴隷だと言えば問題は無いでしょう」




 トカラの計らいによって(ほろ)付きの馬車を用意してくれた。馬を牽ける者がいなかったが、小さいながらもミミが扱うことができた。



「じゃあトカラさん、ミミを無事に送り届けますね」


 見送りはトカナひとり。半亜人(ハーフデミ)は村の復旧に忙しいのだろう。


「みるるさん、何も言わずに受け取ってほしい。これは私からのお礼だと思ってくれ。ミミ、例の物をみるるさんへ」

「長老、いいんですか」


 トカラは笑顔でうなずく。垂れた目が一層に垂れ下がった。それを見たミミはプレートに指を当てると僕に振り払った。


 『鍵の譲渡が行われました。あなたは現在2本の鍵を所持しています』


「トカ──」言葉を遮られる。「それ以上は言ってはいけません。あなたは少し油断しておられるようだ。この村……いや種族でも知っている物はわしとミミだけだからな」


 何も言い返せなかった。トカラは無言で合図をするとミミは静かに馬車を走らせた。


 そうか。見送りがトカナしかいなかった理由が分かった。ミミの持っている鍵を僕に託すため。それを感づかれないように……。

 それだけ鍵を持っている事を知られるのは危ないことなのだろう。



 ミミを無事に送り届けようと心に誓うのであった。



 * * *



 サムゲン大森林を通り国境を無視する形でスカイブへ入国。森林を抜けて半日ほど走った町『タカノス』に向かっていた。


「ひなつ、町に到着する前にやっていおきたいことがあるんだ」

「(o゜-゜o)?」

「これは僕とひなつ、あんこだけのひみつだ」


 ──僕からのあんこへの会話は青水を使った骨伝導で繋がっております──


「(゜ω゜)(。_。)ウンウン」

「了解したでござる」


「ひなつのプレートに記載されているスキルを書き換えようと思う」

「ΣΣ(゜Д゜;)(゜д゜lll)」

「そんなことができるのでござるか」

「表示詐称というスキルを手に入れたんだ。僕が透明化した青水で戦うと魔法みたいだろ。だから『絶対パリィ』を『衝撃波』に書き換えたんだ」


 プレートを手に持ってステータスを表示する。


   ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)

   レベル:15 スキル:衝撃波


 拡張現実(AR)のように表示されるスキルをみてふたりとも驚いた。


「みるる殿、レベルが上がっているでござるな」

「うん。本当のレベルは分からないけど、1じゃ変でしょ。だからこのくらいなら怪しまれないかなぁって」

「(゜ω゜)(。_。)ウンウン」

「確かにそうでござるな」

「ひなつ、プレートをかけたままで良いから出してもらえるかな」


 彼女のプレートにそっと触れる。指先に伝わるほのかな温もりが彼女の肌を連想させて顔が少し熱くなった。

 馬車を抜けるさわやかな風が僕の頬を冷やして冷静さを取り戻させる。現状のスキル『言霊詠唱』の名前に新しいスキル名を上書きする。


   ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)

   レベル:18 スキル:猫耳髪作成


「レベルが上がっているでござるな。それに猫耳髪作成って何でござるか」

「なにも思いつかなかったんだ。とりあえずひなつの得意なものを入れてみた」

「外観詐称でも良かったのではないでござるか」

「いや、出来るだけ使えることが分からないようにした方が良いと思うんだ。あんこはバレる心配はないけ……あっ」


 血の気が引いた。(たもと)から取り出していたのはハンマー。僕の顔が引きつっていくのと比例するようにハンマーが大きくなっていった。

==========

《登場人物紹介》

 ・速水はやみ 三流みるる 所持金:金1008枚大銅4枚

   ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)

   レベル:15 スキル:衝撃波


 ・日向夏ひなつ

   ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)

   レベル:18  スキル:猫耳髪作成

   猫耳ヘアーの女の子。喋れない。新しいスキルをGETしたが気を失っていたため何だったのかは不明。

 ・餡子あんこ

   ランク:3流 ギルド:冒険者(黄)

   レベル:16 スキル:武器長短

   巫女のような服を着た女の子。聞こえない。新しいスキルをGETした。


半亜人(ハーフデミ)の村

 ・トカラ(ヤギの半亜人)

   元村長、現村長の死により村長に復帰。ミミをロンリに送り届けるよう頼んできた。

 ・ミミ スキル:拈華微笑《ねんげみしょう:心に直接話しかけられる》

   ロンリとの交渉人。馬車をひくのがうまい。

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