第21話 トカラ村長の提案
肩をポンポン叩かれた。
振り向くと──
ぶにっと僕の頬に何かが突き刺さる。
指!! その先にいるのは……あん……こ?
大人の女性。膝までの赤いワンピースに袂の長い赤いラインが入った上着、赤い鼻緒の草履の女性。明らかにあんこの服である。しかし艶やかに光る黒いストレートヘアーの髪がサラサラとなびき美しさを際立てている。
手には刀が握られ……って、折れている。まさか……
ひゅるると音が出そうな勢いで縮んでいく。その姿は正しくあんこ。一体どういうことだろう。
「拙者の刀が折れたでござる。せっかく、せっかくここまで育てたのに」
頬には涙、あんこが『武器長短』を使えるのは使い込んだ武器だけと言っていた。よっぽど苦労したのであろう。
あれ……そういえば何か忘れている気がする。
…………
…………
…………
「……(o^-^o)」
「そうだ、ひなつ! さっき魔人を退けた魔法を使った時しゃべらなかった?!」
「?(*゜ε゜*)a゛」──とぼけているのか、気づいていないのか。
既に猫耳ヘアーに戻っている。言霊詠唱か……物凄い威力だな。それに外観詐称のスキルといい……。
まあいいや、バンパイアの半亜人であるということを含めて彼女が自から教えてくれるまで待つことにしよう。
──あんことみるるの会話は青水を使った骨伝導で繋がっております──
「で、あんこ。さっきの大人の女性はなんなの?」
「あぁ……拙者の刀がぁ。うぅ……百花繚乱というスキルを覚えたでござるから使ってみたでござる。そうしたら力が漲ってきたのでござる」
「力を強くするスキルみたいだね。小さいからそれを扱える姿に……ってイテっ」
刀の柄で脇腹を突かれた。ちょっと調子に乗りすぎてしまったようだ。
「刀……刀……どうしようでござる」
そういえば『物理組換』というスキルがあるって言ってたな。確か『物理的な物体の形を変える事が出来る。ただし質量は変えられない』と説明された。つまり……
異次元ポケットから剣を取り出す。銀貨1枚で買った西洋風の剣、大牛蛙を倒した剣でもある。
あんこの刀をイメージしてスキルを使う。徐々に姿が変わる剣、不思議な変化に心が躍る。あ! そうだ。ドームで拾った硬い石を幾つか混ぜて刀にコーティングして、っと。
「完成!」
あんこの肩をポンポン叩く。もちろん人差し指を立てて……。ぷにりとした感触、癖になりそう。
「ぐぬぬぬぬ」
僕の人差し指を握り悔しそうな表情。やばい、怒っている。
「あんこ、ほら僕が作った刀だよ」
折れた刀の一部を抜き取り、作った刀の一部として組み替える。
あんこは握った手の感触、鞘に入れる感覚を確かめるように振り回す。何気なく素振りをすると、剣先が触れた程度の岩が真っ二つ。
「ヒィッ」と口癖を忘れるほどに驚いて刀を放ってしまう。回転しながら落ちた刀は地面に突き刺さりその場に留まった。
「この刀、物凄い切れ味でござるな。どこでこれを手に入れたでござるか」
刺さった刀を抜くと「武器長短でござる」と一言。みるみるうちに小さくなっていく。
「良かった。僕が得たスキルを使って加工してみたんだ。使えそうだったらあんこにあげるよ」
刃が鞘に消えていく。かげり一つない刃の輝きが次に日の目を浴びるのを待ちわびるように……
──パチンッ。刀身が収まった。あんこのぼそっとした言葉と共に小さく縮むと袂にしまった。
「感謝するでござる。この刃、生涯みるるの為に使うでござる」
「Σ(ОД○*)」なひなつの表情に「ひなつと一緒でござる」と返す。
「(*ノ´∀`)ノ」追いかけるように両手の杖を振り上げて「(゜ω゜)(。_。)ウンウン」と強く頷いた。
* * *
ホッキョクとの別れはしめやかに行われた。アンソレイトはドーム状の大部屋があり、そこから3つの通路が伸びている。1つは出入口、1つは風呂や住居などの生活スペース、1つは生活に必要な家畜場や水場があるスペース。
この村では死者は水を介して還す水葬が取られていた。飲料水も兼ねる地下水路から流して水質は大丈夫なのかと不安になったが、どうやら一度土に埋めて骨に還した上で小舟に載せて流すらしい。
魔人との戦いで荒れ放題になった大広間の修繕を手伝いながら今後のことを考えていた。
「それにしてもひどいな」
使い込まれた調度品は豆腐のようにスパッと切れているものもあれば粉砕されているものもある。これらの部品を組み合わせるように振り分けていく。
『木工修繕』を持った半亜人が数人、振り分けた調度品にスキルを使うと、ひとつひとつの部品が、元の姿を思い出したように結合し復元されていく。
「トカラさん、凄いですね」
「ああ、みるるさん。この村に生まれる半亜人は『木工修繕』のような生産スキル持ちが多く生まれるんですよ」
「ほかにどんなスキルがあるんですか?」
「そうですのぉ。食べられる物か判断する『毒物探知』や木工製品に魔力を注入できる『魔力注入 (木)』があります」
「魔力を注入ですか?」
「はい。木に魔法技術を注入するのです。今公開されているのは、座面に付与する弾力化や恒温化、接着などですね」
「すごい技術ですね。それなら直ぐに復旧できそうですね」
「そうでもないんです。スキルには魔力を使うし、天井に空いた穴を修復するスキル持ちがいません」
空を見れば大きな穴がふたつ、木板に加工して接着したもので塞いだだけ。土を被せて木を倒し村を隠ぺいしてある。
修繕が済んだ椅子に腰を下ろす。クッション性の柔らかな感触、優しい温もりを尻に感じる。
「やっぱり凄いですね。とても座り心地が良い」
「技術はな磨かなければならんのです。使えるだけではあまり役に立ちません。より良い物が出来るように技術を深め新しい技術を開発せねば未来はありません。そこでみるるさんにお願いがあるのですが」
元村長は広間にいる犬耳の半亜人を呼び寄せると頭の上に手をポンと置き、自分に合わせてお辞儀をさせる。
「ミミを隠れ里に連れて行ってもらえないでしょうか?」
この言葉をキッカケに僕たちは鍵を探し世界を知る冒険に出ることになったのだ。
《登場人物紹介》
・速水 三流 所持金:金1008枚大銅4枚
ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)
レベル:15 スキル:衝撃波
・日向夏
ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)
レベル:8 スキル:言霊詠唱
猫耳ヘアーの女の子。喋れない。新しいスキルをGETしかが気を失っていたため何だったのかは不明。
・餡子
ランク:3流 ギルド:冒険者(黄)
レベル:16 スキル:武器長短
巫女のような服を着た女の子。聞こえない。新しいスキルをGETした。
半亜人の村
・トカラ(ヤギの半亜人)
元村長、現村長の死により村長に復帰。
・ミミ スキル:拈華微笑
あんこの刀を持ってベオカに来てくれた犬耳のハーフデミ




