第19話 アンソレイトの死闘
中空に留まり見下ろしている魔人。
この姿は前に一度見たことがある。
白粉を塗ったような青白い顔をした人形、口に目元に真っ赤に塗った顔、ドラキュラをイメージするような出で立ち。違うのは男という点。
刀を担ぎニヤニヤ。あの姿、あの
表情、体育館で見た 天聖さんを思い出す。口を動かしているが言葉とも言えない言葉で何を喋っているのかは分からない。高笑いしているようにも見える。
ゆっくりと刀を振り上げると、眉間に皺が寄る。
──来る!
刀を振り払うと同時に剣先から三日月状の風圧が可視できる真空波となってこちらに向かってくる。風を斬るこの攻撃はヤバイ! しかもこの方向は……ひなつ!?
ひなつを突き飛ばし絶対パリィで受け流す。捌かれた真空波は円卓テーブルを分断し地面に突き刺さり、乾いた音を響かせ地面に三角形の斬撃痕を作っていた。
テーブルが崩れ落ちる音と共に動いたのは──
「──あんこ!」
地面を蹴り魔人と同じ高さに跳ねると、左手を鞘に右手を柄に腰をグイっとひねる。まさしく居合切りの構え。
「武器長短でござる」
鞘から離れた刃は巨大化、1メートル程の刃が3倍近くまで伸びていく。弧を描く軌跡、遠心力が加わり速度を増していく。
美しい軌跡の残像を残したまま刃が魔人にヒット!
「やったか!」
魔人は無傷。白刃取りどころじゃない、刃を左手一本で掴んでいる。しかも素手……攻撃を受け止められたあんこは重力に引かれるまま落下するが、柄を掴んだままぶら下がっていた。
「この刀は絶対に離さないでござる」
擦れ違うように地面を蹴って飛んだのはホッキョク。
「爆発拳!」
力がこめられた拳の先にはパチパチと火花がくすぶっている。巨漢である故にスピードは遅いが、パワー十分といった感じ。
魔人は刀を掴んだ手を振り上げるとホッキョクに向かって投げつけた。
刃の中ほどで折れ、柄を握っていたあんこはホッキョクに向かって一直線に飛ばされる。
──ドスン!
ホッキョクの体幹に命中するあんこ。弾き飛ばされ宙を舞う。ふらふらと空を舞い地面に落下していく。
ホッキョクは跳ね返された衝撃で円卓テーブルに直撃、土ぼこりを立てながら木片を大きくまき散らして崩れ落ちた。
ふらふらと落ちてくるあんこを辛うじてキャッチ、意識を失い腕の中でぐったりとしている。腕に収まるあんこはとても軽く、幼さを感じた。
「ひなつ、あんこを頼む。それとみんなを非難させてくれ」
「(゜ω゜)(。_。)ウンウン」──ゆっくりと彼女をひなつに渡す。目線を魔人に移し睨みつけると魔人は手に持っていた刃を投げつけた──
「ヤバイ!」
刃は一直線。真っ白な耳や尻尾まで赤く染まりピクリともしないホッキョクに向かう──青水で……一気に放出してガードを試みるが刃の方が早く到着した。
ストンと地に突き刺さる音、腹部を突き抜け体幹より長い刃がチラリ見えている。あまりにも強い攻撃にホッキョクの反応がない……。
ホッキョクの受けた傷からジワリと血液が流れ出す。まるで攻撃を受けたことを遅れて認知したかの如くに。
隙をついて僕の考えた最強の攻撃を放つ。
頬にヒットするがダメージはない。顔をしかめさせるだけだった。でもそれでいい、目的は僕をターゲットにさせること。
ひなつたちは別の部屋に退避したのを確認するとホッキョクに向かって駆け出した。空を切り裂きながら飛んでくる真空波を絶対パリィで避け続け地面に斬撃跡を無数に作りながらも必死に走る。
ん? 捌き方によって真空波が流れる向きが同じ。
もしかして……寸分の狂いもなく飛んでくる真空波、「よし」。絶対パリィで捻るように捌く。流された真空波は魔人の横をすり抜け壁に直撃し痕を作る。
「惜しい。もうちょっと練習が必要だな」
さらに追撃される真空波、徐々に魔人に近づくカウンター。既のところで攻撃が収まった。魔人は攻撃の手を止め黙って見下ろしていた。
青水を使ってホッキョクを癒そうと傷口を包むが傷は塞がらない。今まで治してきたのはなんだったんだ。
ん? ピリピリする感覚。
「上!」
見上げた先、もすごいエネルギーを纏う魔人! 2本の指で刀をなぞるとぼやっとした赤い光が指先を介して移って行く。密度を増して徐々に濃くなっていく色。
この攻撃はヤバイ。属性の理で防ぎきれるのか。そうだ、これで魔人を囲ってしまえば……。
魔人に向かって青水を飛ばす。水のように広がり波打ちながら魔人を包み込もうとしたとき──
バシュッ! 不思議な音が閉鎖空間に響き僕の体に跳ね返された。
体の中に無理やり戻される青水、震える右手が強張りうまく青水を扱えない。必死に左手で右腕を上に下に掴みこわばりを解こうとするが動かない。擦ったり回したりしてもどうにもならない。
「ダメだ!」
覚悟を決めた! 残っている左腕で『絶対パリィ』を決める。できればカウンター、少なくても跳ね返さないとホッキョクだけでなく、ひなつやあんこ、それに半亜人のみんなの命にかかわる。
禍々しくも美しい赤いオーラが纏われた刀、振り上げただけで空気まで振動しているように感じる。
絶対に無理という感情、絶対に跳ね返すという感情。相反する想いがせめぎ合う。何を考えどんなに悲観してもこの事実は変わらない。
「だめぇーー」──透き通りながらも美しく、優しくも激しい声が部屋中に響き渡った。
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《登場人物紹介》
・速水 三流 所持金:金1008枚大銅4枚
ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)
レベル:15 スキル:衝撃波
ひなつとあんこと再会した。本当の意味で仲間になれた。ピンチ!
・日向夏
ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)
レベル:8 スキル:言霊詠唱
猫耳ヘアーの女の子。喋れない。可愛らしい服装に変わっていた。
・餡子
ランク:3流 ギルド:冒険者(黄)
レベル:16 スキル:武器長短
巫女のような服を着た女の子。聞こえない。元仲間に見捨てられていた。
半亜人の村
・ホッキョク(白熊の半亜人) 村長
・ミミ スキル:拈華微笑




