第18話 隠れ里アイソレイト
濡れた髪を猫耳ヘアーに整えた下着姿のひなつ。慌てて服を着ている。
「O=(_ _;; バタッ」──焦ったのか足を引っかけたようだ。
一生懸命に服を着るひなつの姿に今までの嫌なことを全て忘れ、心の落ち着きを取り戻して惚けるようにボヤっと眺めていた。
……ニヤニヤしている自分に気づき、女の子の着替えを見ている嫌悪感が生まれ『見守っていたんだ』と心の中で正当性を主張する。
あれ? 前と着ている服が違う。今まで来ていた村娘のような服装から黄色を基調とした可愛らしい服に変わっている。黄色いリボンを胸に付けたダボっとした半袖シャツ。白いアームカバーに胸を持ち上げるように装着したコルセットにフワッとした腿までのスカート、膝上まである靴下に膝まであるブーツ。
「その服装、ひなつに似合ってるね」
「(///△///)……((((((((((っ・ωΣ」
ああ、また走って行ってしまった。
扉を抜けると細長い通路が彼方の光に伸びている。左右に出入口がいくつも並び、独特の閉鎖空間に息が詰まる。
部屋の内装は複写したように全て同じ、言うなれば土で作ったかまくらの中とでもいうのだろうか。動物の皮で作られた寝床が敷かれているだけだった。
ボヤっと黄色く光る地肌、薄暗い廊下を進んで行く。20部屋ほど越えただろうか、中には誰もいなかった。
突き当たったのは大きな部屋。巨大な体育館サイズだろうか、そこには子供から大人まで30名程度、ひなつ、あんこ!
中央にある円卓テーブルに座っているのはまさしく……
ぐるっと並んだ椅子のひとつに座るあんこの前で膝に手をつきハァハァと息を切らせているひなつ。
「ひなつ、あんこ、無事で良かった!」
「(o^-^o)」
「…………」──両手で頬杖をついて遠くを眺めているあんこ。
気づかないあんこに右肩を叩き、悪戯心が芽生えて人差し指を伸ばすと、あんこの振り向きざまの頬にぷにりと刺さった。
「みるる殿、無事でござったか」
気にする様子はない。そのまま顔を戻すと何事もなかったかのように遠くを眺めた。この世界にはこんな低レベルな悪戯は存在しないのであろうか。
「お前がみるるか」
大きくてふっさふさの白い耳とぴょこっと小さく伸びた尻尾が可愛らしい。が、白髪にダンディーな白髭の逞しい体つきにギャップがなんとなく気持ち悪い。
「はい、あなたは?」
「ホッキョクだ。この隠れ里の長をしている。白熊の半亜人だ」
「(o^-^o)」──じっとこちらを見つめているひなつ。
「ホッキョクさん……この村?」
「そうだ、ここは半亜人の隠れ里、サムゲン大森林の地下にある。みみを助けてもらって感謝している」
「みみ……ああぁ、あんこのかたなを持ってきてくれた犬耳の子ですね」
「そうだ、彼女が落とした刀を持ってベオカに行ってしまってな。村民に見つかってしまったというわけだ」
どうやら、森林に入って少し進んだところに村への入り口が隠されていたようだ。ひなつやあんこ、みみは助けられたが僕は気づかずに通り過ぎてしまっていた。
「ひなつとあんこを匿ってもらってありがとうございます。おかげで再会することが出来ました」
「小さいほうの子はここに来てからずっとあんな調子でな」
「何かあったんですか」
「ああ、みみが伝えた真実に堪えたようでな」
「え!? あんこは耳が聞こえないはずですが」
「ああ、みみのスキルは拈華微笑なんだ」
「ねんげみしょう? なんですかそれは」
「言葉を使わずに相手に伝えることの出来るスキルでな」
「そんなスキルがあるんですね」
「ねぇねぇ、わたしが余計なことをしちゃったから……あんこお姉ちゃんを傷つけちゃった」
耳の垂れた犬耳の女の子、ふぁさっとした尻尾がしゅんと垂れ下がっている。
「みみちゃん、あんこに何を伝えたの?」
「えっとねぇ、みみが森で山菜を摘んでいる時にあんこお姉ちゃんが刀を落としたのを見たの。走ってきた方に草陰から出てきた男たちの声が聞こえたの」
「それであんこの刀って分かったんだね」
「うん。それでね、男の人たちが『やっとあいつを追い出せたよ。耳が聞こえないから連携は取れないし気配は感じ取れないし……お荷物だったからな』って言ってたのを聞いちゃったの」
「。・゜゜ ‘゜(*/□\*) ‘゜゜゜・。」──隣でひなつが泣いている。
「そっか、仲間たちを探すために一生懸命だったものな」
中3だったっけなぁ。修学旅行で4人一組でグループを作った時にお情けで入れてもらった3人組に旅行先で見捨てられたっけなぁ。勝手にはぐれたことにされて先生にこっぴどく怒られたっけ……。
「( ^o^)/*∞C<( -_-)」──ん? チョイチョイッとひなつが袖を引っ張っている。
僕の手を取り『σ(o^_^o)……(o^_^o)σ』とあんこを指さす。ああ、「これからずっと僕たちと一緒にいてはどうかってことだね」
「(゜ω゜)(。_。)ウンウン …… (o^-^o)」
「じゃああんこに伝えてみるね」
青水骨伝導で話しかける。あんこは既に慣れたようで軽くこちらに顔を向けた。
「みきから仲間のこと聞いたよ。でもあんこには僕とひなつがいるじゃないか。これからは僕たちを本当の仲間だと思って一緒に行動しないか」
「…………」
静かに腕を組むあんこ。考えを邪魔しないようにじっと次の句を待った。僕とひなつはじっと待つ。
ホッキョクが椅子を引き腰かけ、あまりの重さにメキメキと軋む音が聞こえたと同時にあんこが口を開いた。
「聞いたのでござろう。拙者の耳が聞こえないせいで仲間に迷惑をかけていたことを……」
「なに言ってるの。僕もひなつもあんこが一緒だったら良いと思ってるんだから。迷惑なんてお互い様だよ」
「でも……拙者、また仲間に見捨てられるのは御免でござる」
「あのね、僕たちは『あんこ』を仲間にしたいの。ダメだったら一緒に解決していけばいいだけじゃない」
あんこの柔らかい両手を掴み引っ張り上げる。じっと目を見つめるとあんこはひなつへと視線をずらす。その先には大きく手を広げ『\ ( * ⌒ ▽ ⌒ * ) /』大歓迎といった雰囲気だった。
* * *
ここは30名程度の半亜人が暮らす小さな村。戦闘能力を持つホッキョクを中心に戦士が3名、サムゲン大森林を狩場に食料を確保している。
少ない食料を使って僕たちを歓迎してくれた。この村では総出で食事を摂るのが普通のようで老若男女で賑わっている。
笑顔で食事をし和気藹々とする半亜人を思うと見た目だけで迫害されることに心が痛くなる。
「そうだ! ひなつ、ちょっと手伝ってくれない?」
「(゜ω゜)(。_。)ウンウン」
僕は巨大な蛙牛の肉を異次元ポケットに確保していたことを思い出し、カマドを借りてひなつの魔法で焼肉を作り振舞った。
初めて食べる味に半亜人は舌鼓をうっていた……その時だった。
「「キャー」」
「「モンスターだー」」
波紋のように叫び声が広がり、皆の視線の先にいたのは……。
中空に浮かぶ見覚えのある恰好をした者。
──魔人。
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《登場人物紹介》
・速水 三流 所持金:金1008枚大銅4枚
ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)
レベル:15 スキル:衝撃波
ひなつとあんこと再会した。本当の意味で仲間になれた。
・日向夏
ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)
レベル:8 スキル:言霊詠唱
猫耳ヘアーの女の子。喋れない。可愛らしい服装に変わっていた。
・餡子
ランク:3流 ギルド:冒険者(黄)
レベル:16 スキル:武器長短
巫女のような服を着た女の子。聞こえない。元仲間に見捨てられていた。
半亜人の村
・ホッキョク(白熊の半亜人) 村長
・ミミ スキル:拈華微笑




