高校生ユーリ~3年生~⑤
模試、試験、模試模試模試・・・の日々を終え、年が明けました。
ユーリたちE組は、半分のクラスメイトがセンター試験を受験します。
休憩時間はみんなで問題を出し合ったり、放課後も残って練習したり。
時々、陽気な男の子が笑わせてくれたりと、とても楽しい日々でした。
「はぁー・・・来週いよいよセンターか・・・」
「いいねぇ、指定校やら推薦組は・・・・・・ねぇ香澄」
「いやー1年の時から苦労した甲斐があったわー」
センター試験を受けない者のうち、半分は推薦で進学校が決まりました。もう半分は専門学校に進みます。
「ユーリは国公立1本?」
「うん。お、お、おおおお弟、いるから。・・・かっかかかっかか、かかかえでは?」
「うちもねぇ・・・ほら2人いるし下もいるし。国公立しくじったら専門かなぁ・・・」
「ユーリ、A判定だもん!絶対いけるよー」
「あたしCだよー不安しかないよ。あたしも専門かなぁ・・・」
「・・・わ、わ、わわ私も、不安だよ・・・」
「こんのー!言うねユーリ待てこらー!!」
友達の中では1、2を争う好成績のユーリは、この手の会話になるたびに追い回されることになります。
(・・・専門かぁ・・・専門って大変そうだもんな。私には無理かな・・・)
姉のカガリが大学に行っているため、ユーリはなんとなく大学に憧れがありました。
しかしユイトが私立高校に進学予定なので、ユーリまで私立大学に進むと咲野家は多少厳しくなるようです。
「はーあ。あと一週間、頑張ろうね、ユーリ!」
「うんっ!お、お、おおおわったら、旅行行こうね!」
そして迎えた、センター試験の朝・・・・・・
「行って、きます」
「ユーリ・・・」
「・・・気持ちはわかるけどさぁ・・・無理だってあんた・・・」
「ちょ、ゆー姉マジ?」
実はユーリは・・・2日前からインフルエンザにかかり、高熱が出ていました。
この朝も、ユーリは赤い顔をして冷却材をおでこに貼り、部屋着姿のまま見当違いのカバンを引きずってフラフラしながら家を出ようとしていました。
「・・・寝てなさいって。あんた昨日晩ご飯吐いたじゃない。そんなんで1日試験受けれると思ってんの?センターは再試もあるんだし、本試は諦めな」
「ユーリ、今日まで頑張って来たから受けたいのはわかるけど・・・今日は無理よ。寝てなさいユーリ。お粥作ってきてあげるから」
「やー、カバン間違って服もそれ?俺でもわかるぞ、やばいってゆー姉」
「やだ・・・・・・行く・・・行かなきゃ・・・」
「・・・や、あのさ、もう鍵も開けれてねえから・・・」
「熱何度だったの?カガリ」
「さっき計って39.7度」
「ユーリ、今日は無理です。外出できません。寝てなさい」
玄関で1人よろよろしながら喚いているユーリと、説得しようとしているカガリ、ユイト、母の3人の図です。
今日はカガリもユイトも休みなのですが、朝からユーリvs母の戦いで目が覚めてしまいました。
ユーリは普段と比べて口数少なくどもりも全く出ていませんが、今は何を言っているかもよくわかっていないようです。
「しょうがないわねぇ・・・ユイト、ユーリかついでお部屋まで運んでくれる?カガリは布団準備してきて。お母さんそろそろお父さんの朝ご飯の支度してくるから、ひと段落したらお粥持っていくわ。それまで押さえててね」
時々とんでもない発言をすることで有名な、3姉弟のお母さんです。
はぁ、とため息をついてカガリはくるりと踵を返し、ユイトはユーリに近づきます。
「・・・わかった。ユーリ、部屋入るよー」
「俺、こんなことのために鍛えてたんじゃないんだけどな・・・」
ドアにへばりつくユーリを引きはがし、ユイトは担ぎあげました。剣道部で日々鍛えていたユイトには、わりと楽に担げる重さのようです。
「やだセンター試験行く、電車、電車乗る・・・」
「今日バスって言ってたじゃん・・・状態わかってんのかねゆー姉・・・」
「大丈夫、再試験があるよユーリ」
こんなことがあり、ユーリは本試験は受験できませんでした。
そして、再試の日・・・・・・
「・・・ユーリ、大人しくしてなさいね」
「なんで、なんでぇ・・・・・・」
ユーリは、病院のベッドの上にいました。酸素マスクをつけながら、涙ぐんでジタバタしています。
「今年の運は使い切ってたのかねぇ・・・」
「なぁんで今年なのかな・・・なんか欲しいもんある?買ってきてあげるよ?食べれる?」
ユーリは、インフルエンザの症状が長引くと思ったら、肺炎をこじらせていたのです。
再試験だけは受けなければと隠していたのですが、息が苦しく胸も痛くて顔色にも表れるようになり、父に体調不良がバレてしまいました。
病院に連れて来られ検査を受けた結果、細菌性肺炎でした。症状が重かったため、そのまま入院となったのです。
「・・・ユーリ、私学に行く?今からでも間に合うとこあるわよ」
「でっでも、しししししっししがく、おおおお金かかる・・・」
「うーん・・・奨学金借りるかなぁ・・・」
「私もバイトするし、大丈夫じゃない?」
(・・・私、迷惑かけちゃう・・・!)
2年の時の自傷事件が頭をよぎり、もう迷惑かけたくないと、ユーリは決心しました。
「お、おお母さん・・・私、せせせ、せせ、せせ専門、行く」
「えぇ?でもユーリ大学行きたいって・・・」
「・・・と、とー・・・・・・もだちのメイがね、こここここ公立の、かっかっか看護学校、ううう受けるんだって。だ、だだからね、まだ間に合うから・・・私も、受ける」
「うーん・・・うちとしてはありがたいけど・・・いいの?ユーリそれで・・・」
「大学行きたいって言ってたじゃない。私も奨学金あるしバイト増やすし、たぶん大丈夫だよ?」
「ううん・・・専門・・・受ける。しっしっしーーーーーー・・・ぃりつ、見てないからよくわからないし・・・」
「・・・・・・そっか・・・ちょっと、先生とお話してくるわね。カガリ、お父さんに電話、お願いして良い?」
「・・・はーい」
2人が病室を出て行ったのを見ると、酸素マスクをシューシューいわせてユーリは掛け布団を頭からかぶりました。
(・・・これまで、みんなで頑張って来たのに。だめだった。受験、できなかったよ・・・専門学校って、お金、かかるのかな。私にできるかな・・・)
(・・・ほんとに私って、だめなんだなぁ。私なりに、頑張ってきたつもりだったのに・・・運も無いのかぁ・・・)
(・・・あれ、なんだろ。悲しくないのに・・・涙出てきた)
ひっくひっくと、ユーリは嗚咽をこらえました。
肺に負担がかかる・・・と泣きだすのは抑えました。
(・・・大学、行けなかったや・・・・・・)
十分頑張ったよ、ユーリ。
何回も模試を受けて、試験も乗り越えて・・・
頑張ったよ。よく頑張ったよ。




