高校生ユーリ~3年生~①
ユーリもとうとう大学受験の年になってしまいました。
ユーリは医療クラスのE組になり、村田君や告白作戦の多くのメンバーとは離れてしまいました。
それでも、たまに廊下で会うと村田君は笑いながら挨拶してくれ、友達もちょっかいのかけあいをしてくるので、何も変わらないと一安心です。
新しい年度になり、いろんなことがありました。
多賀君にふられ沈んでいた蘭は、春休み中に「決めた。私、彼女が無理なら親友になる。多賀ちゃんの心の友になる」と思いを変えたようで、新学期が始まってみるととても仲良しになっていました。
環奈とは、ちょくちょくメールのやり取りをするようになりました。
理由は違いますがお互い話すのが苦手で、環奈は遠い学校で寮生活のため会う機会もほとんどないのですが、新学期初日に、村田君を通じて贈り物をもらいました。
「これ、環奈から咲野にって。勝手に中見たら絶交、咲野とも絶交させるって環奈に言われて。だから俺見てないから!」
「あ、ああああありがとう」
「環奈さ、小さい頃耳聞こえなくなったせいで、中途半端に喋れるけど上手くなくて、聾学校入るまでいじめにも遭って、ほとんど友達できなかったんだ。こないだ咲野に会って、耳が聞こえる女の子で、あんなに向き合って話してくれて、メールもこんなに相手してくれて、凄く嬉しかったって。ありがとな、咲野。・・・あ、それ中見たらちゃんと、村田春は中身見てなかったってメール書いて送っといてよ!俺マジで見てないからね!」
必死に訴えて帰って行った村田君が可愛く、ユーリはにこにこしながら包みを開けました。
(・・・お守り?)
学業向上で有名な神社の、受験成功祈願のお守りでした。チリンと、可愛い鈴がついています。
一緒に手紙も入っていました。
『ユーリちゃんへ。今年は受験、頑張ってください。大学はどこになるのかな。もし近くなら、また会えたら、遊べたら嬉しいです。今度は春抜きがいいなぁ。お守りはね、春とおそろいです。一番ご利益あるのを私が先に、ユーリちゃんにって選んだのに、真似されました。今年も、春をよろしくお願いします。星村環奈』
(・・・環奈ちゃんは、村田君のことどう思ってるんだろう・・・?)
不思議なことだらけですが、そのお守りを携帯につけて、ご機嫌なユーリです。
新しい友達も、もちろん増えました。
「ユーリッ!」
「おっはよっ!」
「さーて」
「今日は」
「「どっちがどっちでしょうっ!」」
今日も登校すると、目の前に同じ顔の女の子が2人、肩を組んで並びました。
(うぅ・・・・・・毎日わかんないよぉ・・・)
「・・・こ、こ、こっここここっちが、紅葉ちゃん?」
「あ、すごーい!」
「今日は当たった!」
「なんで?」
「なんで?」
「・・・・・・なんとなく」
(・・・としか言えないよぉ!!)
ユーリの答えを聞いた2人は、満足したのか次の友達のところにアタックしに行きました。
「ユーリおはよー。いやー変わらんね、楓と紅葉は」
隣の席のとっこが、だらーんとした体勢で声をかけてきました。
とっこは理学療法士志望なので、ユーリと同じクラスのままでした。
「・・・と、と、とーーーーーーー・・・とととととっこは、わかる?どっちがどっちか・・・」
「全然。双子ってあそこまで似るのかねぇ・・・毎日違うネタ披露してくれるから楽しいけど、凄いよねあの2人」
3年で初めて同じクラスになった京極楓と京極紅葉は、まるで鏡を見ているかのようにそっくりな一卵性双生児です。
楓は演劇部と美術部、紅葉はダンス部と家庭科部に所属し時々入れ替わっていたらしいのですが・・・ユーリは全く気付いていませんでした。
噂によると、彼女達はホスピタルクラウンを目指しているようです。
しかし・・・大学に行かせたい親の意向もあって進路の方向性が定まらず、迷いに迷った結果、一度看護の勉強をするということでE組になったそうです。
独学で手品やパントマイムも身につけた京極姉妹はクラスのムードメーカーで、彼女達の周りは常に笑いが絶えません。
「おい京極楓!寝るな!起きろ!」
「せんせー、そっちは紅葉でーす私が楓ですー」
「えぁ?でも座席表はあそこが楓・・・」
「さっき交換して、また元に戻してやっぱり気が変わったんでーす。あ、今日遅刻しちゃったのは楓じゃないですよー紅葉はちゃんと2限までに来ましたよー」
「もう何でもいいから全部文字で書いて提出してくれ。正直な、お前らの顔セットで毎日見てると夢に出てくるんだよ」
・・・先生方も、似すぎているこの2人を同じクラスにしたくなかったに違いありません。
ユーリはこの2人と初めて会った時、トイレから出てくる時にすれ違いに入って行ったはずの子が教室にもいるという場面に出くわし、
「ととととととっこ!ねえとっこ!わわわわ私ど、ど、ど・・・・・・どどどドッペルゲンガー見ちゃった!」
と、とっこを巻き込んで1人で騒ぎ、クラス中に笑われました。
それ以来、楓と紅葉とは仲良しです。
他にも・・・
「咲野咲野!今日帰り暇?」
「ぶ、部活終わったら、かかかかかかか帰るよ」
つい最近仲良くなった、山ノ内君です。
「じゃあ5時くらい?ちょっとでいいからさ、俺の訓練の成果見てってよ!」
「えー・・・」
「お願い!咲野以外、俺頼める人いないんだ・・・」
「・・・そ、そそそ・・・そそそろそろ、他に誰か・・・」
「やだよ、頭おかしいと思われるじゃん!」
(いやもう十分おかしいよ!ってかもうみんな知ってるよ!)
山ノ内裕也君は、将来なりたいものが医者か忍者という、E組の中でもぶっ飛んだメンツの1人です。
本人はいたって真剣で、進路希望調査に忍者と書いたり、筆記用具は全て筆だったり、ノートはお手製の巻物だったり、校舎から隣の校舎へ飛び移ろうとして落ちたりと、校内放送で呼び出しを何度かくらっています。
たまたま、最終下校後に忘れ物を取るため学校まで引き返して来たユーリが、校舎の色に合わせた全身タイツで今にも壁をよじ登ろうとしている山ノ内君を見てしまったのが、知り合うきっかけでした。
「き、今日は、何するの?」
「ふふん。見てくれるか、水面を走る技を身につけた」
山ノ内君の目は、きらきらと輝いています。
「・・・やっぱり帰る」
「咲野ー!」
かなりの変人扱いの山ノ内君ですが、人体のツボや薬・・・特に漢方薬には本当に詳しく、よく女子の悩み相談にも乗っています。
(・・・なんでこんな人が模試で全国10位なの・・・)
勉強に関しては頭もめちゃくちゃ良いので、聞けば勉強も真面目に丁寧に教えてくれます。
「・・・影分身ってさ、反復横とびマスターすればできるのかなぁ?」
でも、こういうことを真顔で言う子なのです。
「幹細胞取り出して、お前を再生させればできるんじゃね?」
冷静に返してくれるのは、臨床検査技師を目指す水野大雅君。
頑張ってクールを気取っていますが、裏では近所のちびっこみんなが憧れるカードゲームの王様です。
「年単位かかるわ。俺は今すぐ分身作る方法考えてんの!」
「次元下げれば即座にいくらでも可能だよ。手伝おうか?」
臨床工学技士を目指す、橋本光樹君。
ヒカルキというハンドルネームで、格闘オンラインゲームの世界では知らない人はいないレベルの存在らしいです。
「それは美しくない」
「めんどくせぇな、じゃあもう理科室で飼ってる金魚とハムスターは今日から全部山ノ内だ。ほら分身できた。あ、俺山ノ内に今朝採れたブロッコリーあげてこよっと」
山ノ内君と同じく医師を目指す、綺堂流君。
彼は間違った反抗期を迎えたらしく、破壊衝動を全て自宅の庭に向け完璧な家庭菜園を作り、無農薬栽培に成功。
狼の遠吠えの物まねが得意なので、野生動物に悩まされていた近所の農家の人々からは大人気だそうです。
「待て流!俺ブロッコリー嫌い!」
(・・・・・・この人たちもみんな、模試で全国100位以内入るんだもんなぁ・・・)
時々、ユーリは思います。世の中はやっぱり不公平です。
でも、この最後の一年。
凄く凄く、楽しい年になりそうです。




