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高校生ユーリ~1年生~③

ユーリはダンス部にも正式に入部し、活動にもだんだん慣れてきました。



友達もあっという間に増え、中学校とは打って変わってとても楽しく過ごしています。



(学校って、こんなに楽しかったっけ・・・)



毎日、ユーリは笑顔がとまりません。




さて、今日は体育大会です。



慣れている先輩方に混ざって、1年生達もそれぞれ自分の種目で点を稼ぎます。



同じ色のハチマキや帽子にポンポンなどは縦割りの団で引き当てた色のものを使い、応援します。そして団で結束して戦います。



ユーリもみんなと一緒に超短距離走や綱引きを必死で応援し、借り物競走には靴を貸しました。



そしてクラス内でも走るのが速かったユーリは、女子クラス対抗リレーと男女混合スウェーデンリレーに出場することになっていました。



いよいよ、次が女子のクラス対抗リレーです。



(中学の時は、玉入れしか出してもらえなかったもんね。よーし、頑張るぞ!)



入場前にリレーメンバーのみんなで円陣も組み、やる気も十分です。



「ユーリ―、次のクラスリレー頑張ってね!」


「緊張するぅ・・・もしあたしが失敗したら、ユーリ挽回してね!」


「よっしゃ、B組の強さ見せてやろ!」


「サキ、一緒に頑張ろうね!」



大勢の仲間に背中を押され、一緒に走る仲間と一緒に、いざ入場します。



スタートは陸上部の慧。続いて春海、舞子、ユーリ。アンカーはマイです。



『走者は、各位置にスタンバイしてください』



アナウンスが流れ、ユーリは春海と一緒の位置につきました。



「けーい―!いつもの調子、リラックスー!」



「・・・あ・・・・・・が、がが・・・・・・・・が、頑張れー!・・・・・・え・・・」



(あぁ・・・なんで?慧の“け”が出て来ないよ・・・)



本当は春海のように慧の名前を叫びたいのに、喉が閉まって声が出ません。



小声で、慧頑張れ、慧頑張れと呟きます。



『よーい!』




ぱぁん!!



白煙と共に慧がスタートを切りました。



「よし!いいよ慧、トップ!じゃユーリ、またあとで!」



「うん、がっがががががが頑張ってね、はっ・・・・・・ぁるみ」



春海が手を振りながら、笑顔でコースの内側に出ていきます。



「慧、ナイス!」


「春海!パス!」



鮮やかなバトンパスの後、春海が走り出していきます。



「お疲れ様!ぇ・・・・・・け、・・・けけけけけけ、け、い」



「ありがとー!いやーC組怖いわ!お、春海―行け行けー!」



春海はトップをキープしたまま、舞子にバトンを渡しました。



「舞子ー!ぶっちぎれー!」


「舞子、良い調子だよー!」



(・・・なんでだろう、舞子は言えるのに・・・)



「ほらユーリ、スタンバイスタンバイ!」



慧に促されて、ユーリが慌ててコースに出たその時。



「「舞子!!」」



コースの中盤、緊張のせいか舞子が転倒してしまいました。



2位につけていたC組が湧き、B組からは絶叫が響き渡りました。




舞子はすぐに立ち上がって走り出しましたが、既に最下位まで落ちていました。



「大丈夫、ユーリとゆっちなら取り戻せる!行けユーリ!」



「うん、がっがが頑張る!!」



(・・・やるよ、舞子。あたし、やるから。見ててね)



ユーリが舞子からバトンを受け取った時、舞子は涙をこぼしていました。



ユーリは、走ります。



上半身の軸をぶらさないように、腕も大きく振って、駆けていきます。



速く。速く。もっと速く。



1人目、2人目、抜きました。



舞子の泣き顔、笑顔に変えるんだ!



3人目と並びました。



(・・・駄目だ、この子抜けない)



「サキ!」



大きく手を振る、マイの姿が見えました。



ユーリは安全なバトンパスのため、少し速度を落とし距離を開けました。



(トラック一周分走るマイなら、この子は抜かせる)



ぱしん!



バトンパス、完了!


走り終えたユーリは、マイを目で追いながら春海と合流しました。



「ゆっちー!!行け行け、抜かせー!!・・・ねえユーリ、舞子大丈夫かな・・・?」



「舞子、ずっと・・・泣いてるね。あ、マイ!が、がががががががん、頑張れー!!」



ユーリの予想通り、マイは3人目を抜かし、トップを走るC組との一騎打ちになりました。



B組、C組からは喉が裂けんばかりの声援が響いています。



泣いている舞子にも、届いているはず。





そして。





『ゴォォオォォォォォォォル!!いやぁ白熱した戦いでした!!』










結果は・・・・・・B組は、僅差で2位でした。




「みん、みんなっ、ご、ごっ、ごめ、んっ、ごめん、ね、ごめん」



退場してもなお、舞子の涙が止まりません。



「2位だよ舞子!うちらやったよ!」


「そうだよ、誰も気にしてないよ!」



口々に慰めますが、舞子は泣き続けています。



「・・・ご、ごご・・・ごごっごごめんね、舞子。あたし、たたたたたたたたたった、た、あ、頼まれてたのに、舞子が、距離つつつ、詰めてくくくっくくれたのに、抜かせなかった・・・ごご、ご・・・ごごごめん、ね」



「あたしもごめん。2人が追い上げてくれたのに、C組抜かせなかった。ごめん」



「ユーリと、ゆっちは、わ、わるっ、悪く、ない、よ・・・あたしが、あたしがっ、こけ、こけなかっ、たらっ」



クラスのみんなも、健闘をたたえに来てくれました。



「咲野と舞原すげぇな、あそこまで立て直すと思わなかった!」


「ほんと、映画の1シーンみたいだった!」


「いっつもぽやっとしてるからわかんなかったけど、舞子、超速かったよ!スウェーデンはB組がもらったね!!」



(いいな、すごく、みんなあったかい・・・)



誰ひとり、転んだ舞子を責めませんでした。



それに。



「おぉ?舞子やん。どしたん、泣いとん?」



2年のクラス対抗リレーに出る同じ団で、部活でも舞子の先輩にあたる人が、様子を見に来てくれたのです。



「せん、先輩っ・・・」



「舞子よう頑張ってたで。あとはうちらと3年の先輩に任しとき。きっちり1位とってきたる!笑顔で応援すんねんで舞子ー!」



先輩がにかっと笑いながら舞子の頭をくしゃくしゃと撫で、やっと舞子に笑顔が戻りました。



「あ、舞子・・・けけ、けっけけが、してる」



「え。あ、ほんとだ・・・」



「あたし、・・・・・・っほほほ保健ブース行って、ばっばば絆創膏、ももももらってくるね」



「今なら保健係、村田君だしねー。うんうん1人で行かしてあげよう、行っといでユーリ」



にやにやとマイが脇腹をつついてきます。



(ち、ちちち違うもん・・・)



少しドキドキしたまま、ユーリは保健ブースに向かいました。



(はぁー・・・絆創膏って、ちゃんと言わなきゃ)



絆創膏、絆創膏と歩幅にあわせて呟きます。



保健係の立て看板が見えたあたりで一度立ち止まり、深呼吸します。



(・・・よし、絆創膏。行こう!)



一歩踏み出したその瞬間、ぐいっと腕を引っ張られました。



「・・・え?」



「・・・・・・・・・」



振り向くと、幼稚園くらいの女の子が1人立っていました。



「どっどどど、どうしたの?」



しゃがみこんで女の子と目線を合わせ、ユーリは問いかけます。

しかし、女の子から言葉は出てきません。指で何かジェスチャーをしています。



「迷子?お、おおおおお、おっお母さんとか、いい一緒?」



「・・・おー・・・いー・・・おお・・・」



(えー・・・どうしよう、わかんないよ・・・先生のとこ、連れていけばいいのかな?)



「ユキ!」



ユーリが困惑していると、後ろから声がしました。



(ひ、ひええ村田君・・・!)



村田君が近寄ってくると、女の子の顔がぱあっと輝きました。



「わりぃな咲野、さんきゅ。ユキの相手しててくれて・・・」



よいしょ、と村田君もユーリのすぐ隣にしゃがみこみました。



(ひいいい、近い、村田君近いよおおお・・・・・・)



「ユキ・お母さん・は?」



単語で区切りながら、村田君もジェスチャーをしながら女の子に話しかけました。



(ジェスチャーだと思ってたけど・・・・・・手話、なんだ・・・)



さっさっさっと、ユキちゃんが手話で返します。



「いー・・・お・・・あ・・・」



「俺は・まだ・お仕事・だから・お母さんと・待ってて・お昼は・一緒に・食べよう?」



「ん!」



ユキちゃんは、こっくりと頷きました。

そのまま走り出そうとしたのを、村田君が肩をつかんで引きとめます。



「ユキ・お姉ちゃんに・ありがとう・は?」



(え、あたし・・・!?)



ユーリがびっくりしていると、ユキちゃんは足を止めて、ユーリの方に体ごと向き直りました。



「あいあ、おー!」



ユキちゃんが、ぺこり、と頭を下げます。



「咲野、『どういたしまして』ってこうやって、やってあげてくれ」



ユーリは村田君に教わったとおり、「どういたしまして」と手話を返します。



ばいばい、と手を振ってユキちゃんはあっという間に駆けていきました。



「いやー、さんきゅー咲野。捕まえてくれてて助かったわ―」



「あ、あああ、あの子は・・・?」



「あー、俺の妹。生まれつき耳聞こえないんだわ。手話と、読唇ができれば便利だろって家族でやってんだ。挨拶とかできるようになればいいなって」



「そう、なんだ・・・」



(ユキちゃん、あんなに可愛いのに大変だなぁ・・・手話、あたしも勉強しようかな)



「ところでさ、咲野って次交代だっけ?」



あ。と、ユーリはこちらに来た目的を思い出しました。



「ば、ばば、ばっばんそうこう!」



「あー、さっきこけた山城のか。よしよし特別にくれてやろう」



ユーリは村田君に続いて保健ブースに入りました。



「はいよ、絆創膏」



「あ、あああああああ、ああああり、がとう・・・」



「咲野もめっちゃ脚速いんだなー。俺ここから見てたけど。カッコよかった」



ぼん!!とユーリは顔が一気に赤くなるのがわかりました。



「あ、ああああああああああありありありがと!むっむむむ村田君も、速そうだもんね、応援してるね!」



と、赤い顔を見られたくないあまりによくわからない返事をして、ユーリは走り出してしまいました。




(うあぁぁぁぁ・・・恥ずかしいよー・・・でも誉めてくれた、村田君が誉めてくれた・・・)




団の応援スペースに戻ったあとも、舞子とマイに真っ赤な顔をさんざんいじられました。



ユーリ、青春してます。


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