高校生ユーリ~1年生~②
高校で初めてのホームルームが始まりました。
大量の配布物、教科書販売のお知らせ、校内探検、委員会決め、自己紹介。
まずは自己紹介からです。
(自己紹介・・・あるよね・・・やだな・・・)
「じゃあ、先生から出席番号順にいきましょう。先生は林凛、担当教科は国語、部活は女子バスケです。1年間よろしくね。じゃあ、相川さんから、名前と中学と、趣味でも言ってみようか」
(あぁ・・・始まっちゃったよー・・・どうしよう、趣味とか何言おう・・・)
まだ早い番号の子達なのに、ユーリは心臓のばくばくが止まりません。
両手でぐっと椅子を握って、下を向いて必死に考えます。
「・・・・・・はい、よろしくね斎木さん。じゃあ次、咲野さん」
「は、はいっ」
がたがたと慌てて立ち上がります。
(どどどどうしようみんな見てる・・・!緊張するよぉ・・・!!)
「すっ・・・・・・すぁ・・・・・・・・・・す・・・」
“さ”と言いたい形の口から、息がどんどん漏れていきます。
苦しい。息が、苦しい。
「スーーーーーー・・・・・・・・・すすすすすささあすぁ、さきの、ユーリです。だっだだ第一中学校の出身です、しゅ、趣味、趣味は・・・・・・だだだだだだだだだっだっだ、だん、ダンスです!よっよよ、よ、よ、よ、よおおろしく、おおおおおお願いします!」
真っ赤な顔で、目もつぶって一息に言いました。がたん!と着席して下を向きます・
頑張ったよ、ユーリ。
(わぁぁぁ・・・上手く言えなかった・・・どうしようどうしよう、恥ずかしいよ・・・みんなどう思ったかな、気持ち悪いとか思われてるのかな・・・)
きつくつぶっている目に、涙が浮かんできました。
中学校では、みんなの前で何か発表するたびにくすくす笑われて悪口を言われ、嫌な思いをしたのです。
「うん、よろしくね咲野さん。じゃあ次、須藤くん」
(え、あれ・・・?)
笑い声も悪口も聞こえません。先生も、何も無かったかのように自己紹介を進めていきます。
そーっと目を開けて周りを見ると、みんな優しい目をして次の子の方を見てました。
(・・・あたし、今のは失敗じゃなかったのかな?上手く言えてたのかな?)
なんとなく、今の自己紹介がなんでもなかったように感じられ、あとは落ち着いてみんなの自己紹介を聞けました。
(みんな良いなぁ、普通に話せてて・・・あ、あの子可愛いな・・・うわ、あの人かっこいい・・・)
全員分の自己紹介が終わり、休憩時間。
ユーリがプリントに目を通していると、つんつんと肩をつつかれました。
「ねえ、咲野さんだよね?名前、あたしもゆうりっていうの!咲野さんは、ゆうりってどんな字書くの?」
ポニーテールの女の子でした。確か、舞原さん。
久しぶりに同級生に話しかけられて、ユーリはどきどきしています。
(は、話しかけてきてくれた・・・嬉しい、嬉しい・・・!上手にお話しなきゃ!)
「よよよよおおお、よよろしく、ね。あたしは、悠久の悠に、るる瑠璃色の、璃。ま、舞原さんは?」
「あたしはねー、優しいに、すももって字で李。んー、お互いゆうりって呼んでたら紛らわしいね。あ、じゃあさ、咲って呼んでいーい?」
「・・・・サキ・・・?」
初めての提案に、ユーリはきょとんとしました。
「咲野のサキ。あたしはマイって呼んで!そしたらわかりやすいよ!あ、さきちゃんもまいちゃんもいるかこのクラス・・・まぁいっか、あだ名だもん早いもん勝ちだよねー!」
まるで太陽にように、優李ちゃん・・・マイは明るく笑います。
つられてユーリも一緒に笑いました。
「ああ、ああああああり、あありが、とう。あたしもマイって、呼ぶね!」
「サキ、あたしの高校でのお友達第1号だよ!あ、先生来ちゃった。じゃあね、あとでアドレス教えてね!」
マイがばたばたと席に戻っていきました。ユーリは、笑顔が止まりません。
(サキ・・・サキ・・・かわいいあだ名、全然嫌じゃないや。嬉しいな、嬉しいな)
続いて、委員会を決めの時間になりました。
学級委員、体育委員などなど、全部で6つ。男女一人ずつで12人選ばなければなりません。
「何かしてみたい委員がある人いない?いろんな人に会えるきっかけにもなるし、良いと思うよーやってみたらー?」
(ど、どうしよう、何かやってみようかな・・・)
中学校の時は、委員会は人気がありすぎてユーリは混ぜてもらえませんでした。
ここでは、できる気がします。
「先生、私図書委員したいー」
「俺体育委員します」
ぼつぼつ手が上がり、だんだん埋まっていきます。
(埋まっちゃう・・・どうしようどうしよう!えぇい、やっちゃおう!!)
しゅぱっ!と、ユーリは手を挙げました。
「お、咲野さん、何する?」
「ほ・・・・・・ほおおほほほ保健、委員、したい、です」
「はいっと。他にいないから決まりねー」
ぱちぱちと拍手が起こります。これで女子の委員会は全部決まりました。
「ハイ男子ー負けてるよー誰かーいないのー帰れないよー」
・・・先生のやる気がなくなってきたようです。
「・・・じゃあ俺、風紀やります」
(うぅ・・・あと保健委員だけ男子が出てない・・・女子があたしだから、嫌なのかなぁ・・・)
「じゃ先生。俺、保健します」
(え・・・・・・え!え!!えぇ!?)
声が聞こえてきた方を見て、ユーリはびっくり。
「はーい、村田君ね。決まった決まったーじゃあ次の連絡いきますよー」
ユーリが自己紹介の時に、かっこいいな・・・と思った子でした。
(えええ!!うう嬉しいけどききき緊張する!絶対話せない!どうしよう気分悪くなってきた!)
もう他の連絡が全く耳に入ってきません。
(そ、そうだ深呼吸、深呼吸しよう、落ち着かなきゃ・・・)
すー、はー、すー、はー。
「・・・大丈夫?気分悪い?」
深呼吸しすぎて、前の席の子が心配してくれました。
「だ、だだだだいじょうぶ、ああああ、あああり、ありがとう・・・」
そしてあっと言う間に、校内探検の時間になりました。
・・・ほとんど連絡事項に集中できなかったけど、大丈夫かな?ユーリ・・・
「サキ!一緒に行こうよ!あ、今のうちにアド教えて!」
「う、うん・・・!」
マイが駆け寄ってきてくれました。
おどおどと携帯電話を出して、連絡先の交換をします。
すると。
「咲野さん、委員会一緒だよね。よろしく。俺も連絡先教えてよ」
(ひいいいいいい!!!)
村田君の登場です。
改めて近くで見ると、イケメンで背が高くて、痩せ型の体型、ワックスで無造作にいじられた髪形、目もきりっとしています。
ユーリはぼんっ!と顔が赤くなるのを感じました。
緊張しすぎて携帯を持つ手も震えます。
「は、はいっ」
「あはは、なんで敬語なの?・・・手震えてるし顔赤いけど、大丈夫?体調悪い?」
「だ、だだだだだ大丈夫、です」
なんとか連絡先を交換できました。
「さんきゅ。俺頑張るけど忘れっぽいから、いろいろよろしくな。んじゃ、また明日」
にこっと笑顔を見せると、村田君は颯爽と友達の輪の中に帰って行きました。
「サキ~ああいうのがタイプなの~?顔真っ赤にしちゃってわかりやすいんだからぁ~」
にやにやしながらマイがつついてきます。
「え、あ、いや、あの、あのね、ええっと」
「はいはい否定しなーい。なになに、村田君のどこがいいの?背?顔?筋肉?」
マイの追及に困っていると、担任の先生が後ろからぬうっと現れました。
「ほらほら咲野さん、舞原さん。みんなと校内探検早く行った行ったー」
・・・教室から追い出されてしまいました。
「あ、やっばい置いていかれちゃった。行こっかサキ、村田君追いかけよ?」
「い、いい、いいです、きききき緊張します・・・」
2人はクラスメイトを探し、歩きだしました。
楽しい高校生活になりそうですね、ユーリ。




