手紙の主①
ある日、僕の中学校であった、学年別スピーチ大会の話です。
「・・・・ぁ・・・・・ぁぁあ、なたは、今、かっかかかかかかかかかかか・・・・かがが、かかがやいていますか?わたわたあ、わたしは、世界中のここここここおここ子どもが・・・・・・・・・」
今スピーチをしているのは、3年の咲野先輩。
真っ赤な顔で、とても息苦しそうに・・・必死に読んでいます。
毎年スピーチをしているけれど、3年間ずっとこんな感じらしい。
ギャラリーの他の3年生たちは、ずっとくすくす笑っていて凄く嫌な感じ。
動画を録っているヤツもいる。ノートを広げて、何か企んでいるヤツもいる。
いくら生徒主体のイベントだからって・・・止めないのはどうなの?先生・・・
僕は今、出入り口のところで、そっと聞いています。
先輩の・・・名前も言えていない先輩の気持ちが痛いぐらいわかるから、入学してから毎学期、こっそり聞きに来ているんです。
気持ちがわかりすぎて、耳をふさぎたくなるくらいのスピーチです。
おっと、ごめんなさい。僕は、2年の竹中豪です。
僕も・・・自分の名前が、上手く言えません。
「たったたたたた・・・・たた・・・たたけ、たけなか、ごう、です」
これが僕の自己紹介の1文目。
こんな風にしか名前が言えない上に、無意識に眼が左上に動いていて、口がパクパクして、足踏みをしてしまいます。
幸い、僕には理解してくれる友達が何人かいてくれるから、咲野先輩みたいないじめには遭わなかったけど・・・・・・
先輩、なんで毎回、こんなに頑張れるんだろう?
「・・・・以上で、今学期のスピーチ大会は終了となります。結果は後日掲示します。ではお疲れさまでした。3時間目からは通常授業です。」
ナレーターが締めくくり、大会が終わりました。
僕はサッと、近くの物陰に隠れました。
そーっと出入り口の様子を見ていると、咲野先輩がうつむきながら出てきました。
心臓のあたりを片手で押さえて、まだ赤い顔をして。
先輩、僕ずっと聞いてました。先輩凄いです、あんな大勢の前で何度もスピーチして・・・僕、尊敬してるんです!!
・・・って、言えたらなぁ・・・。
「ねぇアサジー。今から“反省会”だよ。何帰ろうとしてんのよ」
「さっさと来いよ、アサジのくせにとろいとかありえねえわーマジ」
アサジ?アサジってなんだろう・・・?
クラスメイトかな、女の子3~4人に囲まれて、咲野先輩が障害者用トイレに連れ込まれていきます。
「アサジさぁ、ウチらに恥かかせる気なわけ?これじゃまるでウチの組みんな障害児みたいじゃん」
「あんだけ普通に読めっつっといてこのザマなんだから、どんな目に遭うかわかるよねぇ、アサジ?」
「・・・・・ご、ごめんな・・・さい」
「ウチらに恥かかせたんだよぉ?傷ついたぁー、アサジのこと信じてたのにぃ。ほんと調子乗るのもいい加減にしてよね」
「みんなやめようよ、あさがお教室の障害児には何言ってもわかんないよ。それどころか、ウチらキレた障害児ちゃんに刺されちゃうかもよ?」
「あ、あああたしそんなこと、ししししししない・・・」
「さっすが春日委員長、考えることが違う!」
「というわけで、アサジ。約束破った罰ね。全員に罰金1万円ずつ払うか、ここで便器舐めるか、どっちがいい?」
「え・・・・・・」
「ウチら優しいからぁ、選ばせてあげる!」
酷過ぎて・・・吐き気がしそうな話だった。
助けにいきたいけど・・・怖い。
先生を呼びに行くか?でも名前も言えない自分は、ちゃんとこの事態を伝えられるのかな?
咲野先輩を助けたことで、僕がいじめられたりしないだろうか・・・・・・
「さっさと選べよ、とろいんだよガイジが!!」
早く、早くしないと・・・
僕は・・・・・・・・・




