中学生ユーリ~3年生~③
年が明け、いよいよ高校入試です。
「ユーリ、試験は絶対大丈夫だからね。迷子にだけなるんじゃないよ」
「うん、わかった。気をつけるね。行ってきます!」
結局ユーリは、お姉ちゃんと同じ高校を受験することはやめました。
お姉ちゃんや父母と相談して、同じ中学校の子が誰もいない、少し遠くの高校を受験することにしたのです。
入試当日・・・手ごたえは、ばっちりでした。
少しランクは落ちてしまいましたが、もう嫌な思いをしたくない一心で、ユーリは朝早く起きて遠い道のりを越えて受験会場に行き、試験を受けてきたのです。
「・・・で、どうだったんだい?」
「うん、できたよ。ごっごごうかく、できるとおもおも思う」
入学試験の翌日、ユーリはまた鵜森さんのところにイルカに会いに来ていました。
エサやりもすっかり上手になっています。
今日は陸に戻ってきてから、一緒に船の掃除をします。
「そっかそっか!まず一安心だな!卒業式はいつだ?」
「・・・明後日」
「なんだ、暗いじゃないか。卒業式で何かあるのか?」
「うーん・・・練習してるけど、何も無いと思います」
「卒業しちゃえば、あのいじめっ子どもとおさらばできるんだろう?もっと笑顔でいかなきゃ・・・おい、圭一!」
急に、鵜森さんが大声で誰かを呼びました。
ユーリがびっくりして振り向くと、スーツを着た背の高い、若い男の人が車に乗り込むところでした。
男の人はユーリに気付いてゆっくり一礼すると、車で走り去っていきました。
「あれが俺の息子の圭一だよ。やっと就職決まったんだ。いやー俺も嬉しいわ」
「なんの、お仕事ですか?」
「詳しいことは忘れたけど、なんか小さい機械の管理会社らしいなー。毎日研修で張り切ってるよ。あいつもなかなか喋るの頑張ってたけど、まぁなんとか社会人だ。あいつが大丈夫なんだから、真面目なユーリちゃんも絶対大丈夫だな」
「そ、そうですかー・・・?」
「就職決まるまで、あいつ凄いへこんでたからなー・・・なんか普通って何だとか、障害の定義は何だとかぶつぶつ言っててな」
「ふ、つう・・・」
ユーリは、同級生に言われ続けている言葉を思い出しました。
挨拶ぐらいできるだろ普通
ごめんなさいぐらい言えるだろ普通
普通そこ噛まねえだろ
(あたしは、言えない。言えない、だけなのに・・・)
・・・・・・・・・普通って、何だろう?
「俺の頭だとさ、普通なんて定義ねえんだよ。だいたいみーんな自分が正しい、自分が普通と思ってんだ。自分以外の人間のことなんざわかんねえだろ?」
「うん」
「人の在り方に正しいも間違いもねえよ。今目の前にいる人の、ありのままが真実だろ。それをそのまま受け止めねえでどうすんだ」
ユーリは、鵜森さんの言葉に激しく共感を覚えました。
「まぁユーリちゃんはこんな小難しいこと考えないで、青春謳歌してくれや」
「せい、しゅん・・・・・・はぁ」
「なんだ、溜息ついて。学校にイケメンとかいねえのか?」
「わかんない・・・・・・みんな、嫌いだし」
「まーそうだな、そんなとこにいりゃ嫌いにもなるな、悪い悪い。高校とか大学とか行きゃいいヤツに出会えるって。もうちょっとの辛抱だな」
「はぁーい・・・」
「ユーリちゃんがもうちょっと大人だったらなーうちの圭一・・・いやでもユーリちゃんにはうちの馬鹿よりもっといい男ができる。うん、確信する」
「ど、どうかな・・・」
「いや大丈夫大丈夫!俺が保障する!」
はっはっは、と鵜森さんは自信満々にかつ元気に笑いました。
ユーリも一緒に笑いながら、キツオンというモノを持っているあの人とお話してみたかったな、と思いました。




