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中学生ユーリ~1年生~②

ある日、クラス対抗のスピーチ大会へのエントリーを決められてしまいました。


国語の先生は、「咲野さん、今度は大丈夫?嫌なら変わってもいいのよ」と、まるでユーリにやる気が無いかのように言います。



やる気が無いわけではありません。できないのです。



それに、嫌だ、やりたくないと言ったってクラスに代わってくれる人などいません。




一度だけ、ユーリは先生に申し出たことがありました。




「先生、私、・・・・・・・っすすすすす、すすすすすすスゥピー、チ大会・・・やりたく、ないです」



「あら、そうなの?じゃあ、みんなでまた決めてもらわないと・・・」




(だめ、だめだよ先生・・・みんなで決めるんじゃだめなんだってば・・・)




そして先生は授業中・・・



「皆さん、他にスピーチ大会出たい!って人、いない?」



「先生、咲野さんのはずですけどー」



(やめて・・・やめて先生・・・!!)



「うん、咲野さん、辞退したいんだってー・・・」




「えー、なにそれ?」



「先生、俺たちは咲野さんを推薦したんです。本人から一言あってもいいんじゃないですか?」



「なんでやりたくないのか私たちが納得できたら、交代します」



「うんうん、そうだよね。咲野さん、説明してくれる?」




「あたし、・・・・・・・っえっと・・・・・・・んと・・・・・」



(“す”が出ない・・・!お願いスピーチ、スピーチ!)



緊張のあまり、喉から声が出てきません。


だんだん顔が赤くなり、足踏みも始まりました。



「先生、特に理由もないみたいなので、咲野さんでいいと思います」



(違うの、言えないだけなの・・・!お願いちょっと待って・・・先生・・・!!)



「そうだったの?咲野さん、もっとみんなと話し合ってから言ってくれなくっちゃー。先生びっくりしちゃった。じゃ、授業始めようか。座って咲野さん」



(先生・・・お願い、私の心読んでよ・・・もう嫌だよ・・・)



大きなショックを受けたユーリは、何も言えないまま自分の席に戻りました。



教科書を開いた途端、どこからかくしゃくしゃにされた紙が飛んできました。



(・・・やだよ・・・なんで?なんであたしがこんな目にあうの?あたし何かしたの?)



紙を開けると、そこには



“障害児”


“調子乗んな”


“うぜぇ、消えろ”



ぐっと唇をかむとユーリは紙を制服のポケットに突っ込み、ぐっと黒板に目を向けました。




(慣れた、あたしは慣れたよ・・・こんなのじゃ負けないよ、大丈夫、あたしは大丈夫。強い子だもん)




授業が終わり、帰る時にも靴の中に似たような紙が入っていました。



“もう来んな”


“死ね”




(・・・大丈夫、ユーリ、ユーリは強い子。負けないよ・・・)



紙を捨ててユーリがとぼとぼと校門を出ると、すぐそばにお姉ちゃんが立っていました。



(お・・・お姉ちゃん?)



ユーリは慌ててにじませていた涙をぬぐいとります。



お姉ちゃんはとても冷静に、



「ユーリ、ちょっとついておいで」




と言って歩き始めました。



そしてユーリをドーナツ屋に連れてくると適当に買い、さっさと席に着きました。



「お姉ちゃん私・・・た、立ち寄り禁止・・・」



「これでも着てなさい。まぁ見つかったら口添えしてあげる」



お姉ちゃんは自分の高校のジャージを取り出すと、ユーリに着せました。

これで中学校の制服は見えません。



「ユーリ。あんた何かお母さんや私に隠してることあるでしょ?」



ぎくり。



「何にもないよ」



疑われないよう、ユーリははっきり即答しました。


水をごくごくと飲みほします。




「あっそ。じゃあこれは何かなぁ」



そう言うと、お姉さんは携帯電話の画面をユーリに見せました。




(・・・う・・・・・・そ・・・)




「・・・・・・」




「いじめられてるんじゃないの?ユーリ」



“某組の障害児S”


“挨拶もできないゴミ女 ずうずうしくもクラス代表に”


“お礼謝罪も言えないS 不登校へのカウントダウン開始”




ユーリの通う中学校のいわゆる裏サイトでした。


そのページには、ユーリと特定できるような悪口がたくさん書かれていました。



「卒業した私が言うのもなんだけどさ、あの中学クズ多いから。うちの学年にもいじめあったしね。・・・ほら、言ってごらんユーリ」



「・・・お、お母さんと、お父さんには、いい、言わない、で」




こらえきれず、ユーリの瞳から涙があふれました。



はぁ、とお姉ちゃんは溜息をつきました。



「やっぱりこれユーリだったんだね。最近元気無い感じしたからチェックしてみたら・・・ほんとにもう。何されてるの?大丈夫なの?」



ユーリはぽつぽつとお姉ちゃんにいじめことを話しました。



悔しくて。悲しくて。恥ずかしくて。涙が止まりません。



お姉ちゃんは、うん、うんと頷きながら全部聞いてくれました。




「・・・・・・頑張ったねユーリ。あんた偉いよ。私にできることない?」



「お母さんに、言わないで。私、我慢するから。絶対、負けな、い、から。だから、お願い、おね、ちゃん」



しゃくりあげながら、ユーリは訴えます。



周りの目なんて、気にしてられません。



「・・・あんたがそこまで言うなら、様子見ようか。いい?ユーリ。絶対に無理しちゃダメだよ、誰も喜ばないんだからね。暴力受けて黙ってたら、まずあんたからぶっ飛ばすからね」



「う、ん」



「あとねユーリ。・・・あんた、自分の名前の意味知ってる?」



お姉ちゃんは紙に、ユーリの名前を漢字で書きました。



「ユーリは悠璃って書くでしょ。


悠然たるさまで、かつ瑠璃の如く優しく繊細な子になるように。あんた優しくて傷つきやすいんだよ。


まわりみんなガキだと思って堂々としてなさい。

どうしてもダメなら逃げてきなさい。私のとこでもお母さんのとこでもいいから」



「うん・・・うん」




「家族はみんなユーリの味方だよ。何があっても守ってあげる。味方でいるから。あんたはなんにも悪くないんだからね」




「・・・う、んっ・・・ねぇお姉ちゃん」




「ん?」




「あ、ああああ・・・・・・あああり、がと・・・お姉ちゃん」



お姉ちゃんはにこっと笑ってユーリの頭を撫でてくれました。



「ほら、ユーリこれ好きでしょ?食べな食べな」




「うん!」



泣きすぎて、ちょっとしょっぱいドーナツ。



お姉ちゃんの愛情たっぷりです。

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