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7/27に前話に2000文字ほど後半に追記しています。
国家運営に関わると言っても王様になる気なんてサラサラない。
まぁ、ある程度国政に関われればいいと思っているが、最悪市井に下って商人になるのも悪くはないと思っている。
なぜなら、現状、俺に王位継承権はないのだから。
この国には現在、俺を含めて2人の王子と9人の王女がいるが、王位継承権を持っているのはたったの2人だ。
第二王子の"レグルス"王子と第四王女の"ルビア"王女だ。
もう一人第一王子も王位継承権を持っていたのだが、俺が生まれる前にユグドから流出したはぐれ魔物の群れを殲滅する際に亡くなっているため現在はこの2人だけとなっている。
王位継承権は『宝龍の儀』と呼ばれる儀式を受けなければ得ることができないのだが、この儀式の詳細は誰に聞いても口を噤んでいるため、何らかの資格が必要であること以外何も分かっていない。
まぁ、王様になっても今以上に身動きが取れなくなるのは想像に難くないため、王位継承権がないのは逆に都合がいい。
手の中で転がしていた瓶からルラの実を一つ取り出して口に入れる。
ルラの実は、ルラの"実"と名がついているが正確には木の実ではない。ルラの実は、リンゴとピーマンを足して二で割ったような形の木の実にぎっしりと詰まっている種のことだ。種は、ピンクや白の半透明なコンペイトウのような形をしており、舐めると独特の風味がある甘みが出てくる。口の中に甘みが満ちた頃に噛み砕くと、ミントに似た爽快感が口の中に広がるのが心地いい。この国の名産品なのだが、癖になる味で考え事をするときに良く口の中に入れている。
糖分を補給した頭で魔法の巻物を読み進める。
魔法に関する書物はどれも秘伝なため、"裏書庫"とも呼ばれる王家秘蔵の書庫に入り込んで目当ての物を探してくるのは流石に骨だった。
今読んでいる巻物は『魔力の移動』に関する巻物だ。
現実世界にはなかった魔法。
しかし、この世界には身近な技術として存在している。
最初は俺も魔法に目を輝かせて色々好き勝手やったが、これが想像以上に難解な技術だった。
スキルの恩恵があったとしても、魔法一つ組み上げるのはかなりの精密作業だ。
例えて言うなら、目に見えない積み木を積み上げるような、そんな精密さが必要になってくる。
はっきり言ってかなり難易度が高く、集中力が必要な作業だ。
上位の魔法になればなるほど当然難易度が高くなるが、最上位の魔法ともなれば、積み木で城を作るほどの精緻精密さが必要になってくる。
現状、これをどうにかして簡略化できないか『魔力』について研究しているが結果は芳しくない。
"まぁ、魔法も散々研究されている技術なのだからそうそう簡単に見つかるなんて思っていないが……"
そう納得させようとするが、面白くないのも事実。
瓶から再びルラの実を無造作に掴んで口に入れようとしたのだが、蓋を開けた瞬間、ツルっと瓶が手から滑り落ちてしまう。
あっ、と思う間もなく地面にトンと落ちる。
幸いそれ程の高さではなく、地面は草が生い茂っていたため割れずに済んだ。
俺は、セーフ、と思いながら瓶を取りに木を降りる。
「あああああああああ!アル、みつけたあぁぁぁ!」
瓶に手をかけた瞬間、後ろから大音量の声を浴びせかけられた。
○●◎○●◎○●◎○●◎○●◎○●◎○●◎
元気一杯と言えば聞こえがいいが、どちらかと言うと怪鳥の鳴き声もかくやというような叫び声のした方を見ると、真っ赤なドレスに真っ赤な髪と、百歩下がってみればでっかいトマトに見えそうな少女がいた。
「あ、姉上……」
そう、この真っ赤なトマトと言うより実際に話してみると暴君を思わせる少女は俺の異母姉に当たる第九王女のアデーレだ。
肩で切りそろえた髪の色は若干アデーレの方が濃い目の赤だが、俺と同じく王家の直系を示す燃えるような紅蓮の赤、健康的な小麦色の肌にどこか神秘的な紫色の瞳をしている。
一目見て活発そうなのが分かる釣り目に、すぐにでもどこかに突撃していきそうなほど行動力を全体から醸し出しているが、それが正反対の上流階級特有の上品さと同居していながら嫌味にならないのは持って生まれたものなのかとちょっと思案する。
姉上と言っても年の差はほとんどない、同じ10歳で確か向こうが2,3週間早めに生まれたのだが、こう呼ばないと、殴る蹴る噛み付くと嵐のように暴れるため仕方なく呼んでいる。このチビっ子は俺の中では最早理不尽の権化とも言うべき存在へと変異している。
「本日はお日柄も……よく、どのようなごりょうけん、で……?」
だからチキンになって思わず噛んだ俺は決して悪くないはずだ。
「ロランが泣きながら探してたわよ!
折角気持ちよく寝てたのにあんまりにもうるさいから起きちゃったわ!
仕方ないからロランはだまら……休ませて、あたしが代わりに探しにきたの!」
物理的に休ませられたのが容易に想像がつく。
今度何かおいしいもの差し入れに持っていくか、とそもそもの元凶のくせに同情する。
「あはは、そうなのですか、でも何の用事でしょうか?」
「それは……」
多分、礼儀作法の教師から逃げてきたのだからそれだろうけど、話題変えのためにそう聞くとアデーレは真剣な表情をして押し黙る。
まるで、これから死刑執行を宣言する処刑人のような表情だ。
“まさか、書庫から本かっぱいだのがバレたか、いや、それとも……”
と心当たりが軽く5,6個流れたが表面上はあくまで笑顔で取り繕う。
「何だっけ?」
俺はその場に思いっきりつっぶした。




