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最強育成計画  作者: くりーむ童話
3/6

#3

「アルマ様~、アルマ様はどちらですか~?」


 目付け役のロランが慌てながら中庭を走って行くのを木の上から冷ややかに眺めながら俺は戦利品の魔法の巻物(マジックスクロール)とルラの実を物色する。

 この世界に転生して早10年すっかり馴染んだな、と心の中でため息をつく。


“ゲームのスタートボタン押した途端、赤ん坊とか……一体どこのライトノベルよ”


 キャラメイクのときに0歳にしていたのがまずかった、お陰で身動き一つとれず現状確認をするのに随分掛かった。

 最初は自分が赤ん坊になったことなんて受け入れられなかったが、身動き一つ取れなかったのが逆に良く作用して、落ち着いて考えることができたのは不幸中の幸いだった。

 まず、自分の立場は、この神々の争い合ってる世界の中、中立を保っている稀有な国、レウム宝王国。その王家の直系、第三子だ。言うなれば王子様ということらしいが、正直自分で自分のことを王子様♪と意識するとげんなりした。今でも王子とか殿下と呼ばれると、うあーっと鳥肌がたつため気心が知れた人たちには名前で呼ぶよう言っている。

 レウム宝王国の始まりは敵同士だった竜の戦士と人間の魔法使いが恋に落ち、その子孫が興した国らしい、それなんてハッピーエンドなロミジュリ?と思ったが口には出さないようにした。

 女の子だったらロマンチック~とか思うのだろうが……実際、その話にあこがれる女の子は多いらしい。この世界、娯楽が少ないがこの国の始まりにもなった2人の話は吟遊詩人にも人気の歌となっている。


“まぁ、この際重要なのは恋物語なほうではなく、重要なのはこの国が中立の立場にあること、そして王家の直系であることだ”


 中立と言えば聞こえがいいが、決して平和ではない。

 戦時の中で一人だけ安全を謳歌できるか?と聞かれれば、否、としか言いようがない。

 直接的に戦禍に見舞われることはなかったとしても、難民の受け入れ、交易の制限、盗賊やはぐれ魔物の増加による治安の低下エトセトラエトセトラ。

 幸い、この国は気候が一年通して穏やかで、肥沃な大地と雪山から流れ出てくる清らかな水によって食料と水の心配はしなくていいが、それでもこの平和がいつまで続くかと思うと厳しいものがある。


“幸い、ここ2,30年は中原の戦線は膠着してるし、中原に位置するとは言え、この国は北の端、そうそうこの国が戦禍に見舞われることはない……と思いたい……が、儚い望みだ”


 中立を維持するならば、相応の力と意義を世界に示さなければならない。

 そして中立が破られるときはこの国の終わり、そしてこの国の直系である俺も不穏分子として処分されるだろうな、と思う。

 元の世界には戻りたいが、死んで戻れる保証なんてどこにもない、あのゲームの説明文にも「死んだらそのまま」と書かれていたのが怪しさを感じる。

 となると、どうやっても生き残らなければならないが、どういう方針で動くかが問題になる。

 現代知識を使って一気に発展、とかも最初考えたが、実際にそれが出来るか?と思うと疑問だ。

 一応リアルではデザイナーとして色んな製品のデザインを考えるために、製品の構造とか仕組みを調べたため、色んなアイデア自体はあるのだが、それを全てこの世界で活かすことはできないだろう。車や電化製品の仕組みや構造自体は分かっていても、ネジや金属の加工方法なんて畑違い過ぎて俺は知らない。料理が作れるからといって、料理の材料となる野菜や肉が作れるか?といったら別問題になるのと同じだ。

 この世界の文化レベルは産業革命以前のヨーロッパという感じだが、魔法があるため一部に限って言えば現代日本を凌駕するものがある。

 堆肥を使って農業チートとか言っても、この国の農家では堆肥どころか魔法を利用した一種の化学肥料なものすらすでに使われており、輪作などの工夫もされていて、今更素人の自分の知識なんて披露する余地なんてない。おまけにこの国の名産品は『黒小麦』と『ルラの実』という現実世界にもあるかどうか怪しい農業品。昔、農家でバイトしたことがあるから多少の知識はあるが、農作物に使う肥料はその植物ごとに適したものを適量で使わなければならない。しかも、一から作物を育てる場合は土壌改良から始めなければならないため、それらの最適な解は恐らくこの国の農家の方たちの方が熟知しているはずだ。


 では、全く現代知識を活かせないか?と言うとそれも否だ。

 幾つかこの世界でも再現可能で、大きな効果をもたらすだろうと言うものをピックアップして忘れないようにメモ帳に書いてまとめている。

 羅針盤のちょっとした改良で大航海時代が始まったように、この世界にこれらの技術をもたらし、その技術の実権を握ればこの国の中立を守るにあたって大きな交渉カードになるはずだ。

 まぁ、実現するにはある程度基盤が固まった状態でも十年、下手すると数十年単位で掛かると予測するが、竜人の寿命は500年、十分猶予はある。

 まぁ、取りあえず現代知識の取り扱いは地盤がかかるまで構想を練るくらいに留めておいて、問題はもう一つ。


 俺は、ふっと念じて自分のステータスを開示する。

 平均して10~20台の数字が並んだ能力値が並んでいる。魔力だけが50とズバ抜けて高いが、これは習得したスキルが能力値に反映しているからだ。

 ちなみにこの国の成人男性で平均10~20、正騎士で25~35、近衛騎士クラスで50以上となっているから、10歳にしてはそこそこのステータスなのが分かる。

 そして能力値の隣には数えるのもバカらしくなる数のスキルが並んでいる。

 ページの先頭部分にこそレベルが20~30のスキルが集まっているが、それ以降はほとんどが1レベルだったり、灰色で使用禁止になっていたりするスキルがほとんどだ。しかし、スキルの総数は100を優に超えている。

 【見様見真似】でスキルを取得するのが楽しくて一時期、片っ端から習得していたが、種族的に使用不可能なスキルや手に入れる必要のないスキルも習得していたら、必要なスキルの確認をするだけで一手間となってしまった、そのためスキル欄は見やすいように定期的に整理するようにしている。

 スキルはこの世界では一種の才能のような扱われ方をしている。スキルを持っていると持っていないのでは能力に雲泥の差が出てくるためスキルの取得は人生を左右すると言っても過言ではない。また、スキルは習得方法満たせば誰でも取れるというものではなく、スキルによっては適正も重要になってくる。

 覚えるのにすごい手間が掛かるものもあれば、逆に驚くほど簡単に覚えることができるのもある。例で言うならば、1日剣を振っているだけで【剣術】関連のスキルが手に入れられる人もいれば、1ヶ月剣を振っても【剣術】スキルを手に入れることが出来ない人もいると言う事だ。

 ただし【見様見真似】を使うとその限りではない。この世界にあるスキル取得の枠組みからハズレたこのスキルは、レアとか言うレベルを通り越して通常のスキルの枠組みから外れたイレギュラーと言えるレベルのスキルだ。何せスキルを発動しているのを一目見れば即習得(ラーニング)できる。条件付とは言え、適正や習得過程を吹っ飛ばせるというのはかなりのアドバンテージだ。

 しかし、スキルは取得しているだけでは意味がない。実際に使って成長させて、使いこなさなければ宝の持ち腐れだ。だが、今の俺はこの王宮の外に出ることはほとんど出来ないためここ2,3年、有益なスキルは習得できてない。その上、スキルのレベル上げも一部のスキル以外ほとんど出来ていない。

 これがもう一つの問題、すなわち成長が現状打ち止めという点だ。

 現在は王位継承権を持っていないとは言え王家の人間、何度か王城を抜け出した前科者として警戒され、年に2,3度位しか王城の外には連れ出してもらえなくなった。ある程度自由に出入りするには最低でも後1,2年ほど掛かりそうだから頭が痛い問題だ。

 この国に限らず、この世界は決して安全ではない。

 街道から少し外れただけで戦争によって住処を追われたはぐれ魔物や難民崩れの盗賊がウヨウヨしている。


“やはり根本的な解決には、戦争を終わらせるのが最上だ……が、それは無理だな。

 となると次善策は……”


 この世界の戦争は現実世界のものとは違って神々の代理戦争だ、宗教戦争以上に根深いものがあり、しかも相手陣営を倒せば分かり易い“ご褒美”も約束されているだけあって戦争を終わらせるのはどちらかの陣営を挫く以外ない。が、下手なパワーバランスの崩壊は望むところではない。

 有史以前、神話の時代から続いてる戦争が、例えどちらかに天秤が傾くことが合ったとしても短期間で終わるはずがない。むしろ世界は更に混沌とするだろう。その流れにこの国が巻き込まれるのだけは避けたいところ。

 【見様見真似】は確かに破格のスキルだが、例えこの国に存在する人全てからスキルを習得して、俺最強!になったとしても、個人の力で戦争を避けることなんて出来るはずがない。

 いや、よしんば、個人の武勇で戦争を回避できたとしても、間接的な……戦争によって起きる経済や物資、人材の損耗を防ぐことなんて出来やしない。


 となると現状とれる最善策は一つだけ。


“この国を大陸最強の国家にする”


 最強と言っても、力を持っても振るわない状況が理想的だ。

 他国を侵略せずに、力を蓄え、両陣営にとって敵になられると困る状況を作り出すことによって中立を維持する。

 そのためには生産力や技術力が他国の追従の許さぬレベルまで上げる必要がある。


“最強キャラ育成のために、ゲーム始めたのが切欠だったのに、まさか最強の国家育成とはね”


 身の安全を確保するためとは言え、元の世界に戻るには遠回りかもしれない。

 だけど、俺の口の端は自然と釣りあがっていた。




0歳から書き始めてたのをよくよく考えたら赤ん坊から書く意味ないな、と思い赤ん坊状態をスキップしました。

書き直したため今回は短めです。


7/27 後半2000文字ほど追加しました。


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