#2
キャラのメイキング画面を開いて驚いたのがまず項目の多さだ。
流石に広告に自由度の高さをウリにしてるだけはあるって思ったが、その項目の多さには圧倒された。
外装の選択肢一つとっても細かく見ると髪の長さや目の色だけではなくヒゲの長さや鼻の形というものまであった。
他にも生い立ちや利き腕なども設定可能と選択肢の数だけは本当に豊富だった。
取り合えずデフォルトやおまかせ設定の欄をノーチェックにし、キャラ作成を始める。
まず始めに出てきたのがどこの陣営に所属しているか、だ。
これは選べる種族や後々の展開にも繋がるため確かに一番重要で基礎的な選択肢になるだろう。
んーむむむ、と悩む。
基本的に『ダナン』陣営は人間と妖精、エルフ、ピクシー、ドワーフなど所謂かわいい系が揃っているようで、対して『ユグドラシル』陣営は巨人、竜といったゴツイ系かっこいい系が揃っているようである。
竜や巨人は初期ステータスが高く、育てていけばかなり強くなるようだが、育つまでが大変なようだ。説明書きを見てみても人間が一人前になるのが18歳くらいに対して巨人は200歳、ドラゴンにいたっては1000歳となっている。
気長にやろうとは思っているがそれは時間かかりすぎだろうと思うし、そもそも最初から強いのを育てるのは何か違う気がする。
スライムがレベル99になってドラゴンを倒せるくらいまでっていう目標があるからこそ育て甲斐があるのであって、ただ単に強いだけってのは何かつまらないと思うのだ。
それならそれで人間を選ぼうかとも思ったが今度はその加齢システムがネックとなる。人間は20歳でキャラステータスはピークとなり以降10歳ごとに徐々にステータスは下がっていくらしい。
いつもなら取り合えず人間でやってみっかーと気軽にキャラ作成していたと思うのだが、このゲーム、キャラメイクが重要なファクターになるのだがやり直しができないためいつも以上に慎重になっている。
説明書きには作成できるキャラは1アカウント1キャラのみ、しかもキャラが寿命で死んだ場合は復活できずそのまま、おまけにキャラ削除すら出来ず、リメイクリビルドは存在しないと徹底している。説明書き曰く、リアリティを演出するためとなっているが、果たしてこれで客が呼び込めるのだろうか、と心配になってくる。
取り合えず種族の説明欄を見ようと思って開いてみたら、ずらーっと種族名が並んでいる。
お馴染みのファンタジー種族からマイナーな種族、全く聞いたこともなく想像もできないような種族やからくり人形などどこか場違いなものまで多種多様というより、中学生が取り合えず思いついたの全部ぶっこみました、というなんかアイデアのゴッタ煮のようなカオス感がある。
片っ端から気になった種族をピックアップして取り合えず5つまで候補を絞る。
『エルフ』 寿命400歳 陣営:ダアト
別名『森の人』とも呼ばれる人間に近しい姿の妖精族。
魔法、弓に適正があり、木や植物を使った生産スキルにプラス補正が働く反面、金属を扱うスキルや装備とは相性悪。
ステータスは並。
『ダンピール』 寿命500年 陣営:闇、無
吸血鬼と人間の混血児。
吸血能力をはじめ吸血鬼の種族固有アビリティ、スキルはキャラを成長させることで取得する特殊な大器晩成型。
吸血鬼のバッドステータス『日光被ダメージ』がない。
ステータスは並。
『魔人』 寿命200年 陣営:闇
闇陣営に属する人間種族。
魔法特化タイプで生産系が壊滅的なマイナス補正。
ステータスは上。
『自動人形』 寿命なし 陣営:無
錬金術によって生み出された命を持った人形。
レベルアップやスキルによってのステータス補正がなし。
その代わり体の部品を装備品のように変えることによってステータスや能力をカスタマイズできる。
『竜人』 寿命500年 陣営:ユグドラシル、無
『半竜』とも呼ばれる人間と竜との混血児。
竜のアビリティ、スキルが成長によって使用可能となる大器晩成型。
初期ステータスは人と同じ並レベル。
この5つのどれにするか悩んでいる。
エルフは最もポピュラーで使いやすいと思うけど、特に問題を感じない反面魅力も感じないため保留。
ダンピールもステータスは人間とほぼ同じ、寿命が延びているだけだが、吸血鬼のスキルが後々使えるようになるのは面白そうだと思う。
魔人は魔法特化種族で寿命も申し分もなく面白そうなのではあるが生産がマイナス補正なのと闇陣営なのはイマイチ。
自動人形はある意味一番トリッキーな仕様で面白そうだと思う反面めんどくさそうな仕様だと思っている。
竜人は人間が竜の強さまで育てられるという意味では一番育て甲斐がありそうだと思うが、ダンピール以上に育ちにくい割りに非力な初期ステータスが不安要素ではある。
たっぷり10分ほど悩んで無所属の『竜人』種族を選ぶ。
悩んだのだがやっぱり竜になれるという目標がきっちりあるのは良いと思ったからだ。
そして次の画面に行って次々と項目を埋めていく。
"性別は男、名前は……んーいいの思い浮かばないから昔使ってたキャラのでいいかっと。
しかし無駄に項目多いな"
キャラの作成項目の中には学歴や生い立ちなんていうのもあって、昔やったことあるTRPGでもここまで複雑なキャラメイクはなかった、と俺は呟いた。
年齢は若ければ若いほどレベルアップによるステータス補正とスキルの習熟補正が上向きで入る用なので一番若い年齢にする。
そして片っ端から項目を埋めて最後の項目に到達した。
最後の項目は『特性』らしい。
一体なんだろう?と思って開くと、8つの項目が出てきた。
『病弱』『容姿端麗』『天涯孤独』『トラブル体質』『貧乏』『祝福』『器用』『ランダム』
ふむ、と思う。
明らかに悪い方向に働きそうな『病弱』や『貧乏』、恩恵がありそうな『祝福』や『器用』、これはどういうことだろう?と思う。
一番ありそうなのはステータス補正かスキル取得かだろうが、それぞれメリットデメリットがあるのだろう。
8つの項目に説明文はなく、公式ページにも特性については書かれていなかった。
さて、どうしたものか、と思う。
普通に考えたら『祝福』『器用』、あとは『容姿端麗』あたりを取るだろうが、これ見よがしに良いのと悪いのを並べてるのが怪しい。
昔話の大きいつづら、小さいつづらの例もあるし、と思ったところで最後の『ランダム』が目に入った。
そう言えば、これは何だろうと思ってクリックすると特性に『高貴な血筋』と入った。
うおおう、と思って『高貴な血筋』を再びクリックしても何の反応もない。
どうやら、『ランダム』は上記の7つの特性以外の特性がランダムで入るらしい。
しかも他の特性は選んだ後でも取り消しができるのに、『ランダム』で選んだ場合は不可と、たまたまそれほど悪いのが出てないからいいもののギャンブルだな、と思った。
"さて、残り2つはどうするか"
これはもしかしたら、『病弱』や『貧乏』といったバッドステータス系は『祝福』といった補正系と迷わせることによって『ランダム』から目を離す目的があるんじゃないだろうか、と邪推してしまう。
『ランダム』の特性からすると補正系以外にバッド系も入ってる可能性は大きい。残り2回も『ランダム』を選ぶのはかなりのギャンブルだ。恐らくだが『裕福』とか『頑強』とか補正系もあるだろう、が、それ以上にバッド系が入ってるのは想像に難くない。堅実にいくなら、上記の中で補正が働くものの中から選ぶべきだろう。
"自慢じゃないがくじ運はいい方じゃないしな"
昔、ガチャを万単位で買ってレアが一個もなかったのはイヤな思い出だ。あの日以来二度とガチャはしないと硬く決めている。
一つはどうせならかっこいいキャラを使いたいからと『容姿端麗』を選び、もう一つは『器用』と『祝福』どっちにしようと思った瞬間、ピコン、と音が鳴る。
何の音かと思ったらダウンロードしていたゲームのダウンロード完了音だった。
おお、もうそんなに時間経ったのかと思い、ダウンロードしたゲームを確認するために立ち上がろうとしたのだが、マウスを握ったままだったため誤ってマウスをクリックしてしまう。
あ、と思った瞬間すでに遅く、『ランダム』をクリックしてしまった。
『ランダム』特性は『悪運』
ぐはっ、と吐けるものなら血を吐いて倒れたいところだった。
"なんでこんな、いいか悪いか微妙なところを"
そうだ、と思いキャラメイクを最初からし直そうと思ったのだが、『Back』ボタンを押しても反応がない。
"不具合かよ!おい!"
悪態を100回くらい胸の中で尽いて、一瞬回線をぶった切ってでも最初からし直そうとも思ったが、それほど悪くもない、悪くもない!と自分に言い聞かせてキャラの作成完了ボタンを押す。
《これより、あなたは『エリン』に旅たちます。
それを祝して私からあなたにプレゼトを贈ります。
画面のダイスを振ってください》
システムメッセージが流れた後、何の変哲もない白いサイコロが画面に現れたので、クリックする。
勢い良く画面の中をあっちこっちに飛び跳ねた後、真ん中でピタリと止まる。
《3
3のダイスを出した方は次のスキル欄から3つお選びください。
エリンに旅立つあなたのお役に立つでしょう》
まだあったのか、と若干辟易しながらも、スキルの種類に俺は目の色を変える。
スキルは100個ほど並んだページが10ページ以上あるのだが、1ページ目にあったとあるスキルが一目見た瞬間目を奪われる。
"これは……面白い"
一体、製作者はどういった意図でこんな壊れスキルを実装しているのか知らないが、あるのなら使わなければ損だ。
自分の目的、最強のキャラを育てるにある意味最もピッタリなスキル。
《スキル【見様見真似:対象のスキルを見た瞬間ラーニングできる】を習得しました》
スキルを多く使えれば最強!なんて言うつもりはないが、手数が増えればその分自分だけの戦い方と言うものができる。
何より多くのスキルを持つという事はそれだけ多くの状況に対応できるということである。
剣士が魔法を使えるだけでかなりのアドバンテージになるし、何よりそうやって戦い方を探しながら育てるのが楽しいのだ。
そして幾つかの有益なスキルを見つけたが、最終的に【見様見真似】と相性の良さ気なスキルを選んだ。
《スキル【審眼:選択した対象のステータスを強制開示できまる】を習得しました》
《スキル【天凛:スキルの習熟速度に上方補正が入ります】を習得しました》
よし、と満足げにうなづいて、俺はスタートボタンを押した。




