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第八話:だってここは日本だから

「そう、ぜーんぶ回避に設定してるってわけ」


ニタニタした男がナイフを構え直してこちらに向かって来る


「わかったら大人しく殺されてくれよ、楽にやってやるから」


「ひっ……」


「でしたら」


声に反応して振り返る、いつの間にかエミリアさんの瞳が青くなっていた


「色々試してみますわ」


瞬間、水の弾丸が無数に飛び出す


「シュテルベン・レーゲル……全部避けられまして?」


「す、すごい……!」


でも



ゴキッバキッ

「だから無駄だって」



男の体があり得ない角度に曲がり全ての水を避けきってしまう


「い、一個も当たってな……ていうか今の音は……」


「関節外してんだよ、言っただろ?限界を超えて実行されるって」


「ま、少ししたら」


ゴリュッ、バキッ


「ほら、元通りだ」


「気持ち悪い……」


「褒め言葉として受け取っておくぜ!」


男がこちらに走って来る、私も何かしなくちゃ


宝石をさらに足して爪を作り変える、クローがダメなら


「わーお、器用だな」


爪の先だけをいじって剣、ハンマー、槍の形に作り変える。どれか一個でも設定してなかったら


そう願いながら腕を振るう、が


「でも無駄だね」


全部当たらない


「うぅ……」


「文毬様、思いつく様な武具では無意味ですわ」


引き下がると、エミリアさんのフォークには真っ白な花が刺さっている


「そ、それは?」


「林檎の花ですの……少し下がっててくださいまし」


そう言って歩き出したエミリアさんの周りのタイルがひび割れていく


「おいおい、何してんだ……グウッ!?」


「少し周りの重力を強くしてますの」


男の動きが止まり、地面に叩きつけられる


「す、すごい……!」


「う……重力か……確かに予想もしてなかったぜ……」


「今そちらに行きますわね」


エミリアさんが近づく程に男にかかる重力が強くなる、これで私達の勝ち──


「でもな?」


その瞬間、男の体が飛び上がり遠ざかって行く


「ぜぇ……はぁっ……ハハッ、無駄だったみたいだな……!!」


「そ、そんな……なんで……」


「元々設定してあったやつを一個解除して【お前が近づくと体が遠ざかる】を設定したんだよ!!」


男は笑いながら距離を取る


「あとはその重力の力が無くなったらまた近づいてグサリだ!」


「文毬様」


エミリアさんが踵を返す


「逃げますわよ」


「は、はい!」


「待ちやがれ!!」


逃げる私達、追いかける男。地獄の鬼ごっこの始まりだ


「お前達は俺に当てれる攻撃を持ってない!どこまでも追いかけて絶対殺してやるからな!!」


「ど、どうするんですかエミリアさん……?」


走りながらエミリアさんは柔らかく微笑んだ


「大丈夫ですわ文毬様、私に考えがありますの」


「か、考え……?」


「信じて付いて来てくださいますか?」


わかった、この人の目の正体


(この人、本当に私を対等に見てるんだ。身分も国籍も違う私を、友達だと本当に思ってるんだ)


対等……いや、友愛の眼


「……もちろん、です!」


「ふふふっ、ありがとうございますわ」


二人で駅構内を走る。商業施設から地上へ、地上から改札口へ、そのまま地下へ、そして


「はぁ……はぁ……地下鉄のホーム……?」


「えぇ……あとは」


「追いついたぜ……!!」


降りてきた階段の方を見ると男が。左は壁、右は線路、後ろは行き止まり……つまり


「残念だが、ここは出入口が一個しかないタイプのホーム!もう逃げ場は無いなぁ!!」


「……えぇ、そうですわね」


男を睨みつけたエミリアさんが私に耳打ちする


「文毬様、私の合図で左側から飛び出してくださいまし」


「は、はい」


「そして逃げ道を塞ぐ様に爪で攻撃して欲しいのですが、お願いできますか?」


「……やれます」


じりじりと男が迫って来る


「どうした?もう終わりか?」


「58……59……文毬様!!」


「はい!!」


私が駆けだすと同時にエミリアさんは炎弾を放つ、二方向からの攻撃


「二人同時なら当たると思ったかよ!!」


当たるなんて思ってない、でもエミリアさんを信じてるから


男から見て上と後ろ、右から来る私の爪と蹴り、前から来るエミリアさんの炎弾。全部を避けようとした男の体は


「あっえっ──」


線路に飛び出した、そしてその瞬間


プァーン、グシャッ、キキーッ、キーッ


文字通り、一瞬で男の全身は姿を消した


「さすが、日本の電車は時間通りに来ますわね」


『面土 裂気 死亡確認、エミリア=F=シュヴァルツにポイントが加算されます』


止まった電車のドアが開く。戦闘用に作られたフィールドに降りる人も乗る人もいるわけ無く、電車はまた走り去って行った


「す、すごいですエミリアさん……!いつからこんな事考えて……」


「あの方……面土様の動きと言い方を見るに自分の意志とは無関係に体が動いてると思いましたの」


「そして、線路に落ちても電車来るまでに設定して避けるのは難しいと思い、ここに逃げて来たという訳ですわ」


エミリアさんが説明しながら私に抱きつく……私に抱きつく?


「な、なななな、何してるんですか!?」


「あら、私の国ではお友達とこうやってやるのが普通ですのよ?勝利の記念にと」


淡々と説明される、あったかい、柔らかい、いい匂い。情報が絶えずに私の脳内を襲う


「貴方様のおかげで勝てましたわ、ありがとうございます文毬様」


「い、いえ……私はエミリアさんの言う通りに動いただけで……」


「それでもですわ」


しばらくして、エミリアさんは満足そうに体を離した。もっとやってて良かったのに


「それでは、探索の続きをしましょう」


「は、はい……ふへへ……」






同時刻、フィールドF


『幸先 紗季 気絶確認、王城 覇道にポイントが加算されます』


「なんでコイツ銃が当たらな──」


バキッ


『李 辰光 気絶確認、王城 覇道にポイントが加算されます』


「確かに、原木 遊や文毬 装呀は強い。大神 螺旋の言うことも一理ある」


「た、助けて──」


ゴスッ


『ジョン=フローリー 気絶確認、王城 覇道にポイントが加算されます』


「だが、やはり有象無象の一般人なんてこの程度である」


現時刻 13:04


王城 覇道 合計10ポイント獲得


「さて、貴様は我の期待に応えれるか?」


「……気づいておったか」


柱の裏から男が出てくる


「当たり前だ、それ程の殺気に我が気づかぬと思ったか」


「我は王城 覇道、貴様の名は?」


「わしは十柄 一平(じゅうがら いっぺい)だ」


刀を携えた老人、腕が鳴る……そう思っていると十柄 一平はその場で刀を構えた


「……この距離だと届かないであろう」


「いや、お主はすでにわしの間合いにおる」


「馬鹿を言え、3mは離れておるぞ」


「まぁ、見ておれ」


言うが早いか抜くが早いか、振り抜かれた刀は


「は?」


瞬く間に刀身が伸び我の体を捉えていた



「十割流・砕氷」

「っ……拒否!」



「おぉ、刀……いや、腕が動かないぞ。やはり傍目で見るのと実際にくらうのでは話が違うな」


刀身が縮んで元の大きさに戻る、老人の顔に焦りは見えない


「ん?なんだ、もう動かせるようになったぞ?さっきの奴らはもっと長い間逃げれなくなっていた気がするがの」


(……拒否は対象とする動作が大きい程、早く解ける。咄嗟だったため【刀を振る】ではなく【腕を動かす】に発動してしまったか)


「そう言う貴様のデュークは……縮尺か?」


「ほっほっほ、そんな単純じゃないわい」


その時、十柄 一平は懐から何かを取り出す


「一円玉……?それがどうした」


「くれてやるわい」


一円玉が弧を描いて飛んでくる、我の手をめがけて


「取ったぞ、取ったらなんだと言うのだ」


「手を開いてみぃ」


言われるがままに一円玉を握った手を開く。そう、一円玉を──


「……は?」


そこにあったのは、くすんだ茶色に見慣れた寺院。どっからどう見ても十円玉だった


十柄 一平の方を見ると怪しく微笑んでいる


「じゃあ、もう一度閉じてから開いてみぃ」


閉じる、開く。それだけで


「一円玉が……十枚……!?」


手を開いたり閉じたりする。その度に一円玉が増えたり十円玉になったり、十円玉が十枚になったり


「ほっほっほ、おもしろいじゃろ?」


「わしのでゅーくは【はい・あんど・ろー】一を十に、十を一に変える事ができる。この刀も、刀身が一尺だから十尺まで伸ばせるっちゅーわけじゃ」


十柄 一平がゆらゆらと近づいて来る


「さぁ、種明かしはここまでじゃ」


「ふん、最初は驚いたが……要は刀が伸びるだけであろう」


我も駆け出す。しかし、それに呼応する様に十柄 一平は逃げ出した


「な、貴様!待て!」


「ほっほっほ、待たんよ」


無駄に足が速い、段々と距離を開けられる。8m、9m──


「丁度、十めーとるじゃ」


瞬きの間に、距離が1mまで縮んだ


「十割流・氷柱」


「ぐっ……」


突きを寸前で回避し、距離を取ろうとする。しかし


「十割流・砕氷」


「拒否!」


刀が首に少し当たった所で止まり、刃を赤い軌跡が染める


「やはり、簡単には倒せんのう」


「貴様こそ」


「話は変わるが。さっき拾ったこれ、何か分かるかの?」


そう言う十柄 一平の手には拳銃が握られていた


「お前さんの能力は銃弾も止めれる、でもそれは一発ずつの場合じゃろ?」


「まさか……」


銃弾が一発、放たれる。そしてそれは十発になって我の所へ


「拒否!」


(避け、いや、間に合わぬ!!)


拒否で一発を止め、体を動かすが


「がはっ……!」


「ほっほっほ、三発。当たったのう」


左腕に二発、脇腹に一発。動けはするが、致命的だ


体に空いた穴から血が流れていく


「どうする?その負傷で突っ込んで来るか?それとも諦めるかの?」


「……ふん」


その瞬間、我は銃弾を一つ蹴り上げた


「……なんじゃ今の」


「よく聞け、我は人生において諦めた事が無い。【骨が折れても、血反吐を吐いても、最後まで食らいつく牙であれ】と父上から教わって来たからである」


「ほう、ずいぶん立派じゃのう」


(血が流れたからであろうか、少し頭が冷静になった)


拳を構え息を整える。いつでも来い、貴様の人生に引導を渡してやろう


「それでは、遠慮はしないからの?」


十柄 一平が遠ざかる、またさっきのか


「十割流……」


(来る!!)


「氷柱──」


瞬きの間に我の目の前まで来たその瞬間、銃弾が十柄 一平の体を貫いた


「がっ……何、が……」


「見逃さぬ」


バキィ!!


(うむ、良い位置に飛んだ)


我の拳が十柄 一平の顔をぶち抜く、さっきまでの一般人ならこれで終わりだが


「お前さん……何をした……?」


「やはり立ち上がるか……仕方ない、答えてやろう」


さっき十柄 一平に渡された一円玉を投げ返す。出血量的に時間は無いが、我だけ種明かしされたこの状況はもっと気に食わん


(それに、あ(・)れ(・)もまだであるしな)


「もう一度投げ返すが良い」


「こうかの」


「拒否」


我に進むことを拒否された一円玉が空中で静止する


「そして、拒否を解除すると」


一円玉は再び我の方へと飛んできた


「……まさか、さっきの弾丸は」


「貴様が撃って来た時止めた物を、貴様が我の目の前に来るタイミングを合わせて解除したのだ」


「ほっほっほ!お前さん中々やるのう!」


(……もう少しか)


「じゃが、その手はもう使えん。そして気づいておるか?まだわしの間合いにおる事に」


(……思い出せ、父上が言っていた事)


「くらえ!十割流・砕氷!!」



⦅……刃物を持っている相手に勝つ方法?そいつぁ簡単だな⦆


⦅いいか覇道、刃物はなぁ──⦆



バキン!!


「側面を叩けば、割れる!!」


「なんじゃと!?」


「そして、許可!!」


瞬間、先ほど蹴って天井に挟まっていた銃弾、少しずつ重力で落ちかけていた銃弾が超高速で十柄 一平に落ちた


「っ……あ……今のは……」


「……我のデュークは自分で投げた物には使えない、が」


天井を指さす、勝ち誇った様に。勝利のスタンディングポーズである


「天井から落ちて来る物は、我が投げたとは言わない」


「さっき殴り飛ばした時も……蹴り上げた銃弾の真下の位置に動くように狙ったのかのう……?」


「うむ」


「……ほ、ほっほっほ……わしの、負けじゃ」


『十柄 一平 気絶確認、王城 覇道にポイントが加算されます』


「ふん、我が覇道に一片の曇り……無……し」


ドサッ


『王城 覇道 気絶確認、十柄 一平にポイントが加算されます』


第八話 完

エリオット=キーエル

デューク:ワープ

半径500m以内の好きな位置に瞬間移動できる。再使用には移動距離に応じたインターバルが必要。



ビスタ=キルバンノ

ダッチェス:ビースト

体の一部を獣の様にできる。獣にしている部分が増えるほど知性を失っていく。



多群 集斗

デューク:クローン

自分の細胞を含む物を自分の分身にできる。分身はデュークと知性を持たず本体の指示で動き、死ぬと元の物に戻る。



朱重 輝

デューク:ハンドガン

指先を銃口に変えれる。別にハンドガンじゃなくてもショットガンやスナイパーライフルの銃口にもできる。



面土 裂気

デューク:条件反射

特定の物・行動が自分に向かって起きた時に自動で体がとる行動を予め設定できる。自分の身体は限界を超えてその行動を実行する。道具の使用した行動は設定できない。例:叩かれたとき、剣で切り返す……等



十柄 一平

デューク:はい・あんど・ろー

一を十に、十を一にできる。長さ・重さ・距離・速度etc……物や空間であれば全てに使える。生物には使えない。

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