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第二十三話:仲良し小好しそれもまた良し

同時刻 フィールドI Sideエミリア


「これはジェットコースターですわね。ほら、乗りますわ、動かしてくださいまし」


「は、はい……」


フィールドIは遊園地と呼ばれる場所でしたわ。回るメリーゴーランド、派手な装飾の出店、開けた空間と大きな構造物が死地を彩り、それを人工太陽が照らしてますわ


私の国にも大きな遊園地がいくつかありますが、来たのは初めてですの


「まだですの?」


「い、今すぐ……」


ですから、今日最初に襲い掛かって来たこの方、井伊也《いいなり》 副《ふく》様を気絶しない様に倒し、案内してもらっていますの


「くそっ……なんで俺がこんな……」


「何かいいましたかしら?」


「あぁっ!ち、違……なんでもありません……」


「ふふっ、ならいいですわ」


そんな事を話してるとジェットコースターが動き出しました。安全バーが体を固定し、ゆっくりとレールを登っていきますの


そして頂上に到達した瞬間、体がふわりと浮く感覚とともに、景色が反転しましたの


「きゃああっ!」


急降下、急旋回、ループ……私は心ゆくまで景色とスピードを堪能しましたわ


やがて緩やかに停止し、ジェットコースターは停車場へと戻ってきましたの


「ふぅ、楽しかったですわ」


「そ、それは良かった……」


「良かった?」


「……良かった、です」


「よろしいですわ」


~♪


「あら、なにか音楽が……」


「あれじゃない……です、かね」


振り返ると大きなパレード車が列をなして愉快な音楽と共にこちらに向かって来ますの。遊園地の花形……しかし、よく見ると上には誰も乗っていませんわ


「お、おかしくないっすかね……そもそもあれって中で誰かが運転しなきゃ動かないんじゃ……」


「つまり、誰かが能力で動かしている。でも一体何の為に……」


「全員停止ー!!」


真ん中のパレード車から声が上がりましたわ、よく見ると女性が一人


「降りて来ましたわ」


「敵じゃ……逃げた方が……」


「どうも!自分!縫井 四﨏(ぬい しえき)と言います!」


降りて来た女性がその場で敬礼しながら挨拶し始めました、ひとまず敵意は無さそうですわ


「行きますわよ」


「え、でも……」


「あら、口答えですの?」


「いえ……」


私達は縫井様の方に向かいました、どうやら聞こえたかどうか不安がっている様子ですわね


「私はエミリア=F=シュヴァルツと言いますわ、よろしくお願いいたします縫井様」


「あ、俺、井伊也です……」


「よろしくお願いしまーす!」


縫井様は焼けた肌にスポーティな格好で、挨拶から人当たりの良さが伺えますわ


「それで、何か用でしょうか?」


「いえ、姿が見えたので声をかけました!」


「つまり特に用は無いと……このパレードは?」


「静かなの苦手で……動かしてくれる子はいるんすよ!」


その時、パレード車の一部が開いて着ぐるみが降りて来ましたの


「あらこの中にお仲間が?」


「いえ!空っぽです!」


縫井様が着ぐるみの頭を外すと、確かにその中には何も入っていませんでした


「じゃあどの様に動いてますの?


「私のダッチェスです!【なかよし】って言って、人型の物に命を与えることができるんすよ!」


「命を……素敵ですわね」


「ありがとうございます!!」


着ぐるみがぞろぞろと出て来て整列しました、そしてその中に小さな人形が一つ。人型と言うには胴と腕が長くて足が短く、お腹に生魚と書いてあって、最近どこかで見た気が……


「あ、思い出しましたわ!お土産を売ってるお店で見た……」


「お刺身の事ですか?この子は私の一番の友達です!おばあちゃんが死ぬ前に買ってくれて……」


「そうなのですね。お刺身様、こんにちは」


話しかけるとお刺身様が会釈しました、可愛らしいこと


「ふーん、こんなのどこのサービスエリアでも売って──」


その瞬間、お刺身様が井伊也様を叩き、井伊也様の体が吹き飛びました


「ひぐうぅ!?」


「……なんでこのダッチェスが【なかよし】って名前か分かるっすか?」


「し、知らな……」


「長い間一緒にいた物ほど強くなるからっす!つまりお刺身は、見た目の何倍の力を持つ私の相棒なんすよ!!」


お刺身様が縫井様の肩に乗って腰に手を当てていますわ、表情は変わりませんが、きっと勝ち誇った顔をしているのでしょうね。どこが腰かいまいち分かりませんが


「なんで、バカにすると怒るので気をつけてください」


「くそっ……どいつもこいつも……」


「まぁまぁ、お刺身落ち着くっす」


縫井様がお刺身様を肩から下ろし、井伊也様との間に入りましたわ。お刺身様はまだ拳を構えていますの、小さくて長い腕が可愛らしいですわね


「ほら、仲直りっすよ。バカにしたわけじゃないんすよね?」


「っ……はい、すみませんでした」


「お刺身も、許してあげるっす」


お刺身様が長い腕を差し出しました、握手のつもりでしょうか


井伊也様は仕方なさそうにその手を握り返しました、これで仲直りでしょう


「縫井様、よろしければ一緒に行動いたしませんか?」


「いいんすか!?喜んで!」


「ほら、井伊也様、案内してくださいまし」


「は、はい……わかりましたよ……」




「では、まずはあれですわ!」


「メリーゴーランドっすね!お刺身、一緒に乗るっす!」


「こんな子供騙し……」




「次はコーヒーカップですわ!」


「回すっす!全力で回すっす!」


「はぁ……見てるだけで気持ち悪くなりそう……」




「こちらは?」


「ミラーハウスっすね!行きますよー!ひでぶっ!」


「真っ直ぐ突っ込むから……」




「あら、あそこで誰かが戦ってますわ」


「ヒーローショーみたいっすね!」


「は、早く移動……」




「いやー!楽しいっすね遊園地!」




「そうですわね……あの、縫井様」


「はい!なんすか!」


「私と、お友達になっていただけませんこと?」


「友達?」


縫井様は少しキョトンとした後、満面の笑みになって頷いてくださいました


「もちろん!いいっすよ!」


「ふふっ、ありがとうございますわ」


「自分、ここに来てから……いや、ここに来る前を入れても友達って初めてっす!」


両手を握られてブンブンされました、縫井様の肩に乗っているお刺身様も喜んでいる様に見えますわ


「あら、そうでしたの?私もお友達はここに来る前はいませんでしたわ」


「そうなんすね、なんだか自分たち似てるかもっすね!」


「あの……俺は……」


バツが悪そうに井伊也様が聞いてきました


「あら、私と戦った時に吐いた暴言の数、忘れたとは言わせませんわよ?」


「う……」


「そういえば、エミリアさんのダッチェスってどんなのなんすか?」


「話していませんでしたわね、私のダッチェス【エディブルフラワー】はお花を食べるとお花に応じた力が使えますの」


説明しながら花冠の薔薇を切り落とし、フォークで突き刺して口へ。一噛みすると私の瞳が赤くなりましたわ


そして炎を出すと縫井様が歓声を上げ、井伊也様が怯えた顔で一歩下がりました


「ひっ……」


「スゴイっす!」


「そしてグランダッチェス【シュヴァルツガーデン】、三つまで同時にお花の力を使えますのよ」


「グラン!もうグランが使えるんすね!」


花冠のお花をもう一つ切り落として、再びフォークで口へ。瞳の色が左右で変わり、水と炎を出すと縫井様はさらに歓声を上げました


「カッコいいっす!!」


「ありがとうございますわ」


ある程度披露した後、私達は観覧車に向いました


「このエリアで乗ってないのはこれだけですわね」


観覧車は誰も乗せずにグルグルと回っていて、それが歓迎に見える様な煙たがっている様な


「これは自動で動いていますから、井伊也様も乗れますわね」


「いや、俺は……」


「あら、嫌ですの?」


「…………乗ります」


「よろしい」


全員で乗り込みゴンドラの扉が閉まると、地面が少しずつ遠ざかっていきました


「ひょわー!高いっす!」


「もうすぐ頂点ですわね」


そして頂点に辿り着いた瞬間


ガゴン


「…………止まったっす」


「……止まりましたわね」


ゴンドラが大きく揺れて、停止しました。動いていたはずの観覧車全体が停止し、私達は空中に閉じ込められてしまいました


「あ、あれ……!」


井伊也様が観覧車の操作基盤がある小屋を指差します、そこには人影が


そして、小屋から出て来た人は、私達のいるゴンドラに向かって何かを投げ始めました


「は、何十メートルあると思ってんだ、届くはずが──」


ガシャン


ガラスを突き破って石が飛んで来ましたわ、一切勢いを失わず


「は、な、なんで……」


「どうやら、格好の的の様ですわね」


三人で屈みながら身を隠しますが、石の礫は止まりません


「ど、どうするんすか!あ、地上に残して来た着ぐるみ達に指示して……!」


「おまっ、こっからさっきのパレード車の所まで声届くと思ってんのかよ!」


「自分なら行けるっす!行くっすよー!」


「てか、それで他の敵まで寄って来たらどうするんだよ!」


「お二人とも、落ち着いてくださいまし」


私は声を上げ、スッと立ち上がります


「ちょ、危ないっす!」


「どうするんだ……ですか!」


「降りますわよ」


「は?」


「え?」


ゴンドラの扉を蹴破って開けました、このまま的にされるぐらいなら


「さ、行きますわよ、やられっぱなしは嫌ですわ」


第二十三話 完

原木達の秘密



原木:実は大学で【純愛教】と言う怪しいサークルに所属している


王城:実は特徴的な喋り方は、子供の時にカッコつけで使ってたら癖になって無しで喋れなくなった


エミリア:実は英才教育の結果、暴力の類に一切の躊躇が無い


文毬:実は小っちゃい子が好き、小児科志望


毒島:実は石夜見が家事全般壊滅的なため、必然的に家事が得意に

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