第十八話:危機転々
「お前らは……!?」
「そうさ、そこの機械のお嬢ちゃんに倒された面々だよ。付き添いのにーちゃん」
「おい、なんか充電してないか?」
「あら本当ね、もしかしてチャンス?」
毒島が動けなさそうな様子を見てチャンスと言った、状況から見てリベンジマッチに間違いないだろう
「おい、充電どのくらい進んだ?」
「0から差したばっかですよ?まだ10もいいとこです」
「だよなぁ」
「なぁ、10で抜いたら少し戦えたりしないか?」
「0になったら一回100にしないと動けません……」
「あーあ」
仕方なく立ち上がって三人の方を向いた、もしかしたらまだリベンジじゃない可能性がある
「なぁ、お前ら何の用で──」
「とぼけんじゃねぇ、復讐だよ」
「そのために私達、協力することにしたのよ」
「そうだぜ!」
(終わった)
そう思って天をあおいでいると毒島が声を上げた
「原木さん、あなただけでも逃げてください!」
「毒島……!」
「これ以上あなたに助けられるのは嫌です!」
「毒島……」
相変わらずな毒島の言うことを無視して、俺は三人の方に一歩踏み出す
「原木さん!話聞いてましたか!?」
「お前こそ聞いてたのかよ、俺は石夜見によろしく言われてんだぜ?俺が逃げてお前が壊されたりしたら、合わせる顔がないね」
「それに、お前が壊されてあいつが悲しんでる顔も見たくない」
「っ……」
毒島が黙った。これ以上言っても無駄だと踏んだか、一刻も早く動けるだけの充電を溜める方に舵を切ったか
そんな毒島を横目に、俺はさらに一歩前に出る
「と、言う訳で……こいつを倒したいならまず、俺を倒してもらおうかな」
「はっ!こいつは傑作だ!お前一人で俺たち三人を相手するって言うのか!」
「あぁ、なんならもっと多くてもいいんだぜ?例えば……三十七兆人、とかな」
先頭で笑っていた男が止まる
「ふん、面白くもない冗談だ。おいお前ら」
「わかってるわよ」
「わかってるぜ」
三人がそれぞれ動き始めた……と思いきや、スーツケースを持っていた男が突っ込んで来た、アナウンスで言ってた名前は確か
「自緑 鋼!」
「おーう、正解だ」
そのまま自緑は拳を振りかぶった
(考えられるこいつのデューク、真っ直ぐ突っ込んで来たから拳が鋼になるとか、体から炎が出せ……いや、ならスーツケースは?それに他の二人には他の準備させてるっぽいんだよな。クソ、毒島が速攻で倒して来たから情報がない!でもとりあえずこの拳は──)
避ける、少し掠ったがどうってことない
続いて左腕が飛んで来る、なら、それに合わせてトンカチでカウンター決めてやる
(……あれ、トンカチがポケットから出せない!?)
自分で言っていてなんてマヌケなのだろうか。でもトンカチが何かに引っかかってる訳でもないのにポケットから出せな……いや、トンカチだけじゃない
(スタンガンも出せない!?)
「どーやら、発動したみたいだな」
「まずっ──!」
突然の事態に慌ててる隙に殴られた、だが
「……痛くない?」
痛くないパンチを当てた自緑がスタスタと残りの二人の方へ戻って行く
(何だったんだ?)
「改めて、俺は自緑 鋼。出来るだけ楽をしたい主義だが、売られた喧嘩は買う」
「ど、どうも……俺は原木 遊……です……?」
(本当に何だったんだ?)
「ジョン、円各、お前ら自己紹介してやったらどうだ?俺のデュークが発動したって事は、あのにーちゃんはもうすぐ死ぬからよ」
「それもそうね」
円各と呼ばれた女が前に出る、さっき毒島が当てたレーザーの跡がまだおでこにあって痛々しい
「私は円各 通、顔が取り柄の女よ……それだったのに傷を……絶ッ対許さないんだから!」
どうやら、この女もかなりご立腹みたいだ
「俺はジョン=フローリー!いつもどこか抜けている男さ!復讐とかはどうでもいいけど誘われたから付いて来たぜ!」
……こいつだけどうにか諦めてくれないだろうか
「さてと、それじゃ行くぜ?」
自緑がスーツケースの中から何かを取り出す……ナイフだ。さっきの近接戦の時に持ってればよかったのに
よく見るとナイフを持つ手が震えてる様に見える。まさか、あんだけ大口叩いといて刃物を持つのが怖いのだろうか
「ほらよ」
自緑はそのままナイフを落とした。真下に落ちたナイフは空中で静止し
「ん?」
そして、切っ先を俺に向けながら突っ込んで来た!
「うわっ!危なっ!」
間一髪でナイフを避けると、ナイフは空中で方向転換し、再び俺の方へ切っ先を向ける
(なんだこれ!?サイコキネシス的な……いや、トンカチとスタンガンが出せない違和感……これは)
「俺の体が磁石になっている!」
「当たりだ、俺のデュークは【マグネット】触れた人間に磁力、主に引力を付与する事ができる……だから」
自緑が新たにナイフを二本取り出した、そして落とす
「こうやって適当にナイフを出すだけで、勝手にお前は死ぬ」
そうすると二本とも切っ先を俺に向け飛んで来る
俺を目掛けて飛び交う三本のナイフを必死に避け続ける
(右上!左!上!)
あいにくナイフはそこまで速くない、これなら
「中々やるじゃねぇか、なら」
自緑はそう言ってスーツケースに手をかける
「っ、また増やすか……!」
「いや?」
そして、スーツケースが勢い良く開くと、中から無数のナイフが
「な!?」
「終わらせるんだよ」
推定百本を超えるナイフが一斉に俺に向かって来る、さすがに避け切れる自信は無い
(顔面セーフ……いや、顔以外無事に済まないな……ナイフ……投擲)
(……やりたくないが、あれしか思いつかない)
「ローカルルール【ダーツ】!!」
ダーツ:1人につき1ラウンド3本のダーツを投げ、ボードに刺さった位置に応じた得点を競う遊び
俺はそう叫ぶと、周りを飛んでる三本を
「せええい!!!」
体に受けた、左腕、右脚、左腕、ビックリするぐらい痛いが、ギリギリ致命傷じゃない……はず
「ふん、血迷ったか」
「くっそ痛ってぇ!!……だが!」
俺が顔を上げると、新たに飛んで来ていた無数のナイフは、空中で弾かれて俺の元まで届かない
「……お前、何をした?」
「ダーツって知ってるか?三つ投げたらターン終了のあれだよ」
「それがどうし……まさか」
俺は体に刺さった三つのナイフを指差す
「三つ、的に当てたもんな?お前のターンは終わったんだよ!」
「なるほど、それがお前のデューク」
自緑はそう言うと下がっていった
「らしいから、次はお前だジョン」
「はっ、このまま終わっちまうと思ったぜ」
ジョン=フローリーは立ち上がるとそのまま話し始めた
「なぁ、そこの……えっと……付添人」
「原木だよ」
「原木!お前が自緑と殴り合ってる時、俺は何してたと思う!?」
「知らね」
「答えは車を動かしていた!」
「そうですか……?」
「そして、俺のデュークはどんなんだと思う!?」
「知ら──」
「答えは【スローリー】!物の動きをスローにできる!!!」
その瞬間、奥に止まっていた……いや、超低速で動いていた車三台が一気にスピードを上げて突っ込んで来る
「速いものをスローにすると、スローを解除した時その速さは保持されたままになる!これが俺の三投だぜ!!!!」
「……ルール、だもんな」
「あぁ!?声が小さいぜ原木!」
ジョンを無視して俺は紙にある物を書いていた
「よし、できた……おい、そこのアメリカ」
「ジョンだよ!」
「ジョン、ここが日本で、お前が動かしたその車が日本車である以上、日本の道交法……ルールを守ってもらわないとな?」
俺はそう言ってさっきまで書いていた紙を掲げる
「ローカルルール【車両進入禁止】!!」
「はっ!なんだそれ!丸に横棒が書いてあるだけの紙で──」
その瞬間、俺に突っ込んで来ていた車は三台とも急停車した
「な、なんだと……!?」
「さ、次は誰が来る?」
現在 毒島充電進行度 36%
原木の負傷度合い 左腕に二箇所と右脚に一箇所の刺傷
第十八話 完




