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第十七話:アイアム

「No:00001毒島 浮利、起床。活動を開始します」


昨日まで過ごしていた部屋と違う場所、無機質な部屋。そうだ、今日から私はあの戦いに参加するんだ


「充電の完了を確認、ケーブルを外します」


自分の体に太いケーブルが刺さっているのも不思議に思わなくなった、むしろ食事に近い快感があって好きです


「アカツキノハネを装填、出発準備完了」


その時、モニターが勝手に起動する。ここに来た私が唯一あの方と繋がる手段のモニターが


『おはよう、浮利』


「石夜見様、おはようございます」


『もう準備出来ている様だな、さすがだ』


「もったいないお言葉です」


石夜見様、見ていてください、私はあの男より活躍して見せます


『それじゃあ、そのデバイスのマップに従ってデカい方のエレベーターに向かってくれ』


「はっ」


『バッテリー切れには気を付けろ、充電残量と技の出力を計算して戦闘をするんだ、そもそもお前は二時間も続けて戦闘する様な設計になっていない……あと、あ(・)れ(・)は使うなよ』


「石夜見様、十分承知しております」


『……そうか、ならいいんだが』


「では行ってまいります」


廊下に出る、誰もいない。少し早く起きすぎてしまった


(むしろ好都合、私の姿は好奇の目で見られてしまう。一人でいると特に)


ガシャ、ガシャと歩くたびに廊下に響く、浮いて飛んだら早いが余計な消費は避けたい


(サイボーグ化、体重が増えるのは考えものですね、私も乙女の端くれですから)


そんな事を考えているうちに例のエレベーターが見えて来た。昨日乗った時は原木さんと一緒だったからか、一人だと更にデカく感じる


デバイスをかざすと扉が開いた、いよいよだ。失敗は許されない


「No:00001毒島 浮利、乗り込みます」


エレベーターが上に、横に、下に、縦横無尽に動き回る。そして扉が開いたそこは


「ここは……空港ですか」


広いターミナルに一面ガラスのでっかい窓から光が差し込んでいる。窓の外を見ると飛行機が並んでいて、実際に行ったことはないが創作物で見た空港そのものだ


(石夜見様の話だとアナウンスが流れるまでは戦闘行為は禁止、でもこの待機時間にもバッテリーは減り続けている)


(明日からは起床時刻を遅らせて……いや、まず今この状況をどうにかしなければ)


見渡す限りの空港、コンセントはあるが私の規格に合う太いやつは……


(いや、ここは空港……なら外にあれがあるかもしれない)


突っ立ってても無意味だから外に出る、広大な駐車場の端にお目当ての物が


「やっぱりありましたか、電気自動車用の充電ステーション」


「よし、J1772がありました。アイアムラッキーです」


確認してからケーブルを背中に突き刺す、これで安心です


コンクリートの上に正座してぼーっと開始のアナウンスを待つ、暇だから少し浮いて遊んだりして


『ブロックB-3:定員人数の移送確認。それでは今からルールを説明します』


(やっとですか)


『制限時間は二時間、相手を気絶させるか殺害するとポイントを入手できます』


『気絶から目覚めた際の途中復帰は認められており、気絶している者の故意な殺害はルール違反とします』


『また、戦闘継続が不可能とみなされた気絶者は自動で回収されます』


『それでは……スタート!!!』


充電ケーブルを引き抜いて立ち上がる、全員倒して見せます


(……いや、そう言えばチャット機能がデバイスにあるから、それで合流を図れって石夜見様がおっしゃっていましたね)


デバイスをいじってチャット機能を開く、B-3と書き込んで他の方がどこにいるかを見てみると


「えーと、王城さんがD-2、エミリアさんがI、装呀さんがH、原木さんが……B-3、よりによってあの人が一緒……」


(これは別に無理に合流しなくてもいいですね、偶然会えなかった体で──)


「あ、いた、おーい毒島」


(アイアムアンラッキー)


天を仰ぐ私に原木さんはぐいぐい話しかけてくる


「いやー、俺だれかと一緒になった事ないから、安心感があるな……っていっても形式が変わってからまだ三回目なんだけど」


「なんで……」


「ん?なんか言ったか?」


「なんで原木さんなんですか、装呀さん、エミリアさん、せめて王城さんでしょう」


「そんな言うなよ……」


「とにかく、一緒に行動してもいいですが、何があっても助けませんし見せ場もあげませんからね」


「わ、わかったよ」






ターミナル内に戻った俺と毒島は敵を探して歩き回る……というか、毒島が歩き回っているのに俺がついて行ってるだけなんだが


「絶対私が……石夜見様……私が……」


(嫌われてるのはわかってたけど、それはそれとして怖い、なんかずっとブツブツ言ってるし)


(少しずつって言われてもなぁ……初期好感度がゼロじゃなくてマイナスなんだから、無茶にも程が……)


「そこの二人、止まりな」


突然の声に振り返ると、スーツケースを持った男が一人。毒島お待ちかねの敵が現れた


(スーツケースのせいで旅行客にしか見えないな)


「あなた、敵ですか」


「あーん?敵だよ、正真正銘な」


「了解しました」


その瞬間、アカツキノハネが六つとも飛び出す、殺意が高すぎないか


「展開、ウィングユニット:アカツキノハネ」


「な、なんだそ──」


「ファイア!!」


レーザーが真っ直ぐ飛んでいく、六つとも男に命中して勢い良く吹っ飛んだ


「痛ってぇ……それにあちぃし──」


男が起き上がったときには毒島はもう飛び出していた。ダッチェスで浮遊し、ワイヤーを射出、巻き取って男の元へ


「ちょ」


そして、機械が詰まった重い拳が振り下ろされた


「ぐふっ」


『自緑 鋼 気絶確認、毒島 浮利にポイントが加算されます』


本当に見せ場の一ミリも与えてもらえなかった


「まずは一人、ですね」


「何度見てもすごいな」


「当然です、この力は私と石夜見様の結晶なんですから」


嫌いでも褒められるのは嬉しいらしい


「さぁ、次に行きますよ」


毒島はアカツキノハネを戻して歩みを続ける、もう頭には次の敵の事しかないのだろう




「ファイア!!」


「きゃああっ!!」


アカツキノハネのレーザーが額に命中して一人


『円各 通 気絶確認、毒島 浮利にポイントが加算されます』


「これで二人……」




「発射!」


「ぐわああっ!!」


今度は右腕の銃で一人


『ジョン=フローリー 気絶確認、毒島 浮利にポイントが加算されます』


「はぁ……はぁ……これで三人……」


「毒島、流石に飛ばしすぎだろ」


息を切らして、文字通りボディが熱くなってる毒島が睨みながら振り返った


「まだまだです、ここにいる全員倒して、石夜見様に褒めてもらうんです」


「……なぁ、俺は石夜見と会って一週間ぐらいしか経ってないし、あいつのこと全部理解できてるとは思わないけどさ」


「あいつは……お前が三人も倒して生きて帰って来たら、それだけで褒めてくれるんじゃないか?」


睨んでいた目が、見開かれた


「っ……あ……あなたに何がわかるんですか、石夜見様の何が!」


「いや……だから理解できてるとは思わないけどさっ──」


毒島がつかつかとこっちに来て、話してる途中だった俺の首根っこを掴む


「私は……私はもっと功績を上げて、役に立つ機械だと証明しなきゃいけないんです。じゃないと……じゃないと……!!」


「また、捨てられちゃう」


……あぁ、そりゃそうだ、こいつはまだ子供なんだ。家庭の事情は知らないが、捨てられたらトラウマになるに決まってる


親がどうでもいいのは本当だろう。でも、見限られてまた捨てられる、それ自体は怖くて仕方がないんだ


そんな事を考えていると放り投げられた、硬いタイルの床に


「……話しすぎました、次の敵を探しに行きます」


「ちょ、おい!話は終わって……」


呼びかけると毒島は止まってくれた、そして口を開いた毒島から飛び出したのは


「……原木さん」


「な、なんだよ」


「バッテリーが、切れました」


「はぁ!?」


サイボーグ故の欠点だった


「え、完全に動けないのか?」


「動かせないのは機械部分だけです、筋肉で頑張れば少しは動けますが……戦闘はとてもできません」


頭を抱えるしかなかった


「えー…………あ、そう言えば俺と会った時、電気自動車の充電ステーションにいたよな、もしかしてあれで充電できるのか?」


「できますが……ここから今の私のスピードだと何時間かかるか……」


「ダッチェスは使えるんだろ?」


「浮いたからなんなんですか」


「いいから、浮いてみろって」


毒島が仕方なくダッチェスで浮いた、俺はそんな毒島を本当に風船を持ち歩くみたいに手を引いて歩いて行く


「ほら、これならすぐだろ」


「……そうですが、あなたに手伝ってもらうなど」


「昨日も言っただろ?もう俺たちは仲間だ。それに、石夜見によろしく言われてるしな」


「っ……」


毒島が唇を嚙みしめながら大人しく運ばれる、幸いにも誰にも会わずに充電ステーションに着いた


「えっと、これを背中に……で合ってるか?」


「はい……」


さっき首根っこを掴んでキレていたとは思えないぐらい大人しい。俺に助けられたのがよほど効いたのか


「なぁ、さっきの続きだけどさ」


「まだ続けるんですか」


「いいから聞いてくれよ」


俺は充電している毒島の横に腰を下ろした


「まず、過去の話は石夜見から聞いた」


「はぁ、同情ですか?」


「違うって、えっと……何言いたかったんだっけ………」


考えをまとめる、説教したいわけでも同情したいわけでもない


「確か、サイボーグ化は毒島から申し出たんだろ?」


「はい、石夜見様の役に立てるので」


「申し出なかったらどうなってたと思う?」


「そんなの…………」


考えている、真剣に。いや、答えは出ているのだろう、言いたくないだけで


「……孤児院に送られる、辺りでしょうか」


「いーや、石夜見はそんな事しないね」


「だから、あなたに石夜見様の何が……」


「一旦最後まで聞いてくれよ。昨日言ってたぜ、お前を親に返す事もできたけど、お前を思ってしなかったって」


「え?」


どうやら聞かされてなかったらしい、石夜見に悪いことした気もするが続けることにした


「きっとあいつはお前を保護したままだったと思うぜ、なんだかんだ誠実なやつだし」


「でもそんなの分からな……」


「それに、大事にされてたんだろ?部屋もクリスマスプレゼントも貰ってさ」


「なんで知ってるんですか」


「あ」


日記を見た事がバレてしまった


「と、とにかく、お前は大事にされてるって話がしたかったんだ」


「でも、それは私がサイボーグ化に成功したからであって……」


「じゃあ、戻ったら聞いてみようぜ」


「…………聞く?」


毒島が鳩が豆鉄砲を食った様な顔で俺を見る


「毒島がサイボーグにならなかったら孤児院に送ったか、フィールドにいる全員倒すほどの戦果が欲しいか、全部お前の考えた事だろ?実際に石夜見に聞いて、白黒ハッキリさせようぜ」


「……あなたは、単純ですね」


「もしかして馬鹿にされてる?」


「えぇ」


毒島は溜息をついて俺の横に腰を下ろした


「……確かに、思い返せば全部私の考えた事だった、一回ちゃんと聞くべきですね」


どうやら、分かってくれた様だ


「原木さん、あなたは単純だしムカつきますし嫌いです」


「な……」


「でも──」


「見つけたぞ!!」


毒島が何かを言いかけたタイミングで、見たことある連中が三人現れた


「おーい、さっきは良くもやってくれたな?」


「私の顔にこんな傷を付けて……!!」


ここまで毒島が倒してきた三人が、徒党を組んで現れた


第十七話 完

原木 遊(はらき ゆう)

12月19日生まれ 19歳 玖素広大学二年生 男 東京住み


ひょんなことから怪しい人体実験に巻き込まれた大学生。生きて帰るために謎の多い能力と共に突き進む!


コスト:409

トンカチ、スタンガン、トランプ、白紙、ペン、水鉄砲、ライター、扇子、マジックナイフ


デューク:ローカルルール

物・事象に既存のルールを適用する事ができる、ただし同時に適用できるルールは一つまで。

NGワードゲームなど他に道具が必要なルールを適用するには該当の道具を用意しなければならない。また、そのルールを知らない相手には発動できない


好きなもの:ボドゲ・遊ぶこと・頭を使うこと全般・バカみたいな味の食べ物


嫌いなもの:一方的な勝負「自分が勝ってても」


得意なこと:頭を使うこと・切り替え


苦手なこと:退屈


性格:前向き・お調子者・素直


信念:大神 螺旋と、この実験を止める

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