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第十六話:拾われ

「……なるほど【主導】と【アクセサリー】ですね。把握しました」


能力の説明を受けた毒島が頷いている……と、思ったら露骨に文毬から遠ざかり始めた


「え……あ、あれ……なんで離れて……?」


さっきまでニコニコで説明していた文毬の表情が曇る


「物を好きに変形できるんですよね?私、イチコロじゃないですか」


(確かに)


「そ、そんな事しません……!た、大切な仲間……なんですよ?」


「仲間?」


毒島が呆気にとられた顔をして首をかしげる


「えぇ、私達は毒島様の事を仲間だと思っていますわ」


「うむ」


「ま、そうだな」


「……そうですか」


返事は素っ気ないが、毒島の顔は少し赤くなっていた


「て、照れてます……?」


「いいえ」


「そ、そっか……ふへへ」


文毬の笑顔がなんか怪しい、そのまま手を毒島の頭に乗せて撫で始めた


「か、可愛い……」


「はい、私は可愛いです」


(そういえば毒島とエミリアが戦いが終わったとき、毒島ちゃんって呼んでたな……もしかして)


大人しく撫でる手を受け入れていた毒島が、顔を上げて文毬の表情を見て顔をしかめた


「なにをニヤニヤしてるんですか装呀さん」


「な、なんでもないよ……ふへへ」


(気づいたら敬語もなくなってる……やっぱり、文毬は毒島を妹みたいに思ってるんだな)


そんな事を考えていると、横から王城が毒島を小突き始めた。脇腹をぐいぐいと押している


「わ、なんですか」


「ふむ……思ったより硬くないな、機械は体の奥の方に集中しているのか?」


「そうです、皮膚と筋肉はなるべくそのままにする、石夜見様の偉大な配慮です」


話していると毒島は右腕を出した、そして、稼働するところを全て動かし始めた。銃口が出る所、さっきスザクノイブキを撃つために開いた右手のひら以外にも、何か所か開ける部分がある


「この様にガッツリ機械になっている所も神経は通ったままであり、触られると感じるし、殴ると痛いです」


「それに、食事や睡眠も必要です。私はロボットではなくサイボーグなので」


「先程も一緒にお食事していましたものね」


話を聞いてると、石夜見が改造したんだと感じる。やっぱりあいつは淡泊に見えて人《・》、そしてその奥にある心を大事にするやつだ


「なぁ、俺にもよく見せてくれよ」


「嫌です」


「ぐぬぅ」


うろたえてると文毬が撫でる手を止める


「……ぶ、毒島ちゃん、原木さんにだけ当たりが強いね……い、いい人だよ?」


もう完全に敬語が取れていた


「それは分かっています、ですが嫌いですから」


「き、嫌い?」


「はい、大っ嫌いです」


毒島が開いたままの右手で俺を指差す


「私は、拾われたあの日から石夜見様と二人っきりだったのに!突然ぽっと出の原木さんに石夜見様の関心を奪われて!嫌いにならない訳ないでしょう!」


「すごい嫌われ様だな、原木 遊」


「うぅ……俺、別に何かした訳じゃないのに……」


「まぁまぁ、きっとお互いの事をもっと理解すれば……そうですわ、トランプ!一緒に遊べばきっと仲良くなれますわ」


「トランプ」


毒島が少し食いついた、さっきまで睨んでいた目が心なしか柔らかく……いや、気のせいかも


「そうだな、それじゃあ王城の部屋行くか」


「……なぜ毎回我の部屋なのだ」


「いいじゃん、王城の部屋が一番普通のエレベーターから近いし」


「……うむ」






ダウト:Aから順に2,3,4……と裏向きにカードを出していき、最初に手札が無くなった人が勝ちのゲーム。カードを出す際噓をついても良く、他のプレイヤーは噓だと思った時に「ダウト」と言う事で、場のカードを噓をついたプレイヤーに押し付ける事ができる。ダウトと言ったのに合っていた場合は、ダウトと言ったプレイヤーが場のカードをもらわなければならない。


「7」


「8ですわ」


「9です……」


「10である」


「Jです」


「ダウト」


「っ……そうです」


ダウトをしてみて分かった事がある、毒島は思ったより表情が固くない。少なくともここ数日、石夜見と会話していた俺からしたら豊かな方だ


「8です」


「ダウト」


「またですか……合ってますけど」


嘘を見抜かれた毒島が机に手をついて悔しがる、機械の指がコツコツと机を叩いていた


威力が……いや、出力が強いのか、机の一点が少しずつ凹んでる


「ほい、A」


「ダウト!」


「残念、Aでした」


「うぅ」


「これで原木様の一抜けですわね」


勝ったのはいいが、毒島の睨む眼力が強くなった気がする。手加減すべきだったかもしれない


逃げる様にデバイスを見るともうすぐ帰室時間だ


「そ、そろそろ部屋に戻る時間だな、アーモドラナクチャ」


(逃げたな)


(逃げた……)


(逃げましたわね)


トランプを片付けて部屋を出る。王城はそのまま部屋に残り、四人で歩き出す。近い順に文毬の部屋に着いて、俺の部屋に着い……


「……なんで毒島も止まるんだよ」


「私の部屋、ここですから」


毒島は俺の向かいの部屋を指差した


「あら、そうでしたのね。それではお二人共、また明日」


「おー、また明日」


エミリアを見送ると毒島が向き直った


「……いいですか原木さん、トランプでは負けましたが明日の試合は私の方が活躍します、そして石夜見様に褒めてもらうのは私です!」


「では!!」


言いたいことだけ言って部屋に戻って行った


やれやれと思いながら俺も部屋に入る、いつも通り通信が繋がったモニターが


『原木、さっきぶりだな』


「よ、石夜見」


『毒島とはどうだ?上手くやれそうか?』


「やれてると思うか?」


『思わない……まぁ、少しずつやってってくれ』


投げ出された、いや、フィールドKでの石夜見の感じを見るに、手を打った後なのだろう


「それにしても、すごいなサイボーグ」


『お、やっと浮利の凄さが分かったか』


「戦っている所を見ると特にな、それでいてちゃんと人間性も残ってるし」


石夜見が腕を組んでうんうんと頷いている、褒められてうれしいのだろう


「そういえば、石夜見と毒島が出会う過程はどんなんなんだよ。拾われたって本人は言ってたけど」


『……そうだな、話してやる』


石夜見は椅子に深く座り直す、いつもの淡々とした声とは少し違うトーンで話し始めた


『まず、この研究所……もとい、大神製薬の本社は山の方にある。地下が広げやすいし、隠し事がしやすいからな』


「隠し事……」


『浮利はある日の朝、玄関口に倒れているのを俺が見つけた。話を聞くと、山の道中で親に置いてかれて、道路を辿っているうちに着いたらしい』


『調べれば親の現在位置なんて分かるが、それは浮利にとって良くない事だと思ってここで保護することにしたんだ』


「それで?」


『浮利の世話や教育は俺が請け負った、見つけたのは俺だし、この時点でかなり懐いていたからな』


『一緒に暮らしている内に、俺の夢、パンドラの箱計画を話したら浮利が私でやってほしいって言い始めてな』


『特殊能力の人体実験の部署に来て、金と設備が手に入ったから実行して、無事に生まれたのがサイボーグ毒島 浮利だ』


「なるほど……あれ、ダッチェスは?」


『サイボーグにΘ細胞を投与した実験結果が欲しいと言われてな、逆らえば浮利をメンテナンスする設備が没収されてしまう以上、俺は承諾するしかなかった……まぁ、本人は俺と同じ力が手に入るって喜んでいたが』


「で、今に至ると……あいつも大変なんだな」


少しだけ見え方が変わった気がする、少しだけ


『まぁ、あいつ自身は親の事なんてどうでもいいと思っている、それにサイボーグもダッチェスも喜んで受け入れてたがな』


石夜見が姿勢を直して力を抜いた、どうやら話し終わったらしい


『以上だ、何か質問はあるか?』


「いーや、特に」


『そうか、なら明日使う武器を選んでくれ、俺は今から毒島と話さなきゃならない』


そう言って画面が代わり、通話が切れた。どうやら毒島の専属研究員も石夜見らしい


(労働量二倍か……可哀想だな〔余計なお世話だ〕うわ、聞かれてた)


こうして、俺達とサイボーグ毒島 浮利の出会った日は幕を降ろしていった


第十六話 完

scissors×scissors ローテンション ⑥みんなが帰った後の王城


「全く、隙あらば我の部屋に集まりおって……」


『それだけ王城君に魅力があるって事よ』


「葉梨、褒めれば良いという事ではない」


『あら、私は思った事を言っただけよ』


「ふん、そうであるガっ──」


話しながら机に肘をつくと、机の一部が崩れた。そうだ、今肘をついた所は


「先程、毒島 浮利が叩いておった所……!!」


「おのれ毒島 浮利……!!」


『あらあら』

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