第十三話:大っ嫌い
「待っていたぞ原木」
「なんで……ここにいるんだ石夜見!」
初めて見る生の石夜見。モニター越しに見てた時と変わらない硬くて何考えてるか分からない顔をしている
「まさか……戦うなんて展開じゃないよな……」
「安心しろ、そういうのじゃない」
石夜見はそう言うと椅子に座った、俺の部屋にあるのと同じ無機質な事務椅子だ
石夜見に気を取られていてちゃんと見てなかったが、改めて見渡すと恐ろしい程に事務的な部屋だ。都内のオフィスですと言われてもおかしくない程に整っていて色が少ない
「さてと、第一にお前をここに来させたのは俺だ。お前に見せたいものと、話したい事があってな」
「見せたいもの……?」
「これだ」
石夜見はそう言いながら書類を差し出した、何十枚もの紙からなる分厚い書類だ
「えーっと……人体機械融合技術実用化計画、通称:パンドラの箱計画?なんだこれ」
「簡単に言うと人間のサイボーグ化だ」
「サイボーグってあれか?あの、人×ロボットみたいな」
「それだ」
「俺の子供の頃からの夢だったんだ、サイボーグを作り上げる事がな。それが成功し、一般的に普及すれば人類の生活は大きく変わる」
石夜見が喜々として話している、ここまで楽しそうな姿は初めて見た
「ほーん……で、これがどうしたんだ?」
石夜見の顔が真面目に戻る、切り替えの速さが凄まじい
「そして第二に、俺は大神にかなり気に入られてる。研究員でグランが発現してるのが俺だけだからな」
「こんな風に専用のフロアが与えられ、お前を俺の独断で連れて来れるぐらいには気に入られてる」
今まで見てきた部屋と石夜見が話す情報が繋がって行く、まさか
「そして第三に、もうできてるんだ」
「できてるって……もしかしてあの日記の持ち主は……!」
「入って来い」
俺が入って来た扉と別の扉が開く。そして、そこから女の子が出てきた
(あれ、なんか思ってたのと違う)
背丈は150cm、童顔……というか童。服装はサイバースーツと言うのだろうか、メカメカしていてスマートだ
「こいつは毒島 浮利……サイボーグだ」
「あ、ぶすじまって読むんだ」
「サイボーグだ!」
「うーん……サイボーグって言われてもなぁ……格好だけだろ。子供だし」
石夜見がため息をついて天井を見上げる、なんか悪い事した気がする
「浮利」
「はい」
「見せてやれ」
「かしこまりました、石夜見様」
無表情で小さく頭を下げた毒島の右腕、肘から先の外装がスライドして開く。そこから金属質な銃口が覗いた
「おぉー!?本物か!?撃てるのか!?」
「撃てる、特注4mm口径マシンガンだ」
「他には何があるんだ!?」
あからさまに食いついた俺に石夜見は口角を上げる
「やっと興味を持った様だな。浮利」
「はっ」
銃口がしまわれ、今度は左腕を上げる。右腕と対称の位置が開き、風変わりな機械が出てきた
「それはなんだ?」
「ワイヤー射出機だ、先端を引っ掛けて移動に使える」
「かっけー!」
俺が目をキラキラさせてると、石夜見が奥から何かを持って来た。赤い結晶の様な物体が機械で包まれている
「な……なんだそれ」
「こいつは毒島 浮利専用ユニット【アカツキノハネ】だ」
「詳しい仕組みを説明すると日が暮れるか原木の頭が爆発するから割愛するが、ざっくり言うと浮利の脳波によってレーザーを射出できる」
そう言うと石夜見はアカツキノハネを壁に向けた
そして、レーザーが発射された。壁に一筋の焦げ跡が走る
「わ…………」
「驚いて言葉も出ないか」
「すご……え、最強じゃねぇか!」
「まぁ、エネルギーやらなんやらの問題で威力はそこまでだけどな」
石夜見はアカツキノハネを毒島の背中に戻す、背中をよく見ると差し込めそうな穴が他に五つある
「なぁ、このアカツキノハネ?六つあるのか?」
「そうだ、浮利に付いてる間は充電、そしてダッチェスが使われる」
「ダッチェス?」
「浮利のダッチェスは【風船】体に触れた物を浮かせることができる。浮かせれる時間は触れてた時間に比例する」
「ふんふん、確かにこのままだとわざわざ背中から外して抱えて撃たなきゃいけないか」
「でも浮かせるだけだろ?操作はできないのか」
石夜見は待ってましたと言わんばかりに笑顔になった
「実はこのサイバースーツ、浮利の意識で電磁石の操作ができるんだ」
そう言うと、さっき差し込まれたアカツキノハネがふわりと背中から離れる。そして、毒島の周りをグルグル回り始めた
「さらにだ、浮利」
「わかっております」
毒島の太ももが開き、持ち手の様な物体がせり上がってきた
それに目を取られているうちに石夜見がアカツキノハネを二つ持って来る。毒島に近づけると三つとも浮く
そして、持ち手にアカツキノハネが縦に三つ連結し、光の刃が側面を覆って刃になる
「一個のレーザーブレードになる」
「おー!!でもこれも……」
石夜見の顔が曇る
「エネルギーの問題で切断力は普通の剣と同じぐらいだ」
「それでもすげーよ!」
曇った石夜見の顔が少し晴れる
「これで浮利の紹介は以上だ、明日から試合に参加するから仲良くして欲しいと思って呼んだんだ」
「なるほどな」
毒島の方に歩み寄って手を差し出す、能力があって戦う気があるなら子供でも立派な戦士だ
「俺は原木 遊、趣味はボードゲーム。よろしくな」
「原木さん、石夜見様から話は聞いています」
「お、そうなのか。嬉し──」
ピッと指をさされる、そして
「ハッキリ言います、私はあなたの事が大っ嫌いです。大っ嫌い」
「え」
空気が止まった、石夜見が頭を抱えている
「いいですか?私は路頭に迷っていたところを石夜見様に拾われました、運命なんです。でも最近の石夜見様はぽっと出のあなたの事ばかり……ハッキリ言ってムカつきます、大っ嫌い」
「え、え」
「浮利、流石に言い過ぎじゃないか?」
「石夜見様は下がっていてください、これは私と原木さんの問題です」
毒島は腕を組んだまま、じとーっとした目でこちらを見上げてくる。いや、完全に睨まれている
「一年前に私を拾い、夢を語り、それを私で実施してくださった……この体は石夜見様の英知と絆の結晶!あなた如きでは比べ物にならないんです、わかりましたか?」
「わ、わかりました……」
まだ詳しい年齢を聞いていないが、推定五歳は下の女の子に怒られている。仲良くはできなさそうだ
「浮利、ストップ」
「……はっ」
毒島が不服そうな顔で下がった、まだ睨まれてる
「……まぁ、話してみて分かったと思うが、浮利は少し俺に忠誠を誓い過ぎてるところがある」
(少し?〔正直少しじゃない〕)
「それより、拾ったって言ってたけどどういう過程があったんだ?」
「それはまた今度話す」
「えー?なんでだよ」
石夜見が俺のデバイスを指差す、見てみると既に13:50だ
「あ、試合終わるのか」
「そうだ、続きは部屋に戻ったら話す」
「了解、対面で話せて楽しかったぜ」
「俺もだ」
部屋を出てクソでかエレベーターに戻る……
「……なんで付いて来るんだよ、毒島」
振り返ると、アカツキノハネを六枚装備した毒島が後ろを付いて来る
「大変嘆かわしいですが、私も上で生活する事になりました。石夜見様と二人きりだったのに……」
「本当に好きなんだな」
「好きなんてショボい言葉で済ませないでください、私の全てです」
正直、俺も苦手だしあっちも嫌いだろうけど、この真っ直ぐ石夜見を想うとこは良いと思う
(まぁ、なんとか仲良くやってくか)
十数分前 フィールドA-2
「はぁ……一人かぁ」
昨日はあった安心感がない、エミリアさんがいないだけでこんなに気分が落ち込んでしまうとは
「で、でも私、王城さんが言うには強いらしいし……が、頑張れる……かな」
(もう一人倒したし)
怖いけど少し歩いてみる、フィールドA-2は商店街だった。大通りにアーケードがかかり、乱立したお店達の間にはたまに小道が現れる
(あ、宝石店だ……ふふっ、綺麗……このタンザナイトのネックレスいいなぁ……こっちのガーネットの指輪も……)
昨日のエミリアさんの事を言えないぐらいには満喫してしまった、だって宝石が綺麗だから……
誰かに言い訳しながら歩みを進めると、公園が見えてきた。商店街に付属してる小さい公園
(公園……お母さんとよく行った……お母さん元気かなぁ)
そんな事を考えていると、公園のベンチに座っている女性が目に入った。紫色のロングヘアを靡かせている綺麗な人
(あ、目が合っちゃった、攻撃されるかな……)
思わず構える、けど、女性は一切の戦意を見せず笑いかけてきた
「こんにちは」
「こ、こんにちは……」
「アタシは鳴静 天鏡、アナタは?」
すごい普通に話を続けている、逆に怖い
「文毬 装呀です……」
奇妙な出会いの始まりだった
第十三話 完
毒島 浮利
7月24日生まれ 13歳 石夜見のモルモット兼従者 女 東京住み
生き迷った所を石夜見に拾われた女の子。全身を機械に改造し、文字通り生まれ変わったサイボーグ!
コスト:なし
専用ウイングユニット「アカツキノハネ」
ダッチェス:風船
体に触れた物を浮かせる事ができる。浮かせれる時間は触れていた時間と比例し、長時間触れすぎると破裂する。
好きなもの:石夜見
嫌いなもの:石夜見に近づこうとする者
得意なこと:努力
苦手なこと:協力
性格:真面目で知的、常に落ち着いている
信念:石夜見の期待に応える




