第十二話:グラン
「荒波君、また新しい公式を見つけたそうだね!素晴らしい、実に素晴らしい!君は将来この国を背負って立つ人材になるぞ!」
うるせぇ、適当に考えたら出てきただけっつたろうがよ
「荒波、その才能をこの学園だけに留めておくのは惜しいな」
面白くねぇんだよ、どいつもこいつも
「ミスター荒波、君と会えた事を光栄に思うよ」
俺は嬉しかねーんだわ
「災俄は私たちの誇りよ!」
「荒波君、この公式なんだが――」
……またそれか。昨日見た映画の話をしたときは、誰も聞かなかったくせに
お前ら全員、俺の頭にしか興味ねぇんだろ。誰も俺を見ちゃいねぇ……なら嫌でも見せてやる
「荒波!なんであんな事したんだ!?」
「荒波君、悪いが君をこの学園に置いたままにすることはできないよ」
「災俄……悪いんだけど出てってくれるかしら……」
ほーらな、やっと俺を見たと思ったらこれだ。ちょっとシステムいじって学校名義で大企業に喧嘩ふっかけただけなのによぉ
「荒波 災俄だな、その頭を活かせる場と道具を用意した」
なんだぁ?まだ頭を見るやつがいんのかよ……大神製薬?
この頭を使っても解き明かせないから運命は面白れぇ。喧嘩ふっかけた企業からオファーが来やがった
「素晴らしい……微細な衝撃波の強弱でここまでの芸当を……!」
「各指の向きで衝撃波に指向性を!?何者なんですか彼は!?」
「君は私の実験の大きな糧になれる、荒波 災俄!!」
外と大した差がある気はしねぇが、この新しいオモチャは振っていて飽きねぇ。これを使って、全員に俺を見せてやる
(あのハッピー女も瀕死当然、いや……まだ起きてるだけ大したやつか)
地面に衝撃波を叩きつけプールサイドに登る、干からびたプールの真ん中でハッピー女はうずくまっていた
「おーおー、もう限界か……あ?」
ゆっくりと顔を上げたハッピー女に違和感があった。さっきまでと違う、こいつ
(目の色が左右でちげぇ)
(炎出した時は赤、水出した時は青、今は右が赤で左が緑。今まで隠してたか土壇場で成長したか知らねぇがつまり)
その瞬間、ハッピー女の右手から炎、左手から風の渦が飛び出した。こいつ、二つ同時に使えるようになってやがる
「だけどよぉ!無駄なんじゃねぇか!?」
俺が衝撃波出すと炎も風も相殺された、威力は変わっちゃいねぇ
「両手を勢い良く振る!それだけでお前の成長は無に帰した!!残念だったなぁハッピー女!!」
だが、ハッピー女は手を緩めねぇ。肺か喉がイかれてんのか無言で炎と風を出し続けるだけだ
右から炎、左から風……と思ったら左から風、右から炎。無駄なフェイントを挟んだりするがやってる事は変わんねぇ
「持久戦かぁ!?腕を振るだけの俺!いつ倒れてもおかしくないお前!どっちが長く持つかも分からないぐらい頭がハッピーになっちまった様だなぁ!!!」
すると、ハッピー女が真上に手を向けた
「あ?」
そして、大きな炎の渦が飛ばされた
「隙見て風を叩き込む気かぁ?無駄だってのにご苦労なこったぁ!」
右腕の一振りで炎をかき消す、相殺で衝撃波は消えるが問題な──
(な……炎の中に風の渦を隠してやがったぁ!?)
一瞬驚いたがどうってことねぇ
「隠玉もこいつで終いだぁ!!!」
左腕を勢い良く振った、が、中から水の渦が飛び出した
「なんだああああぁぁぁ!!!???」
(しまっ、右腕が間に合わ──)
ザッッバァァン!!!
「ぐあっはぁ!?」
俺の体は吹き飛んだ、それは見事に。バウンド、バウンド、着地、二転三転
「がはっ……なんでだクソ!!どうしてだぁ!!??」
「使えるお花は二つまでと誰が申したのですか?」
顔を上げるとハッピー女がプールサイドから俺を見下ろしてやがる。そして喋るその口の中、舌の色が
(青い……!!)
(まさかこいつ……三つ使えるのを悟られないためにずっと黙って!?技が失敗しないよう感覚を掴むために無駄な攻撃を何発も!?)
「いい気に……なるなよハッピー女ぁ!!!!」
「げほっ……ドライ・ヴィアヴェル、もう一発行きますわよ」
ハッピー女が腕を上げる、種が分かってりゃどうって事ねぇ
「右で炎を消してぇ!!左で風を消しぃ!!もう一度右腕を振りゃあいいんだ──」
空振った次の瞬間、影から俺の脇腹に水の渦が
「あがががぁ!!??」
「先程自分で考えられていた攻撃の可能性も忘れてしまわれたのですね、ハッピー様」
「クソ……がぁ……」
『荒波 災俄 気絶確認、エミリア=F=シュヴァルツにポイントが加算されます』
「ふぅ……強敵、でしたわね。それにしてもこの力……恐らくこれが私の【グランダッチェス】」
「そうですわね…………決めましたわ、名を【シュヴァルツガーデン】といたしましょう。私だけのグランダッチェス、【シュヴァルツガーデン】ですわ!」
「げほっ、少し休んだら探索の続きですわ」
少し前、原木が返信をした直後
「っし、こんなもんかな」
再度辺りを見渡す、ただただ赤くて暗いだけの廊下。不気味で寒いような赤くて暑いような
「とりあえずマップを……ビックリするぐらい一方通行な道だな」
左端にエレベーター、廊下、右端に部屋がいくつか。本当にここで戦闘するのか?
とりあえず進むしかない、廊下を少し歩くとドアが現れた
「お邪魔しまーす……」
開けるとそこは個室だった。俺たちのより少し華やかで、女の子っぽい部屋
(綺麗だな……ついさっきまで誰かいたみたいだ……あ、このぬいぐるみ持ってる)
少しためらわれるが、漁る事にした
ラグをめくる、何も無い。ベッドを漁る、ぬいぐるみと埃だけ。机の引き出し……お?
日記だ、日記が出てきた。名前欄には毒島 浮利と書かれている
「なんて読むんだこれ……どくしま?どくしま ふり?」
パラパラとめくってみる、最初の日付は半年前、最後の日付は昨日だ
(えっと……?『十一月十四日 この体に慣れるための細かい作業として日記をつけ始めた。と言ってもここの景色とやる事は代わり映えしないが』か)
(何かこのフィールドかこの部屋のヒント……ん?『十二月二十五日 クリスマス、私には関係ない行事だと思っていたが石夜見様がプレゼントをくださった。一生の宝物にする』……だって?)
突然の知っている名前に目が止まる、それからも石夜見の名前は度々出てきた
(石夜見……あの石夜見だよな?同じ苗字とか……いや珍しすぎるな)
(それにしても石夜見に様付け……こいつは、毒島は本当に何なんだ)
他のヒントを探してページを読み進める、そこである事に気付いた
(あれ、三月三日から五月七日まで飛んでる)
そこである事を思い出す、俺が連れ去られた日付から目覚めるまでの日付。三月二十一日から五月の半ば
まさかと思い三月三日を開く『三月三日 ついにこの日が来た、私は再度生まれ変わる。石夜見様と同じ特殊能力を得られる』
(やっぱりこの毒島も……)
次のページを開く『五月七日 目が覚めた、体に違和感はないが成功しているらしい。これから能力を含めたこの体の使い方をブラッシュアップしていく』
(ブラッシュアップ?って言葉はよくわかんないけどやっぱりだ)
そのまま最後のページを開く、昨日、五月十八日
『近日中に私が戦闘に加わるという話が出た、遂にこの時が来たんだ。私ならあの人より上手くやれる、見ててください石夜見様』
「近日中に戦闘に加わる……?だから今は無人なのか」
だが俺がここに運ばれたヒントになりそうな物は無かった。日記を元に戻して部屋を出る
「次はこの部屋か……」
開ける、中は恐ろしい程にメカメカ禍々していた。よく分からない培養液、手術台、コンピューターに見たこともない機械がずらり。まるでマッドサイエンティストの部屋だ
(あまり探索したくないな……)
恐る恐る足を踏み入れる、色々見て回ったが俺が理解できる物はなかった
(そりゃそうか)
気を取り直して次の部屋に入る、今度は反対に何も無いだだっ広い部屋だった。壁や床に焦げ跡や切れ目がある以外何も置いていない
(なんだこの部──)
『システム起動 レベルワン』
「え?」
その瞬間、壁の切れ目から的が出てきた
「なんだこれ」
近づいて全部叩いてみる、叩いた的は壁に消えて行った
『レベルツー 起動』
的が増えた、床から出てきている物、動く物、多種多様になってきた
「ちょ……トンカチじゃあの高さ届かな……」
『レベルツー 失敗』
「あーあ」
すると的たちは壁に消え、何も無い部屋に戻った
(もう一回起動する前に出るか……にしても結局何も分からないままか)
今のところ毒島 浮利という人の日記を読んだのと的当てをしただけだが、もう最後の部屋に着いてしまった
(ここに答えがあってくれよ……!)
期待を込めてドアを開くと答えが文字通り待っていた
「こうして会うのは初めてだな、原木」
「石夜見……!?」
ここに来てから毎日モニター越しに見た顔がそこに立っていた。
第十二話 完
エミリア=F=シュヴァルツ
4月17日生まれ 17歳 ドイツ住み
ドイツの名家シュヴァルツ家令嬢、一族の思いを背負って華麗に咲き誇る!
コスト:80
薔薇三本、蓮三本、百合三本、林檎「花」一本と彼岸花一本。花を食べる用のフォークとナイフ
ダッチェス:エディブルフラワー
花を食べると、食べた花によって一定時間能力が使える。発動中は能力によって瞳の色が変わる。
薔薇→炎・赤
蓮→水・青
百合→風・緑
林檎→重力・黒
彼岸花(雷花)→雷「食べると死にかける」・黄
グランダッチェス:シュヴァルツガーデン
エディブルフラワーを三つまで同時に使える。右目、左目、舌の色が変わる。
好きなもの:植物
嫌いなもの:怒られる事
得意なこと:勉強
苦手なこと:お見合い
性格:ふわっとした心優しいお嬢様
信念:シュヴァルツ家の繁栄のために日々努力




