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領地に置き去りにされた令嬢は野生児化する  作者: 天野いぬりん


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2/21

2 スキルのレベルアップ

子爵家の家族が帰って来るまでの間は、子爵家の家の管理をしているおじいとおばあの孫になることになった私。おばあは「ビシビシいく」と言った通り、お嬢さま扱いではなくて、孫の扱いになった。


今日は山に行く予定だから、一緒に行くよ、と言われて、おじいたちの子どもが使っていたという作業しやすい服に着替え、歩きやすい靴に履き替える。


ということでやってきました、山の中!


おじいとおばあがいつも来るという山の中は空気がひんやりしている。木がたくさん生えていて、天気がいい午前中なのに山道は少し暗い感じがする。おじいがいつも通る道だ、と言った土の道は歩きやすいけれど、ところどころ木の根っこがあったりして油断すると転んでしまいそう。道の周りには背の高い草も生えている。時々草に顔をビンタされながら、おじいとおばあについて行く。


ずっと上り道だった山の中で少し開けて、青空が見える場所に着いた。



「よし、お嬢さま。これから俺は木を刈りに行く。木を刈る作業は危ないから俺には近づかないこと。お嬢さまはおばあと一緒に山の恵みを集めるんだ。いいか、山の中ではかくれんぼはしたらいけない。おばあから見えないところに行ったらいけない。いいね」


「はーい」



おじいが真面目な顔をして言うお小言を真面目な顔をして聞いた。言われなくても山の中は危ないって知ってるよ。いちねえさまが読んだ本のことをたくさんお話ししてくれた中に、怖い山の話があったのを覚えているもの。


それに今まで領地に来ていた時は山に行くのは危ないからって禁止されていた。ダメって言われても山に行きそうなよんねえさまも、危ないから行かない、と言って、山に足を踏み入れたことはない。おじいとおばあが許可してくれたから今回は初めての山。


さて、おじいは「山の恵み」を集めるって言ってたけど。



「おばあ、山の恵みってなあに?」私はそれが何なのか知らない。


「山の中にある食べ物とかだよ。そうだね、こっちに来てごらん」



そう言っておばあは茂みの中へ入っていく。ついていくと、そこには手をのばして届く高さに赤い実がついている木があった。おばあが一つ取って、私に口を開けてごらん、と言ったので、口を開けたら赤い実を放り込んでくれる。食べると甘くてすっぱい味がした。


「これ、もしかしてこの間デザートにつけてくれた実?」


「そうだよ。甘くておいしいだろう。たくさん採れた時は煮てジャムをつくるんだ」


「ジャム!」そうときたら、頑張って採らなきゃ!


「これ以外にも山にはいろいろ食べられるものがたくさんあるんだよ。少しづつ覚えていこうね」


「はーい」


「同じものだけを集めるんだよ。ちょっと形が違うな、と思ったものはおばあに聞くんだよ。毒のあるものが生えている事もあるからね。あと、動物を見ても絶対に近づかないこと。危ないときはおじいとおばあの言うことをすぐにきくんだよ」


「はーい」



足元を見ながらうろうろと歩き回る。かごに着けられた鈴もちりんちりんと鳴る。おばあが言うには、山の中には怖い動物も住んでいるらしく、鈴をつけて音を出していると、そういう動物が近寄ってこないらしい。


おばあのかごにも鈴が付いていて、音が鳴る。おじいにおばあのそばを離れないようにと言われたけど、鈴の音が聞こえる場所にいれば、おばあが近くにいることがわかるから、安心して赤い実を採る。


最初におばあが教えてくれた赤い実の木からだいたい実を採りつくしたら、次の木を探す。最初は探すのに時間がかかっていたけれど、目が慣れると早く見つけられるようになってきた。時々虫に食われている実があるので、そういうのは採らないできれいなものだけを選んで集めた。いっぱい取れたかな、とかごを見ると、半分くらいまで中身が入っていた。おばあにいっぱい取れたよ、と見せにいくと、おばあのかごはキノコや草で山盛りになっている。



「すごい!いっぱいある」


「年季がちがうからねぇ」とおばあはカラカラと笑った。



かごに入ったものを持ってきていた袋に移して、かごを空っぽにしてからまた赤い実を採りに歩き回った。今度はおばあのかごが山盛りになるころには、私のかごは満杯になる少し前くらいまでになっていた。



「お嬢さま、腕上げたね」


「やったぁ!」



おばあにはかなわないけれど、いっぱい見つけられるようになって満足だ。



スキル:山の収穫がレベル1になった!



山に登った時はおばあに教わって赤い実を採ったけれど、おじいにもいろいろなところに連れまわされた。


おじいは領主のお父さまがいないときに領地の管理もしている。領地内の集落の様子を見に行くときは私も連れて行った。おじいが集落の長とむずかしい話し合いをしているときには、近くにいる子供たちと遊んだり、集落の(おお)おじいや大おばあとお茶を飲みながらお話をしたりしていた。


特に北の集落の大おばあは、手も顔もしわくちゃで何歳か聞いても本人もわからないと笑って答えるくらいなのだけれど、とっても物知りで話を聞くのは楽しかった。特に天気の読み方は役に立った。


おばあはとってきた薬草やキノコを、よくざるに広げて干している。雨が降ると台無しになってしまうので、雨が降る前に家の中に入れなくてはいけないのだけれど、北の集落の大おばあに天気のことを教わってからは、干しているものを雨にぬらす失敗はしていない。



スキル:天気読みがレベル1になった!



おじいに連れられて領内をたくさん移動したおかげで乗馬の技術も上達した。馬とも仲良くなった。



スキル:乗馬がレベル2に上がった!


スキル:家畜の管理がレベル2になった!



このスキルは、おばあが考えてくれた。私が経験したことが上達したと認められたら、穴の開いた木札(おじいに教わりながら作った)に書いて壁に打たれている釘にひっかけてくれる。おじいが今日、私の馬の乗り方を見て「上手になったな」と言ってくれたことを報告したら、おばあが乗馬と書かれた木札をレベル1の場所からレベル2の場所に移動してくれた。


いまレベル1なのは、山歩き、山の収穫、木登り、天気読み、木工細工。


レベル2になったのは家畜の管理、乗馬。


レベル3になったものはまだない。



「ねえ、おばあ。私もっとレベルアップしたい!」


「やる気があっていいね。じゃあ明日はまた山に登ろう。前からすこし時間が経ったから、違う山の恵みが取れる時期だよ。キノコの収穫もしてみようか」


「楽しみー!」



おじいとおばあの家の小さな部屋の小さなベッドに横たわりながら私はニマニマと笑っていた。


今までだってずっと領地で過ごしてきたのに、遠くに行ったり、山に登ったりしたことはなかった。山は危ないって言われて行かなかったし、だいたいはよんねえさまに連れ出されて町の中で過ごしていたから。あと、ほかの姉さまたちも淑女らしくないからやめなさい、と言って、遠出するのを止められていたっけ。


今はお姉さまたちの妹じゃなくて、おじいとおばあの孫だもの。好きなように暮らすんだ!


明日何が起きるんだろう、とワクワクしながら眠りについた。

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