17 高位貴族と知り合う
ローリは私の顔を見るなり、抱き着いてきた。
「心配したんだよ!いきなりいなくなっちゃうし!」
「ごめん」
「ケガとかしてないの?大丈夫なの?」
「ケガは一つもありません。どこも痛くないです。元気です」
「良かった、心配してたのよ」
「ごめんね。ありがとう」
ローリは私のことを嫌うどころかすごく心配してくれていたらしい。嬉しいね。
木登りをした私にドン引きしていないか心配していたけれど、あっという間の出来事でびっくりしすぎて反応できなかっただけだと言ってくれた。よかった。これからも友達でいてくれるみたい。
昼休みはもっとびっくりすることがあった。
「こちらに子爵令嬢のエーヴァさまはいらっしゃるかしら?」
昨日帽子を渡した、一際上品なご令嬢が私のクラスまでやってきました。
「……はい、私です」
おそるおそる手を上げると、ご令嬢はぱっと表情を明るくした。
「昨日はありがとう。あの帽子は婚約者にいただいた大切なものなのです。貴女のおかげで傷一つなく手元に帰ってきたわ。心から感謝しているわ」
両手を握られて感謝を伝えられた。
「恐れ多いです」
「私、公爵家のヒルデガルドよ。この恩は決して忘れないわ」
ヒルデガルドさまの公爵家の名前に聞き覚えがあった。子爵領で水害があった時に、援助をしてくれた家だ。
「こちらこそ、水害の時に助けていただきましてありがとうございます」
礼を言うと、ヒルデガルドさまは、あら?という顔になって、ポケットからハンカチを取り出した。
見覚えのあるレースのハンカチ。これ、レース職人がさんねえさまが提供した道具で作った作品の一つだ!これが作られてからもう7年は経つ。持ち歩いているにしては状態がきれいだ。よほど丁寧に扱ってくださっているのだろう。
「お使いいただいているのですか。嬉しいです」
「お母さまがいただいたものだったのだけれど、私がすごく気に入っていたものだから譲ってくださったのよ」
「ありがとうございます。職人に公爵令嬢さまが使ってくださっていると伝えてもよろしいですか?」
「もちろんよ。このハンカチをつくった職人は今も作品を作っているかしら?新作があるなら見てみたいわ」
「姉の嫁いだ侯爵家のブティックで取り扱っています」
店の名前を告げれば、ああ、あそこね、今度聞いてみましょう。と言った。さすが公爵家、高級ブティックの顧客らしい。
ヒルデガルドさまは、なにか困ったことがあったら私におっしゃいね、と言ってくれた。
おそれおおいけれど、ありがたく言葉を受け取っておく。
私はヒルデガルドさまの登場でそちらばかりに気を取られて気が付いていなかったけれど、ヒルデガルドさまの取り巻きの令嬢はローリに声をかけて、貴女が持っていた日傘、どこで手に入れられるのかしら、と聞いてきたらしい。ローリは嬉々として自分の商会の名前を挙げたそうだ。
「エーヴァありがとう。貴女のおかげで高位貴族のご令嬢たちが日傘に興味を持ってくださったわ」
「どういたしまして?」
木に登ったことについて誰かに何か言われるのではと戦々恐々していたけれど、誰も何も言わなかった。それどころか感謝されたり、つながりができたりした。うーん、これは怪我の功名というやつだろうか。誰も怪我なんかしてないけれど。




