10 子爵家が貧乏な理由
いちねえさまに聞いたことがある。
なんで、領民にいろいろ配っていて、自分たちの贅沢に使わないのかって。
「エーヴァ、領主たちだけが贅沢していたら、領民はどう思うかしら?」
「怒る?」
「そう。すごく怒るとどうなると思う?」
「うーん、ほかの領に引越ししちゃう?」
「それもあるわ。そうなると領民が少なくなるから税収が少なくなってしまうわね」
「お金がないのは困るね」
「そうよ。それに、怖ーい話があってね」
「こわーいはなし」
「私が読んだお話でね、すっごく悪い領主が自分だけ贅沢して、領民たちからたっぷり税金を取っていたの」
「ひどいねー」
「そう。そのひどい領主はすごーく恨まれてしまって、屋敷から使用人が出て行ってしまって、領主と、奥さんだけになってしまって、すごく困ったそうよ」
「……自分たちで家のことをすればいいんじゃない?」
「普通の貴族はメイドたちに家のことをさせるから、家のことのやり方がわからないのよ」
「そうか、うちは普通じゃなかったっけ」
「そうよ。それで、家の中は汚くなって足の踏み場もなくなってしまった。最後には傷んでいる食べ物を食べて、二人とも苦しんで死んでしまったそうよ」
「あーあ」
私はおじいとおばあに鍛えられたから、家のことができるし、食べられないものは見分けられるけど、普通の貴族って本当に何もできないんだね。
「このお話、貴女にに話したの初めてだったかしら。貴族たちの間では語り継がれているお話なんだけれど」
「たぶん初めて聞いたかな」
「そうなのね。まあ、こういう話があるってことで、領民に無理な要求をしてはいけないっていうことね」
「わかった」
「貴女、おじいについて行って領内のいろいろなところに行ったでしょう?仲良くしている人もいるみたいだし。もしお父さまがすっごく悪い領主だったら、領民は領主に怒って、領主の家族とも仲良くしてくれないでしょうね。だから、領民にとっていい領主でいるのは、領主にとってもいいことなの」
「難しいけど、なんとなくわかった感じがする」まじめな顔をして頷いた。
「なんとなくわかれば十分よ」いちねえさまはにっこりと笑った。
いちねえさまと領地でゆっくり話をしたのはこれが最後だった。
ねえさまはあっという間に婚約して、結婚して、侯爵家に引っ越していった。
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「侯爵家から援助金を頂いた!これだけあれば壊れた橋を壊れないような丈夫な橋に作り替えられる!」
いちねえさまが結婚してから、お父さまはウキウキしている。いちねえさまの結婚した侯爵さまが、子爵領のためにお金をたくさん出してくれたんだって。
「お父さま。私、領内にレース工房を立ち上げたいのです」にねえさまが言う。
「レース工房?」
「お父さまもお母さまが買い取ったレースのハンカチを見ましたよね?あれを作れる職人が領内に増えるといいと思いませんか?」
「あれか。お茶会にもっていったら、絶賛されたって言ってたな」
「一人で作ると生産量が増えないけれど、職人を育ててもらえば、作れる人が増えます」
「なるほど。子爵領の産業にしようとしているのか?」
「そうなればいいと思って。作品制作のための工房と、職人が住むための住まいを作ったら、この領主の屋敷の近くに引っ越す、とあのレース職人が約束してくれました。今住んでいるのは川の下流の方で、ここからは少し遠いので、近くで作ってもらった方が運搬にも有利ですし」
「手回しがいいな」
「はい。と言うことで、予算を「レース工房」に回して下さいな」
「金が絡むことだからなぁ。優先順位も考えたいし、少し考えさせてくれ」
「もちろんです」
にねえさまは頭がいい。
最初にお父さまに、レース工房のための建物を建てたい、と言った後で、屋敷の近くにある空き家をきれいにして使うのはどうですか、予算がかなり減らせます。と話を持って行った。最初は大きな要求を突き付けておいて、後からそれより小さな要求をすると、受け入れてもらいやすいらしい。
お父さまは、安くなるならいいぞ!工房は作った方がいいと思っていたからな!と二つ返事で了承した。
にねえさまは、最初から空き家を使うつもりだったんだって。頭のいい人ってすごーい。
私も賢くなりたいけれど、おばあが認定してくれるスキルに賢そうなやつあったっけ、と木札を見返してみたけれど、天気読みと相場の把握くらいかな。
にねえさまの頭の良さをスキルにするなら?とおばあに聞いたら、そうだねぇ、「交渉術」かな。という返事が返ってきた。
うーん、私はそのスキルはゲットできなさそうだなぁ。
レベル1:狩り、解体。
レベル2:山歩き、木工細工、竹細工、刃物の扱い、山の収穫、相場の把握、おもてなし。
レベル3:家畜の管理、木登り、天気読み。
レベル4:乗馬。




