遠足の前だって寝れるんならそれが良い マジで
「これより実地訓練を行う!! 三日間の合間は鎮護府の先輩剣衛に同道させて貰い経験を積め!! 必ず生きて帰るように!!」
一人一台の討鵺38式二輪車。鞘を吊るした腰の反対側に無線機を下げた訓練兵達を前に教師が声を張った。訓練兵達は敬礼を返し駅へ向かった。
そして討鬼13式装甲蒸気機関車DD71(装甲撤去済み)に連結された貨車にバイクを乗せ自身も客車に乗っていく。
13式装甲蒸気機関車DD71は走り装置の付いた四軸の台車が連なるマレー式蒸気機関車に装甲を加えた物だ。基本的には装甲列車と列車砲を前後に連結し外曲輪外周を周り住民の壁となる。
「旧型か……。でも強そうだな」
小乃字小三治が客車の席に座りながら言った。三階菱三蔵が意外そうに。
「小三治は蒸気機関車に詳しいんだね」
「三蔵。俺は外層の出だぞ? これがなきゃ何回死んでたかわからねぇよ。
まぁ俺が世話になったのは討鬼15式装甲蒸気機関車DD72。今乗ってる奴の改良版だけどな。
何がどう改良されてるかは知らねーけどコイツの後輩が引っ張って来た大砲が妖の気を引いてくれたおかげで生き残ったんだ」
「大丈夫だったの? それ」
「この通り今ピンピンしてんだろ。外層じゃ日常茶飯事だしな」
車窓が流れて行き洋館や屋敷が連なる中央からどんどん洋館は消え家は小さくなって行き作りも雑になっていく。
それは世成の知識不足から時代を逆行する様で大正から明治、明治から慶応へとタイムスリップするかの様な錯覚を覚えた。
とうとう最後は線路を中心とした長屋と言うか木製のバラックハウスと言うか迷う様な家家が密集する光景が広がる。
「鎮護府は違ぇな。ちゃんと屋根のある建物が残ってやがる。良い事だぜ」
だが小乃字小三治はその光景を羨ましそうに眺めていた。
それから少しして笹竜胆黎明が車窓をふと見て。
「着いたみたいだ」
操車場。と言うものがある。某喋る蒸気機関車達の話などを見た事があれば何となく想像しやすいだろうが、貨車や客車が置かれ蒸気機関車達がそれらを入れ替える場所だ。その端に駅のホームと軍事拠点が建っている。それは外層周りに十二ヶ所ある前線基地。
主に妖の監視と偵察を主な主任務とし、妖がくれば防衛拠点となり、平時は集めた資材などの集積地となる。
「鎮護府麾下第二基地司令の轡だ」
軍服に准将の階級章を付けた男が言う。眼帯と右義手に左義足の傷まみれ眼帯と言う出立ち。見た目からして威圧感が尋常ではない。
「諸君等を歓迎する。私の様にならぬ様に確りと学んでいってくれ。幸い此処は衛戍府とは違い強力な妖はほぼ居ない。
不覚を取り鎮護府に退がらざるおえなくなった身だがウンガイキョウの討伐の経験も交えて君達の疑問にも答えられるだろう。
これで話すのは好きな方だ。是非とも遠慮なく頼ってくれ」
と、妙に愛嬌のある笑顔で迎えてくれた。
さて剣衛には警邏偵察小隊編成という基本的な編成と言うものがある。内役としては。
剣刀士三班15名の剣刀士分隊。
牽引トラック1台、牽引砲1門、砲兵12名の砲兵分隊。
輸送トラック1台、工兵6名の工兵班と、補給トラック1台、整備士6名の整備班を合わせた補給分隊。
以上、3分隊39名を定数とする。
これが基地周辺の偵察と物資の収集、遺棄品の回収などを行う最も最少とされ、故に機動力に優れた編成だ。
世成達訓練兵はこの剣刀士分隊に所属して剣衛訓練兵分隊として活動する。また砲兵と補給の両部隊にも新兵が加わり人手が増えるので慣らしを兼ねた遠方での物資遺棄品回収が今回の任務であった。
この訓練兵分隊は訓練兵20名前後で編成され実質的指揮官として剣刀士1名が着く。
また砲兵や補給の訓練兵も同様で訓練兵に砲長1名、給長1名が付く形。
早い話が素人集めて戦場に慣らすってだけであり、逃すのにも纏まってた方が楽だから纏めたって事だ。
「で、今回は俺が班長やんのね。責任おっも」
「まぁそう気にする事はありません。唯の経験積みと外に慣れるだけで大した事はではないので。訓練兵なのですから妖が出ても逃げれば良いのですよ」
「……うお!」
世成はビクッゥってなりながら穏やかな声の方へ向き直り敬礼する。他の班長役も慌てて続いた。全く気配を感じなかったのである。
「雁金軍曹殿!! 訓練兵班長4名揃いました!!」
位置的に一番前に居た為に世成が代表者の様になってしまった。
「驚かせちゃったみたいでごめんなさいね」
対して入室した人物は少々申し訳なさそうに笑う。剣刀士としては良業物の階級章。補佐役を務めるのは女性である。
非常に穏やかそうで軍曹と言う印象からは程遠い。雰囲気などは完全に美人な同級生の美人なかーちゃんって感じであり何なら品があった。
「今日の内に作戦の確認、バイクの確認、装備の確認を忘れない事。特に通信機の確認は確りするのよ? これは分隊長でなくとも必要な事だし班員に通達すべき事だからね。
さて、明日は48キロ先の戦闘跡にて遺棄した装備と物資および遺体の回収を行うわ。作戦概要も編成も配った資料通りよ。残ってい他場合になるけど遺体の収容は心にくるわ。皆んな気を強く持ってね。
貴方達は現地に行ったら見張と回収作業に分かれてもらうわ。午前と午後で分けるから決めておくように。質問は?」
班長役の訓練兵の一人が手を挙げた。背筋を伸ばし手も伸ばす。長く黒い艶髪にメガネをかけた女委員長的な感じの訓練兵だ。
だいぶ目付きが鋭く小柄だが非常にスタイルがいい。あと勉強できそう。綺麗系。
世成的には笹竜胆黎明的なギャップが無い事を祈るばかりだ。あったとしたら班長役を任せられる事はないが。
「何かしら杏葉班長」
「雁金分隊長。道中で妖の討伐などは行うのでしょうか。肥大化程度の妖は出ると聞きますが」
「状況によるけど現場としては経験させるべきだと考えているわ。でも異形化の妖がいる可能性もあるから本当に出来ればの話ね。
こう言うと気が抜けるかもしれないけど油断をすると死ぬわよ」
「……はい。肝に銘じます」
杏葉が言葉通り肝を冷やし肝に銘じたように答えるが世成 や他のメンバーも思わず唾を飲み込んだ。
当然の事とは言えこれから下手をすれば死ぬと言う事実を余りにも淡々と当然の事の様に述べられたのである。それは実体験からくる説得力により純然と理解させるに足る言葉であり薬となった。
その表情を見て引き締めは十二分と判断し雁金は作戦概要の再確認。また実戦に対応する為の指導を始める。
訓練兵達は明日に備えて早めに解散させられた。初の実戦を前に世成は普通に爆睡。同室の三人が引くくらい凄い寝てた。




