徽章
「良くやったな飛鶴少尉。無事で何よりだぜ」
ベットから起き上がり少しして現れた六鱗大尉が言った。世成は状況が分からず。
「有難うございます? えっと……此処は?」
「第二衛戍符の医務室だ」
「ああ……手間を取らせてしまいました。作戦はどうなりましたか」
「ヌッペラポフおよびジンメン二匹の滅妖は完遂だ。それと飛鶴少尉は今作戦においてジンメンの個人討滅確実とする。戦力階級章はあとで渡すが大業物だぜ」
「あ、有難う御座います」
「で、だ。アレどうやって倒した? おそらくだが肆字解放しただろ」
「はい。まさに」
「じゃあ後で解放報告書と実技試験。まぁ能力的に出来ない場合もあるが受けてくれ」
「は!」
「よし! で、体調の方は?」
「問題ありません」
「それじゃあ飛行船に戻るぞ」
「はい」
その数日。
「んじゃあ始めるぞー」
六鱗大尉と小隊長達、更には連隊長月輪少将と副官三星大佐。彼等に見守られた世成は六鱗大尉の言葉に頷き刀を納刀した。そして親指で唾を押し上げハバキを上げ戻す。
動作としては金打。それによって凛と音が響き渡る。それは波紋が広がる様に。
「凛宇創世」
世成の言葉に切先から外側が散っていく刀。黒い花弁の様に流れただ白い刀だけがその手に残る。
その陰影もない刀の形をした白い塊を右から左へ。その切先を追う様に地面からは草花が伸びて咲く。そして左から右へ戻せば草花が枯れて元通り。
上へ一振り。突如として間欠泉の様に水が吹き上がる。そして逆に振り下ろす。すると晴天に雷が落ちて白い刀に吸われて消えた。どころか次は逆に雷が上り間欠泉が落ちる。
「こん、なもんか……納刀」
世成は額の大粒の汗を拭い。
「以上です」
「……うわぁ」
小隊長の誰かが思いっきり引いた顔で思わず漏らし、六鱗大尉が驚きと呆れを含んだ顔で。
「大体の事は顕現させられる、か。何でも有りだな」
「ただ、だからこそ戦闘中に思考を削る必要がありますね。単純な能力発動を繰り返し反射的な対応が出来る特訓をすべきだが……。いやはや」
比較的若く長躯で片眼鏡の三星大佐が言いながら手帳に何かを書き記す。
「飛鶴君」
ズ……と。巨大で歴戦の熊の様な男が前に。静かだが響く地鳴の様な声。その声の主人たる連隊長月輪少将へ半ば反射的に世成は敬礼。
「は!」
「現時刻をもって君は中尉だ。また大業物の階級章も合わせて授与する。受け取ってくれ」
「感謝いたします!!」
二つの階級章を受け取った世成は何やかんやで休暇を貰い、その数日後に快癒祝い名目でカフェー・オッティモに集まる事となった。
小乃字小三治がコップを掲げる。リナルド料理の並んだ卓の周りに集う皆もコップを掴む。
「じゃぁ端的にだ。世成の回復と昇進。それと黎明の准尉就任を祝って、乾杯!」
七つのコップも続けて掲げられて「乾杯!」と唱和。レアに出来ないタイプの合成肉に小麦粉を塗しソテーした現状できる最良のスカロッピーナ。これをメインにしてタリアテッレのボロネーゼパスタや各種ビザを頬張る。
「二人とも肆字解放はどんな能力だった?」
一通り賞味した三階菱三蔵が問う。笹竜胆黎明が眼鏡をキラリと輝かせてドヤ顔でクイってして。
「僕の肆字は鉄刀鉄備」
眼鏡クイ。
「何本でも鉄の刀を生み出し操ることが出来る能力さ。刀いっぱいだ。いいだろ」
何か御望み通りのクリスマスプレゼント貰った3歳児みてーな笹竜胆黎明に世成は思わず好好爺みてぇな顔で。
「よかったね」
「ああ!」
マジすっげぇ嬉しそうに頷いた。
「俺のは凛宇創世。刀を鳴らせば大体出来る。ただ状況を想像しなきゃいけないしやり過ぎるとエグい疲れるけど」
「ンだ? そりゃあ」
コーラと合成アルコールを混ぜた飲料を飲み干した小乃字小三治が測りかねて言った。しかし少し考えてから。
「解放すりゃあ疲労はする。それを態々言うって事は相当だろう。あと、それに大体出来るつっても程度がある。
あー、だから? 何だ? 俺はなにゅをききらかったんあ?」
「酒弱いんだから一気に飲むなよ……」
世成はサイダーで口を潤し。
「行術みたいなことは大概できる。で、威力は行術の比じゃない。今の所は結界系行術型っぽいな」
「て、言う事は遠くから一方的に攻撃できる感じかな?」
青海波乙姫が少し首を傾げながら言えば世成は頷いて。
「たぶんだけど響いた音の範囲が結界になってて、それが事象発生範囲っぽい感じかな。投射って形になるから避けられなければ出来そうかも? 今は直ぐに戦闘ができなくなるくらい疲れるけど」
「外すと拙いね」
「本気で洒落になんない」
仕事の愚痴や近況報告を肴に美食を楽しんでその日は解散となった。
今回の投稿はここまでです。ご覧頂きありがとうございました。暇つぶしにでもなれてれば幸いです。




