現在の生活
ピロン。携帯が新たな通知を知らせる。僕は少し疲れた頭でその通知の内容を予想した。通知は予想通り、同僚からのものだった。「大和、まだ寝てるのか?早く職場に来い。」そのメッセージを読んで、僕はかなり時間が経っていたことに気づいた。いつの間にかニュースはスポーツ特集に変わっていて、時計は遅刻ギリギリを指していた。僕は急いで支度をし、家を飛び出した。家から職場までは自転車で10分程度。ギリギリではあるが普通に行けば間に合うだろう。僕は今、AIを作っている会社に勤めている。世の中に流通している多くのAIはうちの会社が作っている。オフィスに到着すると、「ギリギリだな。俺に感謝しろよ。」とメッセージを送信してきた同僚である武蔵が話しかけてきた。確かに時計はギリギリの時間を指していて、認めたくないが、こいつのメッセージがなければ危なかっただろう。僕は苦笑しつつ自分のデスクに向かった。
「よっ!大和、飯食おうぜ。」パソコンを見つめる僕の背中から、武蔵が声をかける。気づけば時計は短針と長針が重なり午前の終わりを告げている。武蔵に、外が見えるところに行こうと言われたが、朝から急いでいたので僕は昼ご飯を用意していない。僕は近くのコンビニに寄ってから武蔵と合流した。
「お前、まじでそのパン好きだな。」メロンのクリームが包まれたメロンパンを買った僕を見て武蔵は言った。僕はムッとしてそれを無視した。
「AI開発反対!!今の日本は腐ってる。今こそ蒼の麒麟の力が必要な時だ!!」突然外からデモの声が聞こえた。
「またやってんな。なんであんな独裁的指導者っていつも一定の割合で支持されるのかな?」もみじが爆破させられてから、内閣には多くのAIが採用され、その風潮は大企業にも影響を与えた。危惧されていたように、人々はAIに仕事を奪われた。その影響か、AIの開発会社であるうちに毎週のようにデモが押し寄せている。僕たちはいつも通り、デモの叫びをBGM代わりにしてお昼を食べた。
「なぁ大和。こんなメッセージが来たんだが、なんて返せばいいと思う?」昼休みはとっくに終わり、日も傾いてきた頃、武蔵は僕に尋ねた。武蔵のPCには「すみません。ここの部分の調整がどうしても分からなくて、どうすれば良いでしょうか?」というメッセージと、プログラミング中と思われるコードの画像が1枚送られてきていた。
「ここをこうして......あっ、ここもこうした方がいいな。こんなもんじゃない?」
「さすが、大和だな。プログラムのことではお前にかなわない。」
武蔵は笑った。しかし、その表情から彼の感情は読み取れなかった。武蔵はプログラムを組むことに長けていて、交友関係も広い。僕の尊敬する人の一人だ。彼に、こんな質問が来るのはいつものことだ。だが、このプログラムが僕たちをトラブルへ巻き込んでいくのは、このとき、誰も予想していなかった。




