↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/5

10年前の事件

 10年前、突如大規模な通信障害が発生し、全世界の携帯電話が使用不可能になってしまった。人々は連絡手段を失い、会計もできない。世界は混乱に陥った。だが、それはまだこれから起きる事件の序章に過ぎなかった。その日の夕方、多くの人がテレビを見ていた時、蒼の麒麟と名乗る集団が電波ジャックを行った。彼らがテレビで語った内容は至って簡単。今回の通信障害は蒼の麒麟が行った。この世界を変えるために自分たちは立ち上がった。蒼の麒麟は爆弾を所持している。必要とあらば実力行使も仕方がない。1週間以内に次の行動に映る。要求などはまた連絡する。といったものだった。このことはすぐに日本中に広まり、次の日の朝刊の一面を飾った。人々は蒼の麒麟について敏感になり、蒼の麒麟の次の行動に関心を持ち、恐怖した。

 それから1週間。ニュースでも蒼の麒麟について報じられなくなり、何事もなく1週間が過ぎようとした時、「速報です!蒼の麒麟が新たな予告を!」蒼の麒麟の新たなる予告にはこう記されていた。「久しぶりだね。諸君。我々、蒼の麒麟と政府の交渉が決裂したことをここでご報告しよう。政府幹部のお偉いさん達は市民の命より自分達の立場が重要なようだ。何とも言えない。そこで私達は明日から実力行使に出ようと思う。さてと、自分達は関係ないっていつまでも思い込んでいるそこのあなた、そんなわけないだろう?選挙には行っているのか?あなたたちが当選させた政党ではないのか?あなたたちに全く関係ないことはないのではないか?さぁショーの始まりだ!では諸君また会おう。」それから世界は少し変わった。外出を控え、人が集まるようなことはしなくなった。人は結局、最後には誰も信じられないのだ。生活様式の変化の例を挙げるのならば、昔のような初詣は皆しなくなった。代わりに自宅で縁起のいい方向に今年の抱負や願いを心の中で唱え、お雑煮を食べるという節分と正月を一緒にしたようなものがあった。もちろんビデオ通話で会話しながらだ。時速100kmを下回ると爆弾が爆発する。有権者の数を減らし、残ったものを教育する。蒼の麒麟はそうして世界を変える。そのためにも、まずもみじとその乗客には犠牲になってもらう。もちろん政治家たちはそんなことを素直に認めるはずもなかった。爆弾を見つける時間を稼ぐために時速を120kmにおさえて、「お前たちの要求はなんなんだ。」なんて刑事ドラマのようなことを言って、もみじとその乗客の命を救おうと最善を尽くした。だが、9時間後の午後4時、東京駅でタイムリミットを迎えたもみじ220号は運命に従うかのようにゆっくりと減速し時速100kmを切ったその時もみじの車体は爆発し、乗客約800人はその生涯に幕を下ろした。

 「はぁ、十年。もうそんなに経つのか。」かつて自分の名前と電車の名前が一緒で喜んでいた彼女は同じ名前の電車とともにこの世を去った。僕、萩原大和はニュースを見てため息をついた。10年という月日が過ぎてしまったことと、自分が10年前からほとんど進歩していないことに僕は嘆いた。もう彼女は帰って来ない。それは分かっているつもりだ。だが約束がもう果たせないこと。もう二度と会うことがないこと。すべて分かったつもりでいるが、心のどこかではまだあきらめがついていない。本当はどこかで生きているのではないか?実際、この事件には多くの謎があると言われている。だが、僕がそんなことを考えてこの10年を無駄にしたのは事実だ。僕はまた大きくため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。