10年後の現在
時間の流れは実に残酷だ。もうあれから10年になるらしい。昨日テレビのニュースキャスターがそう伝えていた。鉄道の爆発事件。まるで映画や小説のような話が当時起きていた。どの番組も放送を打ち切られそのニュースをする。そして彼女はその犠牲者の一人になっていた。あれから10年。それは人々にあの記憶を忘れさせるには十分すぎる長さだった。だが、10年間僕は一瞬たりともあの事件を忘れたことはない。僕にはあの事件はまるで昨日起きたかのように鮮明に今も僕の心を常に締め付けていた。「約束だよ!」そんな声が頭の中を駆け巡る。僕はハッとして目が覚めた。「なんだ、夢か、」目覚めが悪い。朝から不快な気分になってしまった。今日は朝ごはんを軽く済ませようと思いながらリビングにでた。テレビをつけると名前も知らないニュースキャスターが「もうあの事件から10年になります。」なんて言っていた。10年。それは世界が変わるには十分すぎる時間だった。AIは人により近い存在になり、今では国会議員の補佐にAIが用いられるほどだ。毎朝、人は起きたらまずAIを開いて、歩く道も食べるご飯までAIに決めてもらい、AIなしでは生きられなくなってしまった。会話の内容も教えてくれるから人は自分で考えずに人と会話する。人間関係が壊れることはない。だが、他人と腹を割って話す機会なんてもう生まれない。人は皆、人の温かさを覚えていないのではないか。




