第九十六話 秘密基地
【注意事項】
本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。
読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。
心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。
※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。
僕は笑みが静かに消した。
「家族が、いつも幸せだったわけではありません」
部屋の空気が重くなる。
「春になると、僕はひどい花粉症に苦しんでいました」
「薬がなければ、目は真っ赤になり、鼻水も止まりません」
ある日、
いつもの場所に置いてあった薬が消えていました。
「母さん、薬知らない?」
母は料理をしながら、何気なく答えた。
「もう大丈夫だから隠したわ」
「飲み過ぎても身体によくないもの」
父も新聞をめくりながら口を開く。
「少しくらい我慢しろ」
「薬ばかりに頼るな」
今になって思えば、
二人に悪気はなかったのでしょう。
でも、あの頃の僕には理解できませんでした。
苦しいのは僕なのに。
どうして本人じゃない人が、
「もう大丈夫」
なんて決められるんだろう、と。
その日の夕方。
紫紅兄さんが静かに声をかけました。
「辰緑」
「少し付き合え」
四人で向かったのは、町外れの緑林自然公園でした。
古びた滑り台。
色褪せた鉄棒。
草の匂いが風に乗る。
そして、公園の奥には少し傾いたブランコ。
風が吹くたび、
キィ……キィ……
と古い鎖が静かに鳴っていました。
「ここ、知ってるか?」
紅石兄さんが尋ねた。
僕は首を振りました。
「俺たちだけの秘密基地だ」
紅石兄さんが照れくさそうに笑います。
「誰にも邪魔されねぇ」
「だから、何でも話せる。」
蒼月姉さんはブランコへ腰掛け、夕焼けに染まる空を見上げました。
「兄弟げんかした時」
「家では話せないことがある時」
「一人になりたい。でも、一人にはなりたくない時」
「私たちは、いつもここへ来てたの」
風が木々を揺らし、葉擦れの音が静かに響く。
「ここへ来るとね」
「自然が全部、受け止めてくれる気がするの」
姉さんは振り返り、いたずらっぽく笑った。
「だから……パパとママには内緒ね」
四人で笑い合った。
夕焼けが、公園を赤く染めていた。
あの頃の僕は信じていました。
この場所も。
この時間も。
この家族も。
ずっと、変わらないものだと。
――あの日が来るまでは。
いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。
重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。
彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。
一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。
次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
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次回更新日:8月16日(土)2時から、日付変わるまで二時間おきに投稿予定。(社会情勢によって変動。)
(6時,8時,10時,12時,14時,16時,18時,20時,22時)
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