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自殺請負人ー依頼は、命の終わらせ方ー  作者: マイライト
幻想に縋る者

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第九十五話 あの日の家族

【注意事項】

本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。

読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。

心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。

※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。

「僕たちは、緑林町の外れで生まれ育ちました」

辰緑は静かに語り始めた。

「緑林町は、赤林町とは山を挟んで反対側にある町です。治安は、お世辞にも良いとは言えませんでした」

懐かしむように目を細める。

「兄弟は四人でした」

「長男の紫紅しこう兄さんは、誰よりも責任感が強い人でした。家族を守るためなら、自分が傷つくことも厭わない」

「長女の蒼月そうげつ姉さんは、優しくて、泣いている人を見ると放っておけない人でした」

そして、辰緑はゆっくりとあかしへ視線を向ける。

「次男――紅石兄さん」

「それが、今の兄さんです」

兄さんは何も言わず、静かに視線を逸らした。

「派手好きで、お祭りや面白そうなことがあれば真っ先に飛び込む。父さんによく似た人でした」

僕は少しだけ微笑んだ。

「父さんと母さんは共働きで、家にいる時間はあまりありませんでした」

「だから僕を育ててくれたのは、兄さんたちだったんです」

部屋の空気が少しだけ柔らかくなる。

「僕がまだ小学生だった頃の話です」

「兄さんたちと一緒に、お年玉を何年も貯めていました」

「ようやく、ずっと欲しかった最新のゲームが買える日でした」

店を出た四人は、箱を抱えながら笑い合っていた。

そんな時でした。

「今日は徹夜だな」

「兄貴、負けても泣くなよ?」

「誰が泣くか」

そんな他愛もない会話が、ただ楽しかった。

しかし、細い路地へ入った瞬間だった。

「……おい、ガキ」

数人の男たちが、行く手を塞ぐ。

「持ってる金、全部置いてけ」

一人の少女が男たちに腕を掴まれていた。

年は僕と同じくらいだった。

泣くのを必死にこらえていた。

その子は言う。

「逃げて!」

僕は足がすくみ、何も言えなかった。

すると紫紅兄さんが、一歩前へ出る。

「俺たちが奴らの注意をひく。だから辰緑、その子を連れて逃げろ」

その一言だけだった。

紅石兄さんは笑いながら拳を鳴らす。

「兄貴一人じゃ格好つかねぇだろ」

「派手にいこうぜ」

紫紅兄さんは呆れたように笑った。

「本当に、お前は……」

次の瞬間、男たちが一斉に襲い掛かった。

鈍い音が響く。

壁へ身体が叩きつけられる音。

怒鳴り声。

拳がぶつかる音。

蒼月姉さんは僕を強く叩いた。

「大丈夫」

「警察は呼んだから」

そう言って笑っていた。

でも、その手は小さく震えていた。

僕は近くの藪の中に少女と隠れた。少女は震えていたが、

「大丈夫。君は必ず守るから」とは言ったものの、

やがて遠くからサイレンが聞こえてきて、

男たちは舌打ちを残し、逃げ去ったことを確認すると

僕たちは安心からか意識を失ってしまった。

事件が終わった頃には、

両親から少女は祖母に手を引かれて帰っていったことを伝えられた。

紫紅兄さんは腕を骨折し、

紅石兄さんは肋骨にひびが入り、

蒼月姉さんも全身あざだらけだった。

それでも三人は笑っていた。

「ゲームは逃げねぇ」

紅石兄さんが箱を抱え直す。

「命があるなら、また買いに行ける」

その笑顔が、今でも忘れられません。

辰緑は小さく息を吐いた。

「あの日からです」

「兄さんたちは、僕の憧れになりました」

少しだけ表情が和らぐ。

「蒼月姉さんは、本当に優しい人でした」

「当時、世界中で流行っていたゲーム『パチモン』で、誰もが欲しがる限定キャラクターを持っていたんです」

「でも、一度も使わず、僕にくれました」

『辰緑の方が喜ぶでしょ?』

姉さんは、そう言って笑っていました。

その笑顔が、僕は大好きでした。

しかし――

辰緑の笑みが静かに消える。

「家族が、いつも幸せだったわけではありません」

いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。


重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。


彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。


一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。


次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。


次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。


―――――――――――――――――――――――――――――――――

次回更新日:8月16日(土)2時から、日付を変わるまで二時間おきに投稿予定。(社会情勢によって変動。)

(4時,6時,8時,10時,12時,14時,16時,18時,20時,22時)

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