第百十九話 帰り道の少年
【注意事項】
本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。
読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。
心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。
※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。
少年を見る。
「自分で決めたことなら、その分の結果も自分に返ってくる。それだけです」
少年は黙り込んだ。
「君は今、学校に行かないことが悪いんじゃないかって迷っている」
「。。。うん」
「でも、どうして迷えると思います?」
「え?」
「それが良いことなのか、悪いことなのか、自分で考えようとしているからでしょう」
「。。。」
「必要か、必要じゃないかを判断するためにも、知識は必要なんじゃないですか?」
少年は黙って聞いている。
「必要ないと判断するのは、後からでもできます」
「でも――」
「一度手放したものが、必要になった時に、すぐ取り戻せるとは限らない」
私は少年を見る。
「だから、今のうちに持っておく」
「後悔しないために」
「。。。それだけ?」
「それだけです」
少年は少し考えた。
「でも。。。」
「うん?」
「知識があったって、できないものはできないよ」
「そうですね」
「テストだって、勉強したのに点数取れないし」
「それは、勉強したことが無駄だったってことですか?」
「。。。わからない」
「なら、まだ答えは出てないでしょう」
「え?」
「一回やって、できなかった」
私は指を一本立てる。
「それだけです」
「次にできるかもしれない」
もう一本。
「できないかもしれない」
さらに一本。
「でも、やらなければ、できるようにはならない」
少年は黙った。
「勉強って、案外そういうものですよ」
しばらくして、少年が口を開いた。
「。。。お兄さん」
「はい?」
「勉強って、どうしたらできるようになる?」
「心得は三つあります」
「三つ?」
「一つ目。予習と復習をする」
「そんなのやってるよ」
「二つ目は?」
「楽しむ」
「楽しむ?」
「ふざけるって意味じゃありませんよ」
私は笑った。
「自分一人で抱え込まず、友達や先生も巻き込んで楽しむんです」
少年は少し笑った。
「三つ目は?」
「わからないことを、わからないと言う」
「。。。それ、恥ずかしくない?」
「むしろ逆です」
私は答えた。
「わからないことを認められる人は、強いですよ」
「どうして?」
「そこから質問できるから」
「質問すると?」
「わかるようになる」
「……」
「そして、いつかテストが恋しくなる」
「そんな、馬鹿な」
「いずれ、わかりますよ」
少年が小さく笑った。
さっきまでの険しい顔が、少しだけ和らいでいる。
「さて」
私は立ち上がった。
「そろそろ戻りましょう」
「どこに?」
「君が帰りたいところへ」
いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。
重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。
彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。
一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。
次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
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次回更新日:8月31日 18時,22時◇




