第百十七話 居場所を求めて
【注意事項】
本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。
読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。
心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。
※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。
二人で腰を下ろす。
「これ、食べるか?」
差し出したのは、野菜スティックだった。
「さっき買ってきたんです」
私はきゅうりスティックを一本取り出す。
少年は人参スティックを手に取った。
「。。。美味しいの? これ」
「こうするんです」
私はきゅうりを口に咥えた。
「こうして、煙草みたいに咥えて、ふかす真似をする」
「。。。は?」
「気分転換になるんですよ」
「ならねえだろ」
「私の知人が教えてくれました」
「誰だよ、その変なこと教えた奴」
「悪い奴ではないが、悪ノリが好きな奴ですよ」
「いや、絶対変な奴だろ」
少年は人参スティックを咥えた。
「。。。こう?」
「そうです」
「。。。」
「どうです?」
「何も変わんねえ」
「まだ、はやいか」
「お前、ガキだな」
「そうかもね」
「そうなの?」
思わず二人で笑った。
少年は人参を口から外す。
「。。。でも」
「はい?」
「こういうの、悪くないな」
「でしょう?」
「野菜は嫌いだけど」
「そこは好きになってくださいよ」
「無理」
「で、どうした?」
少年は語る。
「勉強は難しいし、やる意味もわからない。一年生の時の担任としか馬が合わない。うちの学校、始業式前に担任が発表されるんだ。去年、その先生の担当教科の時、僕が持ち物を聞く係だったんだ」
「その先生、急に怒るんだ」
「急に?」
「こっちは普通に話してるだけなのに、言葉の選び方が悪いと怒られる。だから、俺はずっと、その先生が怒らないように話してた、でも、周りからは、俺が先生と仲良いと思われてた」
「……なるほど」
「うん。嫌われないようにしてただけ」
「去年の秋くらいから、本格的に勉強についていけなくなって、やる意味も分からなくなって、不登校になった」
「分からないことが増えていくほど、教室にいる意味も分からなくなっていった。来年からは担任とも馬が合わなくなる、だから。。。学校に行けなくなった」
「不登校になったばかりの頃は、学校に行かなくていいことが楽しかった。いつもと違う、非日常みたいな感じがしてさ」
「でも、しばらくすると、学校に行ってるみんなが羨ましくなった」
「この気持ちを変えようと思って、色々やってみた。でも……結局、何をしても晴れなかった」
「もう。。。どうしたらいいのか、わからない」
「周りの人は何て言ってるんですか?」
「誰も信用できなくて、話せてない」
「前に親が俺の携帯番号を勝手に担任に教えたり、俺の写真を勝手にネットにアップしたり、関係ないと言われれば、そうかもしれないけど、どうしても許せなくて」
「そうですか」
「私も似たような境遇だったので、気持ちはわかりますよ」
「担任と馬が合わないと、学校に行きたくなくなることもありますから」
「それに。。。前の担任の授業になると、嫌な記憶が甦るんですよね」
「方法としては、二つくらいしかないと思います」
「一つは、割り切ること。もう一つは、教頭に相談すること」
「でも、実質、割り切るしかないんです」
「大抵は動くことはない。その先生が余程の問題を起こさない限りはね」
「。。。そっか、お兄さんは似たような境遇だと言ってたけど、そういう時、どうしてた?」
いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。
重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。
彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。
一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。
次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
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次回更新日:8月31日 18時◀︎,22時◇




