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自殺請負人ー依頼は、命の終わらせ方ー  作者: マイライト
幻想に縋る者

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第百十四話 普通の朝

【注意事項】

本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。

読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。

心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。


※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。

帰路の途上。

「なあ、ダンナ、この別れ方でよかったのかな?」

請負人は続ける。

「さあ、これは、彼らの問題です。部外者が口出しするほど、野暮なことはないでしょう」


「まあ、それもそうか」


夜景を観ながらきいた。

「なあ、ダンナ、ダンナは殺してやりたくなるほど憎んでる相手はいないのか?」


「いますよ。数え切れないほど。いないって言う方がいらっしゃるのであれば、それほどおめでたいことはないでしょう」

請負人は続ける。

「その人物たちを忘れられれば、一番幸せですけどね、仕返しをしたいのなら自分が幸せで埋まることです。リスキーですが、一時的な幸福感を得たいのなら、彼らのような復讐代行屋というものがありますから利用するのもありでしょう。相応の覚悟が必要ですが」

「復讐代行屋?」

「少し調べれば、貴方でもすぐに手が届きますよ。そこまでの執着があるのなら、ぜひ。無論、精査は必要ですが」

「フッ、気が向いたら調べてみるよ」

「着いたら起こしてくれ」

「はい」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー翌朝ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私は気がつくと、ベッドにいた。そして階段を下った。

私の名前は喜多川音々(きたがわ ねね)、余命宣告を受けた17歳。


良い匂いがする方向へ無意識に体が動いた。

「おはようございます。えーっと貴方は?」



「おはようございます。ここで、請負人のお手伝いをしている石川と申します」


「紅石さんと辰緑さんは?」


「紅石は時機に起きると思います。ダンナが一晩中、みてたらしいので」


「辰緑さんは、昨晩自首しました、私たちが目を離している隙に交番に向かいました」


「交番に向かったんですね。。。よかった」


顔を赤らめて私は言った。

「彼には先がある。私のことなんてはやく忘れて欲しいから」

「そうか。なら、良かったです」

そして、人物はテレビをつけた。

「今日は朝からどこの局もこのニュースで持ちきりなんです」

石川さんは達観した雰囲気で言う。

「朝食作ってみたんだけど食べますか?」

「はい」

「味は、どうだ?」

「少し塩が濃い」

「やっぱり?」


「でも、味が合って嫌いじゃない、最後の朝食にしては満足できます」


「ごちそうさまでした。紅石さんの部屋はどこです?」

「案内します、色々あるので、この屋敷、こっちです」


少しだけ沈黙が流れる。

窓の外では、小鳥の鳴き声が聞こえていた。

私はふと笑った。

「静かですね」

「そうですね」

「こんな朝もあるんですね」

「毎日あります」

「そうでしたっけ」

「もしかして、寝坊ばっかりしてるんじゃないですか?」

「失礼ですね」

私は思わず笑った。

ほんの数秒だった。

それだけなのに、不思議と心が軽くなった。

私は部屋を見回す。


私は笑顔で答えた。

「はい、私が死ぬ日です。後悔はありません」


「お金はこれで」

小切手を見せた。

「100万あります。祖母がもしもの時のために、残してくれたんです」

「もうちょっとあったんですけど、治療費で消えてしまって、これが最後の小切手です」

「これで……お願いできますか?」

「はい」

私は言う

「綺麗に、いきたいんです」

石川さんは続けて言う。

「綺麗に、いきたいか。。。分かりますよ気持ちは」

石川さんは続ける。

「じゃあ、私は朝食の片付けをしてきますから」

「何かあったら呼んでください」

「はい」

扉が閉まる音がした。

ポツリポツリと自然に言葉が出た。

「。。。怖いな、でも、これは私が望んだこと」

「……もし叶うなら、普通に生きたかったな。普通に学校へ行って、アルバイトをして……考えたところで」

それ以上、言葉は続かなかった。


少しして、石川さんは戻ってきた。

コンコン

「どうぞ」

「どうかしたのか?目赤いけど」

「花粉症で少し目をこすりすぎただけです」

「……そうですか」

「私、別室にいるから必要なら呼んでください」

「もう少しだけ、居てください、花粉症が落ち着くまでは」

「わかりました。私も、まだ病み上がりじゃないから、力になれるかはわからないですけど」

「ありがとうございます」


私は少し考えたあと、静かに笑った。

「……ただ、元気なだけでも十分なんだと思う」

石川さんは続ける。

「確かに、元気になるってのは、生きることよりも難しいと思います」


「え?」


「だって、人って欲張りですから。人ってさ、誰かの役に立ちたいとか、認められたいとか、そういうのを求めてしまうんだと思います」


「……そうですね」


沈黙が流れる。


私は窓の外を眺めながら、小さく呟いた。

「私、病気になってから、ずっと『治ったら何がしたい?』って聞かれてきたんです」

「……」

「最初は色々答えてました。旅行に行きたいとか、遊園地に行きたいとか」

少し笑う。

「でも、だんだん分からなくなっちゃって」


「普通って、幸せって、生きるって、何だったんでしょうね」

「そりゃ、野暮な質問だと思います。」

少し笑って、

「だって、それを決められるのは、貴方だけです」

私は静かに頷いた。

「そうですね」


その時だった。

部屋の外から、静かな声が聞こえた。

「では、いきましょうか」

「漣さん、紅石を頼みます」

請負人だった。

私は立ち上がった。

深く頭を下げる。

「ありがとうございました」

「ああ」

「元気で……って言うのも変か」

私は笑う。

「いいえ」

「十分です」

笑って別れた。


そして、私は請負人の後ろを歩き始めた。

いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。


重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。


彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。


一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。


次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。


次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。


次回更新日:8月31日 10時,14時へへ,18時◀︎,22時◇(社会情勢によって変動。)

25/25


次の話は、昨年同様、夏季休暇終了記念の話。

あの子もちょこっと出るかも。

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