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自殺請負人ー依頼は、命の終わらせ方ー  作者: マイライト
幻想に縋る者

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第百十話 誰かの願い

【注意事項】

本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。

読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。

心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。


※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。

請負人は静かに答えた。

「私の言葉ではありません」

「依頼人は、自分が助かることを望みませんでした」

「最後まで願ったのは――」

「貴方が、生きることです」

「だからこそ、貴方を止めに来ました」

辰緑の表情が止まる。

「……誰だ」

請負人は答えない。

数秒の沈黙。

「その人は」

「最後まで、貴方を信じていました」

「そして」

「貴方が笑って生きる未来を望みました」




ーーーーーーーーーーーーーーーー数日前ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


請負人「私は自殺請負人、貴方ですか?私を呼んだのは?」


??「・・・まさか、本当にいるなんて」


請負人「全く苦労しましたよ、こんな山奥でセキュリティの面でも貴方の身辺調査でもね。で、どのような死因をご希望で?」


??「私は余命あと一ヶ月なんです。そして、病気でどんどん顔色や体が苦しくなっていくのがわかるんです。これ以上は、みてられません。

だから、その前に いきたくて」


請負人「わかりました。エンディングノートや遺言書などは、もう準備してありますか?」


??「はい、とっくに準備できています」


請負人「わかりました。では、お金を」


??「え、お金いるんですか?」


請負人「はい」


請負人「では、先に最後の願いを聞きましょう。ありますか?私は死への門出祝いとして、何か一つ願いを叶えるんですけど、ありますか?」


??「・・・その願いは、どのくらいまで?」


請負人「え?」


??「……例えば、人一人の人生を変えることくらいなら、できますか?」


??「じゃあ、皇 辰緑を現実に戻して欲しい。彼の優しさなら、私が一番わかってる。でも、その優しさが違う方向に行っている。彼は兄さんたちの幻影に囚われているだけだと思う。振り上げた拳を自分でもどうすれば良いかわからなくなっているだけだと思う」


請負人「ご自分で伝えられてはいかがですか?」


??「彼に、できるだけこれ以上辛い思いをさせたくないんです」


請負人「……失礼しました。野暮な質問でしたね。」

請負人「しかし、なぜ、そこまで彼に肩入れするのですか?」


???「私の祖母は大悲山の生き残りに殺されました。理由は金銭。私の家系は少しお嬢様の家系だったから。大悲山家再興を目指す連中に目をつけられていたんです。現場に着いた時には、もう、祖母は虫の息でした。亡くなる前に、「誰かを恨む暇があるのなら、今を生きろ」と教えてくれました。でも許せなかった。

私はどうにかして、仇を取ろうと色々模索している時に、左衛門を知りました。それと同時期くらいに、病気が発覚しました。余命を聞いた左衛門は真っ先に、祖母の仇を取ってくれました。だからです」


請負人は依頼人の目をじっと見る。

請負人「本当にそれが理由ですか?」

??「子供の頃に男たちから腕を掴まれて泣くのをこらえていた時に、命懸けで、彼と彼の兄たちが守ってくれた。そして、彼は自分も恐怖で尋常ないくらい震えていたのに、私に、必死の笑顔を作って「大丈夫。君は必ず守るから」と言ってくれたから、私なりの恩返しをしたいんです」


??「彼には言わないでください。彼からしてみれば、忘れたい記憶かもしれませんから。それに彼にこれ以上、兄さんたちの幻影を見せたくないから、だからそれとなく伝えてください。お願いします」


請負人「難しい依頼ですね。わかりました。お受けしましょう。しかし彼が説得に応じるか、こればかりはわかりません。それに現実に戻すということは、それこそ彼にしてみれば苦痛になるかもしれませんが、そこは承知の上ですか?」


??「私は彼を信じます。そして、社会を信じます。誰かが必ず見ててくれます」


請負人「・・・・そうですか」

「たくさん、道具がありますがこれは?」


??「ガラス細工用の小道具です。趣味で作ってるんですけど面白くて。この犬は、マスターではなく彼にプレゼントしたくて、不恰好ですけど」


請負人「いや、味があって私は嫌いではありません。この首輪は?」


??「資料をもとに紫紅さんを殺した時に使用していた首輪のレプリカを作ったんです。そして、この首輪は

紅石さんにつけられた首輪と同じものです。いざって時のために模造品を何個も作っておいたんです。自分への戒めと……これ以上、彼に苦しい思いをさせたくありませんから」


請負人が去ろうとしている。


??「もし、よければどれか持っていってください」


請負人「じゃあ、この雉のガラス細工を頂きますよ。今回の決断が幸運だということを信じて」


「では情報だけは、逐一、例のアドレスに送信してください。良いですか、では抜かりなく、良いですね。

喜多川さん」


喜多川「はい」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。


重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。


彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。


一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。


次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。


次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。


―――――――――――――――――――――――――――――――――

次回更新日:8月30日(日)10時,14時,18時,22時(社会情勢によって変動。)

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