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自殺請負人ー依頼は、命の終わらせ方ー  作者: マイライト
幻想に縋る者

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第百九話 自問

【注意事項】

本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。

読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。

心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。


※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。

兄さんが僕を睨みつける。


「……これがお前の、本当にやりたかったことなのか」


僕は笑った。


「ああ、愚問だな」


「忘れたのか、兄さん」


「僕たちは自警団《左衛門》だ」


「正直者が馬鹿を見ない世界を作る。そのために悪を根絶する」


「それが僕たちの正義だ」


その姿は、あの日見た父と重なっていた。


兄さんは首を横に振る。


「違う」


「父さんは家族を守るために壊れた」


「お前は違う」


「お前は、壊れた父さんを正義にしてしまった」


僕の笑みが少しだけ消える。


「何が言いたい」


「お前は力に酔ってるだけだ」


「正義なんて言葉で、自分を誤魔化すな」


しばらく沈黙が流れた。


やがて僕は、小さく息を吐く。


「ああ……」


「やっぱり無理か」


「兄さんの洗脳は、最後まで解けなかった」


僕は迷うことなく起爆スイッチを押した。


カチッ。


次の瞬間。


首輪爆弾が床へ転がる。


パリン。


ガラスが割れる音だけが部屋へ響いた。


誰も死なない。


全員が目を見開いた。


「……なに?」


その時だった。


「そこまでにしていただけませんか」


聞き覚えのない声が響く。


入口には、一人の老婆が立っていた。


「ヒーローごっこは、その辺で終わりです」


僕は眉をひそめる。


「誰だ、お前……」


「急にどうした」


老婆は小さく笑う。


「私は自殺請負人です」


「依頼を受け、貴方を現実へ連れ戻しに来ました」


辰緑は鼻で笑う。


「現実?」


「何を言っている」


「兄さんを駅で攫った婆さんか」


「面白い冗談だ」


「皆、この女を拘束しろ」


一斉に男たちが飛び出す。


請負人はため息をついた。


「やはり、そうなりますか」


乾いた銃声が響く。


一発。


二発。


三発。


銃弾は武器を弾き飛ばす。


さらに請負人は、一瞬で距離を詰める。


「っ!?」


男たちは次々と倒れていく。


十秒も掛からなかった。


「……何者だ」


請負人は銃を下ろした。


「言ったでしょう」


「私は自殺請負人です」


「依頼人の願いを叶える者です」


僕は静かに笑った。


「それで?」


「新手の殺し屋か?僕を殺しに来たのか」


「違います」


請負人は首を横に振った。


「貴方には、生きてもらいます」

「貴方はもう十分戦いました」


「自首してください」


部屋が静まり返る。


「……は?」


僕は笑い出した。


「馬鹿馬鹿しい」


「僕は正義を執行している」


「悪人を裁いているだけだ」


請負人は淡々と言う。


「そう信じているのでしょう」

「ですが、その正義で救えなかった人もいます」


僕は目を細めた。


「依頼人はこう言っていました」


「貴方は、兄たちの背中を追い続けているだけだと」


「兄たちが守ってくれた日の自分を、今も追いかけているだけだと」


僕は黙った。


請負人は続けた。


「正義は、人によって形が変わります」


「だから、私は貴方の正義を否定しません」


「一つだけ、お聞きします」

「その正義は、本当に貴方自身が選んだものですか」

「それとも、父親から受け継いだ復讐ですか」


「ふざけるな!」

「父さんを侮辱するな!」

「父さんが間違っていたと言うのか!」

「法が姉さんを救えなかった!」

「だから俺たちが立ち上がったんだ!」

しばらく沈黙が続く。


やがて僕は低く呟いた。


「……お前に何が分かる」


請負人は静かに答えた。

「私の言葉ではありません」

「依頼人は、自分が助かることを望みませんでした」

「最後まで願ったのは――」

「貴方が、生きることです」

「だからこそ、貴方を止めに来ました」

僕は表情が凍った。

「……誰だ」

請負人は答えない。

数秒の沈黙。

「その人は」

「最後まで、貴方を信じていました」

「そして」

「貴方が笑って生きる未来を望みました」


いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。


重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。


彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。


一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。


次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。


次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。


―――――――――――――――――――――――――――――――――

次回更新日:8月23日(日)22時(社会情勢によって変動。)

20/25


お詫び:投稿曜日について


8月16日に掲載した「次回更新日」の曜日を勘違いしており、投稿日時を誤って案内しておりました。


【誤】8月23日(土)

【正】8月23日(日)


楽しみにしてくださっていた方、また、誤った案内によって混乱させてしまった方には、本当に申し訳ありません。


正しい投稿曜日は、**8月23日(日)**となります。


今後はこのようなことがないよう、投稿予定をしっかり確認したうえでお知らせするよう努めてまいります。


この度はご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした。

そして、いつも作品を読んでくださって、本当にありがとうございます。


文責 マイライト

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