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自殺請負人ー依頼は、命の終わらせ方ー  作者: マイライト
幻想に縋る者

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第百五話 正義と契約

【注意事項】

本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。

読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。

心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。


※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。

「…紅石兄さん」

返事はなかった。

その日、紅石兄さんは姿を現さなかった。

数日後。

橋の下で倒れていた男性から財布や上着を持ち去ったという情報が入り、同胞が闇市場で紅石兄さんの所持品の一部を買い戻した。

商人はこう証言した。

「橋の下で倒れていた。呼びかけても動かなかったから、死んでいると思った」

その時の僕は、それを信じるしかなかった。

紅石兄さんは、もう死んだのだと。


「ああ」


紅石兄さんは、小さく頷いた。


その表情からは、長い間まとわりついていた迷いが消えていた。


僕は心の底から安堵した。


やっと兄さんが分かってくれた。


父上の理想を。


僕たちの正義を。


だから、あの日の僕は疑わなかった。


兄さんが、そのあと何を考えていたのかも。


何を決意していたのかも。



深夜:◇ ◇ ◇


請負人は、一枚の古びた資料を机の上へ置いた。


黄ばんだ紙には、古い事件の記事が綴じられている。


漣は不思議そうに資料を見つめた。


「これは?」


請負人は静かに答えた。


「日本左衛門一味」


「江戸時代にも実在した盗賊団です」


漣は首をかしげる。


「それが、今回の事件と何か関係あるのか?」


請負人は資料を一枚めくった。

「可能性は高いでしょう」

「もちろん、本当に同じ組織ではありません」

「ですが、理由は分かりませんが、その思想だけは現代へ受け継がれた――そう考えた方が自然です」

漣は苦笑する。

「思想が蘇ったってことか」


請負人は記事の一節を指でなぞる。


「日本左衛門一味は標的の屋敷へ集団で押し入り、周囲へ見張りを配置する。

金品を奪うだけではない。

抵抗した者は生け捕りにされ、そのまま姿を消したという記録も残っています」


請負人は続けた。


「もちろん、どこまでが事実で、どこからが伝承かは分かりませんが……」


漣が眉をひそめる。

請負人は一枚の写真を机へ置いた。

「数年前から、『左衛門』を名乗る集団の関与が疑われる事件が各地で起きています」

「表向きは自警団」

「法で裁けない悪を裁くことを理念に掲げています」

漣は苦笑した。

「自警団ってやつか」

「最初は、そう思われていました」

請負人は淡々と続けた。

「ですが、彼らが関わったとされる事件では、共通点があります。」

「証拠が残らない」

「証人がいない」

漣は写真を見つめた。

請負人は続ける。

「本当に同じ組織なのか」

「それとも、過去の日本左衛門を模倣しているだけなのか」

「そこまでは分かっていません」

「ですが、少なくとも彼らは、日本左衛門という名を利用しています」

「つまり」

漣が低く呟く。

「歴史を利用して、自分たちを正当化しているってことか」

請負人は小さく頷いた。

「ええ」

「だからこそ、厄介なんです」

「彼らは、自分たちを犯罪者ではなく、『正義』だと信じていますから」


請負人はゆっくりと漣を見る。


請負人は、古びた資料を閉じた。


部屋に沈黙が流れた。


「当時、左衛門を追っていた片桐という記者がいました」


「各地を回り、証言を集め、左衛門の正体へ近づいた人物です」


漣が腕を組む。


「それで?」


「ある日、片桐は何かを掴んだ」


請負人は漣に視線を向けた。


「踏み込み過ぎたんでしょう」


「数日後、練炭自殺として発見されました」


「匿名の通報だったそうです」


漣は小さく呟く。


「自殺……」


「ええ。」


請負人は頷いた。


「警察には難しかったでしょう」


「本当に自殺だったのか」


「今となっては誰にも分かりません」


請負人は苦笑もせず言う。


「警察の情報は、おそらく向こうへ流れています」


漣は少し驚いたように眉を上げる。


「よく辿り着けたな」


「ですが、私たちは都市伝説です」


「お互い、誰も、本当に存在しているとは思っていない」


「だからこそ、自由に動ける」


漣は小さく笑う。


「都市伝説も、たまには役に立つか」

漣は言う。

「あかしも同じところにいるのか?」

請負人は時計へ目を落とした。

「あかしさんもそこにいます」

「先日、依頼人にお会いしたときに見てきました。元気そうでしたよ」


「そろそろ時間です」


漣は立ち上がる。

「行くのか?」


請負人はすぐに首を横へ振った。


「私は自殺請負人です。依頼主の願いを叶えるまでです。」



漣は肩をすくめた。


「相変わらず冷たいな。」

「私も行くよ」


請負人は静かにコートを羽織る。


「私は正義の味方じゃありません。」


そう言い残し、請負人たちはコートの襟を立て、夜の街へと姿を消した。


いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。


重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。


彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。


一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。


次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。


次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。


―――――――――――――――――――――――――――――――――

次回更新日:8月23日(日)10時,14時,16時,18時,22時(社会情勢によって変動。)

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お詫び:投稿曜日について


投稿する曜日を勘違いしており、投稿日時を誤って案内しておりました。


8月22日(土)22時50分ごろに誤表記に気付き、先ほど修正いたしました。


【誤】8月23日(土)

【正】8月23日(日)


楽しみにしてくださっていた方、また、誤った案内によって混乱させてしまった方には、本当に申し訳ありません。


正しい投稿曜日は、**8月23日(日)**となります。


今後はこのようなことがないよう、投稿予定をしっかり確認したうえでお知らせするよう努めてまいります。


この度はご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした。

そして、いつも作品を読んでくださって、本当にありがとうございます。


文責 マイライト

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