第百三話 救済
【注意事項】
本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。
読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。
心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。
※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。
それから数か月。
病気の父に変わり、僕は父上の手伝いをするようになった。
情報を集め、人と会い、協力者を探す。
少しずつ信頼されるようになり、父上から外部との連絡役を任されることも増えていった。
そんなある日。
兄さんたちの部屋の前を通ると、小さな話し声が聞こえた。
足を止める。
「兄さん……もう限界だ」
紅石兄さんの声だった。
「ここにいても、生きてる気がしない」
「死ぬことすら許されない」
「死のうとしても、見張りに止められる」
少し間が空く。
紫紅兄さんが静かに答えた。
「馬鹿なことを言うな」
「希望は捨てるな」
「父さんだって……辰緑だって……いつか分かってくれる」
紅石兄さんは笑った。
乾いた笑いだった。
「…もう、遅いよ」
「話し合いで全部解決するなら……」
「世の中、誰も苦しまないだろ」
その時だった。
扉が開き、見張り役が顔を出した。
「何を話している」
低い声が部屋へ響く。
兄さんたちは黙り込んだ。
僕は、その場を静かに離れた。
数日後。
父上が僕を呼んだ。
「辰緑」
「次の捕虜の尋問は終わった」
「よくやった」
父上は満足そうに笑う。
「お前は期待以上だ」
そして、小さく呟いた。
「あの二人も……いつまでもこのままにはしておけんな」
その言葉を聞いた瞬間。
僕は、兄さんたちを説得できる最後の機会なのだと思った。
何度も部屋を訪ねた。
父上の理想を語った。
悪が得をしない世界。
弱い者が泣かない世界。
けれど、兄さんたちは最後まで首を縦には振らなかった。
紫紅兄さんは痩せ細り、紅石兄さんは虚ろな目で天井を見つめていた。
ある日、紅石兄さんがぽつりと呟いた。
「……もう、死にたい」
その言葉に、僕は思わず言ってしまった。
「そんなに死にたいなら、死ねばいいじゃないか」
部屋の空気が凍りつく。
見張り役がすぐに口を挟んだ。
「辰緑様、そのようなことは」
僕は机の上にあった紙切れを一枚取り、黒いペンで文字を書いた。
**『自殺請負人』**
その紙を兄さんの前へ置く。
「都市伝説だけどね」
「本当にいるかは知らない」
「もし存在するなら、頼んでみればいい」
紫紅兄さんが勢いよく立ち上がる。
「辰緑……!」
その目には怒りだけでなく、悲しみも浮かんでいた。
見張り役が二人の間へ割って入り、紫紅兄さんを押さえつける。
僕は、その光景から目を逸らさなかった。
いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。
重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。
彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。
一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。
次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
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次回更新日:8月16日(土)10時,14時,18時(社会情勢によって変動。)
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