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第一章 第一巻

第一章 第一部


私は再び広島の港に立っていた。時刻は午前七時ごろだった。頭上には、真夏の晴れた日にしか見られないような深い青色の、澄み切った雲一つない空が広がっていた。太陽はかなり高く昇り、柔らかな光を波止場に投げかけ、クレーンや漁船のマストに長い影を落としていた。


突然、遠くの岸壁のすぐそばで、耳をつんざく轟音が鳴り響いた。空へ向かって巨大な火の柱が噴き上がり、硝石(アンモニウム硝酸塩)を積んだタンカーが再び爆発したのだ。その瞬間、私は次に何が起こるかを理解し、逃げ出したいと思ったが、体が凍りついたようにその場に立ちすくんでしまった。


炎の閃光の後に、強烈な衝撃波が続いた。それは港を横断し、その進路にある全てをなぎ倒した。コンテナはおもちゃのように飛び散り、金属製の構造物は金切り声を上げて変形し、近くの倉庫や管理棟が崩れ始めた。空気は濃い黒煙と焦げたにおいで満たされた。


私は眩い閃光に目をやられながら立ちつづけ、顔や手に熱が焼きつくのを感じていた。轟音で耳がつんざかれ、鼻には刺激的な化学薬品のにおいが突き刺さった。周囲は混乱の極みで、人々の悲鳴、崩れる構造物のきしみ、サイレンのうなりが渦巻いていた。私は最後の力を振り絞って絶叫を上げたが、それはこの地獄のような騒音にかき消され、やがて全ては煙と崩れた建物の粉塵のベールに飲み込まれていった……


アレクサンドルは激しく目を覚まし、ベッドの上で息を切らしながら飛び起き、口を大きく開けて空気を求め、両手で目を覆った。顔には汗が流れ、心臓は胸から飛び出しそうなほど激しく鼓動していた。自分が自宅にいることを悟り、数回安堵のため息をついてから、再びベッドに横になり、白い天井を曇った視線で見つめた。この悪夢は、もう七年目に入る。恐ろしいほど規則的に繰り返されていた――同じシーン、同じ感覚。彼は顔を撫で、正気に戻ろうとした。


「また広島か……」と、彼はモスクワの自宅マンションの天井を見上げながら呟いた。


悪夢が定期的になってからの最初の一年、アレクサンドルはあらゆる手を尽くした――首都の最高水準のクリニックに通い、完全な医学検査を受け、血液検査を行い、MRIとEEGを実施した。医師たちは肩をすくめ、診断を下した。体は健康で、異常はないと。


そこで彼は心理学者や精神療法士の元を訪れた。ある者は認知行動療法を提案し、別の者は催眠術を、またある者は抗うつ薬の投薬を主張した。医師の推薦通り、彼は全てを試した。瞑想をし、夢の日記をつけ、リラクゼーションのエクササイズを行ったが、毎晩、毎晩、あの爆発で死んでいくのだった。


悪夢は彼を消耗させ、体力を奪い、昼間は空虚な感覚に襲われ、以前は簡単にこなせた仕事にも集中できなかった。父親であるロシアを代表する大実業家は、国外での治療を強く主張し、スイスやイスラエルの最高のクリニックを提案したが、アレクサンドルは拒否した。自ら解決策を見つけ、この恐怖を克服したかったのだ。ついに、偶然の産物で訪ねたことのある一人の年配の精神療法士が、悪夢の経緯を聞き終えると、思慮深げに首を振って言った。


「時に、無意識はトラウマの直接的な接触を要求します。そのトラウマがあなた個人のものでなく、深層的な、元型的なものであったとしても、その原因となった場所、広島へ行ってみるのです。港を歩き、街を散策し、そこの空気を吸い、悲劇の現場に身を置く感覚を味わってみなさい。恐怖と向き合うことで、無限に繰り返される悪夢のサイクルを断ち切れるかもしれませんよ」


もはや他に何も効かず、問題解決の必要性が突然に芽生えたことから、アレクサンドルは助言に従うことにした。


第一章 第二部


ベッドにしばらく横になって息を整えたアレクサンドルは、携帯電話を取り出し、父の番号をプッシュした。ミハイル・ヴィクトロヴィチ・グラチョフは、国際貿易分野の大物実業家で、欧州からアジアまで世界中に支店網を持っていた。日本にも会社の拠点があり、東京と広島にも事務所を構えていた。


「おはよう息子よ!何か急用か?あと10分で会議があるんだが」


「父さん、広島に行くことにしたんだ」と、アレクサンドルは前置きなしに切り出した。


電話の向こう側で、緊張した沈黙が流れた。


「広島に?」ミハイル・ヴィクトロヴィチの声は警戒していた。「何のためだ?ここモスクワでもやることは山ほどあるだろう。中国のパートナーとの契約締結が近いことは知っているはずだ。その契約は我々にとって非常に重要なんだぞ」


「分かってる。だがこれは僕にとって個人的にとても重要なんだ。もう限界で、いつ何が起きてもおかしくないんだ」とアレクサンドルは固く答えた。「悪夢を解決するために、そこへ行ってみろと助言されたんだ」


「またその話か……。お前の悪夢などくだらん」と父は言い切った。「お前には義務がある。姉と兄は全てを背負えない。お前は末っ子だが、もう立派な大人の男だ。全責任を背負う時期だ」


「二人とも上手くやってるし、僕がいなくても大丈夫だ」とアレクサンドルは反論した。「我々の事業は二人の完全な管理下にあり、全てのプロセスはスイス時計のように正確に機能している。僕はただの、二番目の妻との間に生まれた末っ子だ。二人は僕なしで十分やっていけるし、そもそも僕は会社の一部を相続するつもりはない。それが父さんの気に食わないことは知ってるが」


「お前は『ただの』なんかじゃない」と、父の声は硬くなった。「お前は家族の一員だ。家のことから目を背けるな。だが、そうまでして日本に行きたいというのなら……いいだろう。今回は譲るが、一つ条件がある」


「何だ?」とアレクサンドルは身構えた。


「東京のパートナーと会合を開け。彼らは長らく最高レベルの接触を待っているんだ。私に、お前が成功者の甘やかされた息子ではなく、我が家の事業全体の後継者の一人であることを見せてみろ」


「何度も言っただろう、僕は……まあ、いいさ、分かったよ」とアレクサンドルは短い沈黙の後、苛立ちを抑えて同意した。「会合はやる。最高の形でやり遂げる」


「素晴らしい。ならば交渉の結果を終えたら報告しろ」とミハイル・ヴィクトロヴィチは柔らかな口調で言った。「それと、マーシャにも必ず会うんだよ。心配だからな」


「分かってます、父さん」とアレクサンドルは安堵の息をついて答えた。「ありがとう、父さん」


「お前はいつまでたっても小さな子供だ。それと、マーシャにも必ず会え」とミハイル・ヴィクトロヴィチは慌てて付け加えた。「はっきりと話をつけてこい。彼女は日本の重要パートナーの娘の一人だぞ……」


「君の願いは考慮するよ、父さん」とアレクサンドルは苛立ちを含んだ声で言った。「だが君も知っての通り、僕は彼女にロマンチックな感情は抱いていない。彼女は妹みたいなものだし、彼女は僕たちがもうすぐ結婚するみたいに勘違いしてるだけだ」


「だからこそ、話をつけろと言ってるんだ」とミハイル・ヴィクトロヴィチは鋭く言った。「可哀そうな少女を手玉に取るのはやめろ。もう限界を超えている……。さて、私も行かねばならん。待たせすぎた」


そして父は通話を切った。


アレクサンドルは再び重いため息をつき、電話を置いた。ベッドから起き上がり、シャワーを浴びた後、キッチンのテーブルに座って熱いコーヒーを啜りながら、マーシャに事前に電話をかけて会う約束を取りつけることにした。テーブルに置かれたスマートフォンを取り、連絡帳をめくって「マーシャ・立花(タチバナ)」を見つけ、通話ボタンを押す直前、一瞬手を止めて彼女の姿を心に思い浮かべた。


マリア・タチバナは、彼の父と古い友人関係にある日本の大実業家、半蔵(ハンゾー)・タチバナの長女だった。二つの家族は単なるビジネス関係だけでなく、かつてアレクサンドルの父が半蔵を世界的に有名なロシア人モデルである彼の未来の妻と引き合わせたことが、長年のパートナーシップと二家族の温かな交流の始まりとなった。さらに、アレクサンドルの母は幼少期にマーシャの母と親友であり、グラチョフ家とタチバナ家の友情と交流を一層強く結びつけていた。


十五歳から、アレクサンドルは父の勧めでタチバナ家に三年間滞在した。それは日本文化への深い浸潤の時間だった。言語能力を磨き、武道や剣道の技を経験豊かな指導者の下で習い、マーシャと共に日本の高校を卒業した。その年月で、彼はその少女の性格と日常生活での振る舞いの特徴をよく知っていた。


少女の外見は鮮明に記憶していた。スリムで引き締まった体は、幼少期から続けている柔道と剣道のトレーニングの賜物だった。長い黒髪はいつも乱雑なポニーテールに結わえられ、首と肩の優美なラインを晒していた。濃い茶色の瞳は深く表情豊かで、しつこい同級生に反撃する時は厳しく不屈だが、アレクサンドルを見ると信じられないほど柔らかく繊細になる。彼女の容貌は、モデルという母親の洗練されたヨーロッパ的な特徴と、父親の鋭く高貴なアジア的な線が調和的に混ざり合っていた。遺伝的特徴の組み合わせは、マーシャを母親をも凌ぐ美女へと形作っていた。


マーシャは幼い頃から強く意志の固い性格を持っていた。自分の意見を決断し、主張し、運命の試練に怯むことなく立ち向かうことができた。武道を習得しているため、自分のパーソナルスペースの境界を侵す者には容赦なく反撃し、時には喧嘩にも恐れず首を突っ込んだ。また、複数の外国語を話すことで、彼女の教養と広い見識が際立っていた。彼女には双子の弟妹がいた。陽気で活発な弟のアキロと、静かで物思いにふける妹のヒナタだ。二人はマーシャより二歳年下で、彼女同様にアレクサンドルに非常に懐いていた。さらに、マーシャにはもう二人の弟妹がいた。弟のユキと妹のケイコで、二人ともマーシャより実に十五歳年下だった。二人の子供は姉を敬愛していた。


マーシャは幼い頃からアレクサンドルに恋心を抱き、それを隠そうともしなかった。彼女の不屈さと意志は、彼の前では溶けてしまう。他の人間には厳しく注意したり、立場を教えるために喧嘩を仕掛けるようなことでも、アレクサンドルに対しては許してしまうのだ。彼との会話では、異常なほど世話を焼き、嫉妬深く彼の問題から守り、彼が少しでも時間や注意を向けると幸福で顔が輝いた。一方のアレクサンドルは、性格のせいでもあったが、何より始まったばかりの悪夢のせいで、彼女の感情を分かち合うことも、はっきりと拒絶することもできなかった。彼女の人生を自分の病いで台無しにしていいのか、判断がつかなかったのだ。


深く息を吸い込み、私は通話ボタンを押した。数秒の呼び出し音の後、受話器から聞き慣れた声がした。


「サシャ?」その声には、矛盾する喜びと、軽い怒りが混ざった不満、そして苛立ちが同時にこもっていた。「やっと勇気を出して、沈黙を半年も破ってくれたのね。しかもビデオ通話じゃなくて」


私は思わず間抜けた笑みを浮かべた。胸が罪悪感で締め付けられるのを感じながら、無神経にもビデオ通話でないことに安堵した。


「ああ、マーシャ。そうだよ、僕は意志薄弱で厚かましい幼馴染のサシャだ。ごめん、長い間音沙汰なしだった。仕事が山積みで、他にも色々あったんだ。会いたいんだ。僕は……広島に行くんだ。会って話せないかな?」


「んー……あなたのその独演に何と答えていいか分からないわ」彼女の声は瞬時に生き生きとし、甘えた我儘な調子が混じった。「一部の予定はキャンセルするけど、16時より早くは空けられないわ。アキロとヒナタの稽古を迎えに行かなきゃいけないし、私たちはそこからあなたのところに向かうの。それと、父と母はハワイに休暇で行ってるし、もし何かあっても会えないから覚悟して」


私は一瞬目を閉じて考えを纏め、答えた。


「分かった。それなら三日後、つまり8月6日に、メモリアルパークのカフェ『ハチドリシャ』で会おう。いいかな?」


「行くわ、サシャ。必ず行くし、私だけじゃないわよ」と、彼女はあまりにも純粋な喜びで約束した。私は再び居心地の悪さを覚えた。「じゃあね!」


私は受話器を置き、冷めたコーヒーを脇にどけた。その時、彼女がなぜアキロとヒナタを連れて来ようとしているのか、その理由が分からなかったことに気づいた。だが、二人きりでちゃんと話せないのは確かだ……まあいいか。私にとっては難しい会話だったが、安心感はやって来なかった。むしろ、新たで避けられない何かの入り口に立っているという感覚が、一層強まっただけだった。


第一章 第三部


翌日、アレクサンドルは日本行きの航空券を購入した。東京に到着し、父に課せられた仕事を片付けて報告した後、翌日の午前10時ごろ、新幹線で広島へ向かった。


広島は大都市の喧騒で迎えてくれた。日は快晴で、8月中旬の太陽はまだ高く、午後3時ごろの光は正午のような焼けつくような強さはなく、街並みを柔らかく金色に照らしていた。空気は温かくも蒸し暑くなく、湾からの軽い潮風が爽やかさと微かな海と海藻の塩気を運んできて、都市の匂いを薄めていた。


街はゆったりとしたリズムで生活していた。人々は急いで仕事に向かい、子供たちは広場で笑い、カフェからは新しく淹れたコーヒーの香りがした。建物や広がる木々の影は長く伸び、アスファルトに均一な暗い帯を落としていた。遠くの方で、風に揺れる風鈴が澄んだ音を鳴らしており、その細い音は街の鈍い騒音と混ざり合っていた。だが、アレクサンドルはこの平穏な表面の下に、悲劇の記憶が潜んでいることを感じ取っていた。


彼は港へとゆっくり、ほとんど不承不承に歩いていった。複合施設の入口付近には、記憶の番人のように記念碑が立っていた。アレクサンドルは立ち止まり、石板に刻まれた名前を見つめた。それぞれの名前は、数年前にここで起きた硝石を積んだタンカーの爆発という悲劇を思い起こさせた。胸が締め付けられるのを感じた。かつてこの地を襲った破壊の規模を認識しようとしていたのだ。


気を落ち着けて港に足を踏み入れた。そこは活気に満ちていた。クレーンが唸り、船が接岸し、労働者がコンテナの間を行き来していた。何もかもが災害を思わせない――全てはとっくに復旧し、新しく建て直されていた。彼は波止場沿いを歩き、細部に目を凝らした。新品の柵、新しい標識、手入れされた小道。まるで大地そのものがあの日のことを忘れたかのようだった。そして、悲劇の起きた波止場の近くでしばらく佇み、出口へと急いだ。


場を離れる直前、アレクサンドルは足を止め、入口の記念碑に目を向けた――それは依然として不動で、過去の記憶を守っていた。彼は深く息を吸い込み、背を向けて歩き出した。奇妙な二重性の感覚を抱えながら――人生は前へ進むが、記憶はそこに残るという感覚を。


しばらく立ち止まり、約束の待ち合わせを思い出して、ビルの二階にあるカフェへと急いだ。そこでの重要な会話を心の中で繰り返しながら。彼は未だに、なぜマーシャがアキロとヒナタを連れて来ようとしているのか、その理由を完全には理解できていなかった。明らかに、二人きりで率直に話す機会を難しくしているのだった。


ビルの二階、カフェの入口付近で立ち止まり、見知った顔を探して辺りを見回した。その瞬間、甘い笑い声が彼の注意を引いた。振り返ると、マーシャの姿があった。彼女は数歩離れた場所に立っており、軽い夏のワンピースを身にまとい、いつもの乱雑なポニーテールで髪を結っていた。濃い茶色の瞳は輝き、唇には軽い笑みが浮かんでいた。その横では、アキロとヒナタが足踏みしていた。


「サシャ!」とマーシャは嬉しそうに叫び、真っ先に彼の肩に抱きついた。「やっと来たわね!心配していたのよ」


アレクサンドルは戸惑いながらも彼女に抱き返し、罪悪感と喜びが混ざり合う感覚を味わった。


「やあ、マーシャ、アキロ、ヒナタ」と彼は柔らかく言った。「君たちも来るとは思わなかったよ」


屈託のない笑顔の高くて活発な少年、アキロが一歩前に出た。


「そりゃそうでしょ」と彼は陽気に答え、アレクサンドルの肩を叩いた。「姉を幼馴染の友だちとの待ち合わせに一人で行かせるわけないじゃん。一年ぶりの再会で随分変わって、悪党みたいになってないか心配だったんだから」


ヒナタは対照的に、目を見つめて抑制された笑みを浮かべ、軽く会釈した。


「こんにちは、アレクサンドル」と彼女は静かに言った。「また会えて嬉しいわ。マーシャ、最近ずっとあなたの文句言ってたわ……」


マーシャは少し頬を染め、妹に指を突きつけて冗談めかして脅した。


「ヒナタ、何言ってるのよ!」そしてアレクサンドルに向き直り、少し恥ずかしそうにした。「本当に心配してたのよ、あなたのこと」


彼女はアレクサンドルに向き直り、視線が和らいだ。


「でも、やっと電話をくれてここに来てくれて、嬉しいわ」


「ああ」と彼はゆっくりと言った。「君に無礼な真似をしたよね。黙って荷物をまとめて帰ったりして」


「あなたを恨んだりしないわ。あの災害の後、辛かったのは分かってるもの」とマーシャはさらに低い声で続けた。「だってその日、あなたはお母さんを失ったのよ。そしてこの街は、あの恐ろしい悲劇を思い起こさせるわ」


それまで黙って聞いていたアキロが口を挟んだ。


「ところで、ここにみんな揃ったんだし」と彼は提案した。「街を少し散歩してから、うちに帰らない?」


マーシャはアレクサンドルを注意深く見つめ、彼の考えていることを読み取ろうとした。


「もし君が構わないのなら」と彼女は柔らかく付け加えた。「一緒に行きましょうか」


アレクサンドルは一瞬硬直し、体の内側で何かが揺れたのを感じた。彼は突然、マーシャ、アキロ、ヒナタとの交流が、今の自分にとって必要なものなのだと悟った。


「ああ」と彼は頷いた。「行こう。ありがとう」


そして私たちはカフェの入口から離れた。アレクサンドルはマーシャの隣を歩き、緊張感が徐々に解けていくのを感じた。アキロはヒナタに何かを生き生きと話し、ヒナタは時折笑顔を浮かべて兄に視線を向けていた。長い間で初めて、アレクサンドルは希望の光を感じた――過去と向き合うことで、無限に繰り返される悪夢のサイクルを断ち切れるかもしれないと。


だが、その静けさは長くは続かなかった。彼らがビルの一階の出口に近づき始めた瞬間、地面が呻き、足下があまりにも強く揺れたため、全員が予期せずバランスを失って倒れた。凄まじいきしみと人々の悲鳴が聞こえた。アレクサンドルは振り返り、建物の構造物が彼らの頭上に崩れ落ち始めるのを見た。


「早く逃げろ!」と彼はマーシャの手を掴みながら叫んだ。


彼らは立ち上がろうとしたが、もう遅かった。次の揺れ――そして大きな破片の雨が彼らの上に降り注いだ。アレクサンドルは本能的に前へと飛び出し、身を挺して少女を庇った。彼とマーシャの間と、アキロとヒナタの間に、瓦礫と粉塵の壁が立ちはだかり、子供たちは互いに切り離された。


衝撃が背中と肩に当たった。痛みが体を貫き、目の前が暗くなった。崩壊と悲鳴の騒音の中で、彼はマーシャの声を聞いた。

「サシャ!」

彼は彼女に答えようとしたが、できなかった。視界は霞み、世界は狭い隙間に縮んだ。唯一脈動する思考は、瓦礫に押し潰されても最後まで手足をついて耐えることだった。ところが、マーシャの下、地面の直上に、奇妙なシンボルで埋め尽くされた円が光り出したのを見たのだ。日本の文字でもなければラテン文字でもなく、ルーン文字を彷彿とさせる何か古代の文字だった。円の線は生きているかのように脈動し、火花を散らした。そして、その瞬間、鋭い閃光と眩いばかりの光が全てを飲み込んだ。


第一章 第四部


一族の屋敷には緊張が漂っていた――それは重い霧のようにあらゆる隅々に染み込み、晴れようとしない。皆が待っていた。リリンの出産は、不吉な前兆と、何も良いことを予感させない夢に彩られた、辛い妊娠期間を経て、いよいよ始まろうとしていた。


一族の分家、ヴェラリオン家の当主、ヴェラリオンは執務室に座り込み、暗い思考に沈んでいた。部屋は江戸時代の様式で装飾されていた。漆塗りの低い木の机、半透明の紙が貼られた障子襖、壁には山の頂や竹林を描いた書と絵の掛け軸。部屋の隅には先祖の精霊への供物が置かれた小さな祭壇があり、紙灯籠からの柔らかな光が、薄暗くほとんど神秘的な照明を作り出していた。


ヴェラリオンは昨日起こった出来事について思いを巡らせていた。本家に、信じられないほどの力を宿した双子が生まれたのだ。この出来事は、彼の長年の計画――本家の影に隠れた分家を抜け出すという目論見を白紙に戻した。あれほどの力を持つ双子の誕生は極めて稀であり、これは長老たちと一族の資源が本家に集中することを意味した。そして何より、ヴェラリオンの第六感が告げていた。リリンとヴェリウスの子は死産になるだろうと――前兆はあまりにも明白だった。


ヴェラリオンの思考は、ドアをノックする音で遮られた。使いの者が入って来て、恭しく礼をし、メモを差し出した。 「主、分娩が始まりました」


ヴェラリオンは動揺を抑えて立ち上がり、自分の息子の部屋へと向かった。足音が長い廊下にこだまし、心は希望と絶望の間で揺れ動いていた。


部屋ではヴェリウスが安堵の表情で父を迎えた。彼は部屋の隅から隅へと歩き回り、緊張で拳を握りしめたり開いたりしながら、身動きが取れないでいる。 「父上」と、彼は軽く会釈しながら言った。「来てくれて嬉しい。どうすればいいのか分からないんだ……全てがあまりにも早く起こりすぎて、僕は……僕は準備ができていない」


ヴェラリオンは息子の肩に手を置き、確固たる口調で言った。自分の胸に確信があるわけではないが。 「大丈夫だ、ヴェリウス。運命と我が一族の力を信じろ」 『実際のところは、そうではない』と、ヴェラリオンは心の中で思ったが、その言葉は口にしなかった。


出産は長く苦しいものだった。四時間もの長い間、屋敷はリリンの呻き声、助産師たちの抑えた声、そしてドアの外で待つヴェリウスとヴェラリオンの緊迫した沈黙で満たされた。時間は苦痛に満ちてゆっくりと流れ、あらゆる音に二人は身を震わせて耳を澄ました。


やがて、彼らは子を見るよう呼ばれた。ヴェリウスとヴェラリオンは急いで別の部屋へ向かった。道すがら、ヴェラリオンは思った。『今回はどうやら私は間違っていたようだ。そう悪くはないかもしれない』


だが部屋に入り、彼は苦々しくも自分の予感が外れていないことを悟った。リリンの腕の中には、息苦しそうな男の子がいた。胸はわずかに上下し、顔は青白く、ほとんど透き通っていた。ヴェリウスは言葉を失って立ちすくみ、リリンは子を胸に抱きしめ、目は涙でいっぱいだった。


二人は無力に、絶望的に、少年が死んでいくのを見つめていた。そして、その呼吸が止まった瞬間、部屋は眩いばかりの光で照らし出された。全員が数分間目を見開けなくなり、視力が戻ると、少年は穏やかに呼吸をしており、辛うじて目を開けていた。


ヴェリウスは信じられないというように息を吐き、ヴェラリオンは胸の内に――奇妙で恐ろしいが、それでも希望という芽生えを感じた。この世界の何かが変わり、この子が一族全体の運命の鍵となるかもしれない。


第一章 第五部


意識はゆっくりと、苦しみながら、粒々に戻ってきた。まずは無重力の感覚、まるで絶対の虚空に漂っているかのようだった。次に意識に音が突き刺さった。遠くのざわめき――私の知っている、曖昧な言語で話す人々の囁きに似た音と、心臓の鼓動……いや、一つではない。二つだ。一つは穏やかで規則的に、もう一つは速く、断続的に、怯えたカナリアのように鳴っていた。


目を開けようとしたが、光は耐え難いほど眩しく、何千もの小さな刃のように切り裂き、すぐに目を閉じてその不快な感覚から逃れようとした。


――「ここは? 何が起きている? 夢か?」――その思考は、水の厚みを通して聞こえるように鈍く響いた。


全力を振り絞ってもう一度試み、今度はまばたきを――ほんの一瞬だけだが、開くことに成功した。それだけで十分だった。私は美しい女性の腕の中に横たわっており、上には二つの男性の姿が覆いかぶさっていたのだ。よく見ると、その上に立つのは見た目五十歳ほどの、がっしりとした大柄の男性だった。雪のように白い髪は後ろに撫で付けられ、高い額を晒しており、鋭い青い瞳は深く、ほとんど古代のような叡智を宿して見つめていた。彼からは力――単なる肉体的なものではなく、精神的な圧倒的な力が放たれていた(註:これは祖父で、13の主流一族の分家の当主であった)。


「祖父」の左側には、もう一人の男性が凍りついていた(註:これは父親だ)。見た目は三十歳前後で、やや背が高めだった。黒いカラスの羽のような長い髪は毛先で軽くカールし、鮮やかな青い瞳は宝石のように煌めいていた。その容姿は魅惑的な美しさと、野生で荒々しい力が混ざり合っていた。彼は少し後ろに立っていたが、視線は嬰児に釘付けで――そこには安堵と畏敬と誇りが同時に読み取れた。


私を抱く、見た目は疲れ切った女性は、象牙色の肌に、まるで明るい月のような瞳、そして肩に流れる銀白色の長い髪を持っていた。よく見ると、私は彼女が私が好んで見ていたアニメ作品に出てくるダークエルフそのものに似ていることに気づいた。その視線には、疲労と喜びと安堵の混ざり合いが読み取れた。


年長の男性が慎重に嬰児を腕に抱いた。その手は幅広く、剣と魔法を同等に扱うことに慣れたような堅い胼胝に覆われ、小さな身体を優しく支えていた。 「うまくいった。彼は意識を取り戻した」と、男は低く権威ある声で言った。しかしその声には、安堵と困惑が混ざった調子があった。「見ろ、ヴェリウス。その目は……普通の子とは違う」


ヴェリウスは身を乗り出し、慎重に嬰児の小さな手に触れた。瞬間、彼の目が冷たい青い炎に煌めき、その後、子の両手の皮膚の上にルーンが浮かび上がり、複雑なルーン文字の模様を編み出した。 「何だったんだ、これは……?」とヴェラリオンは、閃光の余韻にまだ圧倒されながら低く呟いた。「この光が……子を救った。そう感じる。だが、どこから来た? なぜ今なんだ?」


「昨日、本家に双子が生まれた」ヴェリウスは息子から目を離さずに答えた。「父上、何か関係があるのでは? あれほどの力を持つ子らの誕生が、我が子にも何らかの影響を与えたのかもしれない」 「十分に考えられるな」と年長者は顎を撫でながら考え込むように頷いた。「だが、この子の目は……この年齢の子の目が、そう早く、しかも青い炎のように光るはずがない。異常だ。通常ならば、色は紅だろう」


そしてもう一つ、私を戸惑わせることがある……この子は意識を取り戻して以来、一度も音を立てていない。泣き叫びもしない――普通の嬰児ではない。そしてその視線は……見ろ、ヴェリウス。生まれたばかりとは思えないほど、しっかりと我々を見ている」


ヴェリウスは身を屈め、子の目を凝視し、ゆっくりと頷いた。 「その通りだ、父上。その視線に……気味が悪いというか。何か変だ」


リリンは夫に視線を上げた。 「ええ」と、彼女は静かに言った。「そこに何か……意味深く、古いものがあるわ。おそらく、祖父と父の血が目覚め始めているのね。そして、あなたが七男であったとしても、二つの血を結びつける者を生み出す運命が、まさにあなたにあったのよ」


ヴェリウスは眉をひそめた。 「だが、どうやって?」と彼は言った。「特に何かしたわけではない。儀式も行わなかったし、精霊に祈りも捧げなかった……全てが自然に起こった。これは何かの合図なのか? 運命が我々を選んだという合図なのか?」


リリンは優しく首を振った。 「あるいは、単なる偶然かもしれないわ」と彼女は推測した。「子は生まれた瞬間は生きていたのよ。呼吸は稀で、出産時に泣き叫ばなかっただけ。おそらく、自力で回復したのね――血の力が助けてくれたのよ。何の上位の合図もなしに。私たちには確かなことは分からないわ」


年長の男性は、嫁の言葉を思案するように黙っていたが、ゆっくりと頷いた。 「リリン、君の言うことは一理ある」と彼は言った。「『合図』などなかったのかもしれない。女神と契約を結んだわけではない。おそらく、危機的瞬間に我が一族の力が顕現したのだろう」


ヴェリウスはため息をつき、議論をやめるように軽く肩の力を抜いた。 「まあ、いいさ」と彼は言った。「後で全てを考えればいい。大事なのは、息子が生きていることだ。今は子を洗い、乳母を呼び、寝かしつける必要がある」


リリンは微笑み、疲れながらも嬰児を胸に抱きしめた。 「ええ」と同意した。「休ませましょう。彼には長い道のりが待っているのだから」


年長者は最後に子に目をやり、その目は未だに微かな青い光を放ち、腕には弱くルーン文字の模様が光っているのを見て、頷いた。 「休ませよう」と彼は繰り返した。「そして、血の力が彼を守りますように」


その言葉に応えるように、私は身動きしようとしたが、体は聞かなかった。小さく、弱く、慣れない体だった。話そうとしたが、言葉の代わりに聞こえたのは、自分のか細い鳴き声だけだった。


――「生きてる……そして、僕は……嬰児?」――その事実の自覚が、理性に雪崩のように襲い掛かった。


記憶が新たな波として押し寄せてきた。広島、爆発、地震、マーシャ、シンボルの描かれた円と、眩いばかりの光。


今や、目にした全てが意味を帯び、同時にさらなる謎となっていた。死んだはずなのに消えず、別の世界に、嬰児の肉体に転生したのだ。


自分の小さな手を見つめながら、心の奥底で私は混乱と恐怖を感じていた。終わりではなく、新たな人生の始まりなのだから。意識の端で、マーシャとアキロ、ヒナタはどうなったのかという思考が蠢いた。死んだのか、それとも私のように転生したのか。全ては現実なのか――だがその思考は、寝入りつつある私を優しく抱き上げ、この部屋から遠ざけていく見知らぬメイドの女性の姿で遮られた。

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