6.キラリ!星空はほほえむ!
まだまだ続きます!連続投稿!しばしお付き合いください!
「お返事が来ないわ────!!!」
マーキア伯爵家の朝は、いつも騒がしい。しかし、今日は一段と騒がしかった。というのも、一向に来ない手紙の返事に焦れたアイリスが、ウサギのぬいぐるみを抱きしめながら叫んでいるからだ。その姿を見慣れているメイドのララは、笑顔のまま口を開く。
「お嬢様、落ち着いてくださいな。」
「だってだって!もう、1ヶ月も!経っちゃったのよ!」
そう、手紙を送ってから、もう1ヶ月が経った。この1ヶ月間、毎朝ララに返事がきたか尋ねたり、伝書鳩が届けてくれるのかもと、追いかけ回したりしていた。けど、待てど暮らせど、返事は来ない。
私は頬を膨らませた。そうして、ムカムカする気持ちをウサギのぬいぐるみにぶつける──ことはなく。ギュッと抱きしめて、そのままベッドに横たわり、高速でゴロゴロし始める。
「う” ────!!!」
一向に止まらない私の奇行を見ながら、ララが落ち着いた声で話す。
「…お嬢様。私に作戦があります。」
「さくせん!?」
格好いい響きの言葉に、すぐさま起き上がる。突如、メガネをスチャッとかけたララが、不思議とキラキラして見える。
「手紙のみではダメだった。…であれば、手紙と共に、プレゼントを添えるのです。」
「プレゼントを?」
「ええ。そうすれば、このプレゼントは何なのか、どんな目的で添えたのか…気になるー!…と思った婚約者様は、つい手紙を見てしまうのです。」
「…!?ララ!あなた、天才だわ!!」
──手紙にプレゼント…私なら見る。絶対に見るわ!
プレゼントを持ったまま、即座に封を開く自分を想像した私は、ララに尊敬の眼差しを向ける。そうして、何をプレゼントするか考えた。
「じゃあ、うさちゃんのぬいぐるみは、どうかしら?ルカス様、よろこでくれるかな?」
大好きなウサギのぬいぐるみを、ギュッとしながら言う。可愛くて、もふもふなウサギのぬいぐるみ。頭の中で、林檎みたいにお顔が真っ赤なルカス様が、ぬいぐるみをもらった途端、パァッと笑顔になる想像をして、ニコニコする。
「…確かに素敵ですが、最初は手作りのものがよろしいかと。まだお会いしていない以上、高価なものは気が引けるかもしれません。」
「なるほど…。」
「…それに、手作りのものの方が無視できないでしょうし。」
「ぇ、なにかいった?」
「いえ、何をプレゼントすべきか考えていただけですよ。」
ララがぼそっと呟いた気がしたので、尋ねたところ、もう次のことを考えているらしい。
──流石ララだわ!私も考えなきゃ!手作りのもの……そうだわ!
「ししゅうなんてどうかしら?ハンカチなら、便利よね!」
「とても良い考えですね。…ただ、お嬢様、刺繍はできるのですか?」
「したことはないけど…お母様がやっているのを、見たことがあるの!きっとできるわ!」
◇◇◇
「できないわー!!!」
早速行動しようと思った私は、お母様に刺繍の仕方を教わった。けれど──
──できない!本当にできないわ!!
私は手元のハンカチを見つめる。そこには不恰好なウサギの刺繍がある。…刺繍と言って良いのだろうか。糸はヨレヨレで、隙間が大きく、ウサギは可愛いというよりも…ちょっとこわい。
「…ふぅ、ひっく。」
何度やっても、同じ結果の繰り返し。悲しくて涙目になる私の背を、お母様が優しくさする。
「大丈夫よ。繰り返し頑張れるだけでも、すごいことよ。…ちょっと見せてちょうだい。」
私は震える手でハンカチを渡した。お母様は丁寧にハンカチの裏表を見る。
「うーん。糸を強く引き過ぎてるのかもしれないわ。」
「ぇ、けど、強く引いた方が、糸がピンとして、キレイになるんじゃないの?」
「糸を引き過ぎると、布が引き攣ってしまうの。だから、優しく糸を引きながら縫い付けるのよ。………ほら。」
お母様は、私に見えるようにしながら刺繍をしていく。すると、丁寧に縫い付けられたウサギが出来上がる。
「わぁ!お母様は、まほうつかいなのね!」
「ふふっ。刺繍はね。一針一針に思いを込めることが大切なの。そうすれば、相手に伝わるわ。…彼に思いが伝わると良いわね。」
「うん!私、がんばる!」
私は、お母様をお手本にしながら、一針一針に「仲良くなれますように。」と願いを込めた。
そうして出来上がったウサギの刺繍は、まだ完璧とは程遠い。けど、最初よりも成長できた気がする。それが嬉しくて、家族や屋敷のみんなに見せびらかして回った。みんなに褒められて満足した私は、手紙にハンカチを添えて送った。
「よろこんでもらえますようにー!!」
そう、窓から見えるお星様に祈った。キラキラと輝く星空が、温かく見守ってくれている気がした。




