↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
In floreー無彩色の君へ  作者: ちょこまる。
第一章 幼少期編・アイリスの日常

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/28

4.空は嘲笑う(ルカス視点)・下

書き溜めていたエピソードを連続投稿中です!忙しくてすみません!

 過去に耽っていた俺は、目の前の”家族”を見遣る。

 数年前から教師をつけられた“兄姉”は、その頭角を現し、日々成長している。侯爵夫妻や教師陣は、皆、彼等を褒め称える。それに対して、優秀な“兄姉”は驕ることなく、謙虚な姿勢で応える。何よりも、彼等のもつ深紅の髪や銀色の瞳…黄色い髪と瞳をもつ自分とは異なる色彩そのものが、“本当の家族ではない”ことを、言外に告げているように感じた。

 居心地の悪さから、俺は席を立った。すると、“兄妹” ──ラウルとローズが口を開く。


「ルカス、全然食べてないじゃないか。しっかり食べないと、体調を崩すよ。」

「そうよ!少しでも食べなきゃ。お姉様のおかず、分けてあげよっか?」


 ──やめろよ。本当に、いい加減にしてくれ。


 二人の哀れむような眼差しが、俺の胸に深々と突き刺さる。その眼差しを向けられるたび、自分自身が酷く惨めで、情けない存在だと思い知らされる。


 ──そんなに、俺が可哀想なのかよ。未だに、俺を哀れんでるのかよ。


 どれだけ陰で努力しても、二人との実力差を目にして、“本当の家族ではない”と幾度となく痛感したから。二人の言葉を無視して、背を向けた時──


「待て、ルカス。」


 侯爵が短く言葉を紡ぐ。久しぶりに、自分に向けられた侯爵の言葉。食卓がしんと静まる。


「…座りなさい。大事な話がある。」

「……はい。」


 戸惑いつつも、俺は大人しく席に着く。侯爵は仕事人間で、必要最低限のことしか言わない。そんな侯爵が、自分を引き留めるということは、相当重大なことなのかもしれない。…自然と俺は、姿勢を正した。


「…お前の婚約者が決まった。」


 侯爵の重々しい声が、静かな食卓に響いた。


 ──────────は?


「それは、めでたいですね。よかったな、ルカス。」

「本当に素敵だわ。お相手は、どんな子かしら?」

「お相手はマーキア伯爵家のアイリス・マーキア嬢よ。ルカスよりも1歳年下ね。」

「わぁ、じゃあ8歳ってこと?早く会ってみたいわ!」


 “兄姉”の祝福や侯爵夫人の言葉は、ルカスの耳を次々と通り抜ける。


 ──ふざけるな。冗談じゃない。


 確かに、貴族の多くは、幼少期──早ければ産まれる前から、婚約相手が決まる。頭では理解できた。だが、心では理解できなかった。何の取り柄もない自分に比べて、非の打ち所のない“兄姉”。そんな“兄姉”ばかり褒めて、叱責も、期待もしない侯爵夫妻。努力をしても、何の成果も得られない空虚な毎日。

 そんな中、突然舞い込んだ婚約話。心身共に未成熟な彼の反発心を膨らませるには、十分だった。


「…俺はそんなの、絶対に認めない。」


 ぼそっと呟いた後、俺はその場から走り去った。背後から、自分を引き留める声が聞こえた気がした。その全てを無視して、自室に閉じ籠った。


「…くそっ!くそっ!!くそっっ!!!」


 ──結局、政略の駒として使われるだけだ。


 役に立たないから。優秀な“兄姉”とは違うから。侯爵夫妻にとって、どうでもいい存在だから。“本当の家族ではない”から。頭を駆け巡る考えを、やるせない思いを、どうしようもない衝動を、物に当たり散らしてしまう。

 一通り暴れた後、まだ小さな彼の身体は、すぐに疲れ切ってしまって、ベッドに寝転がる。窓から見える空は、彼の荒んだ心を嘲笑うように、青く澄み渡っていた。

 そんな空から逃げるように、目を瞑って、眠りに落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。