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In floreー無彩色の君へ  作者: ちょこまる。
第一章 幼少期編・アイリスの日常

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2.ぐぬぬ!お手紙のお勉強!

「なんで、このお手紙じゃだめなの?」


 自室に戻った私は、即座にララに問い詰めた。お仕事で忙しい両親に代わって、ララが私に手紙について指導してくれることになったのだ。


 ──せっかく、お気に入りの便箋に書いたのに。


 私は、頬を膨らませた。可愛いウサギが描かれた便箋は、私のお気に入りだ。この便箋で手紙を渡したら、両親もマシューも…みんな喜んでくれた。だから、きっとルカス様も喜ぶと思ったのに…。すると、ララが苦笑いしながら口を開いた。


「…便箋の問題ではなくて、手紙の内容に問題があるのです。」

「お手紙のないよう?…これじゃ、だめなの…?」


 しゅんとする私に、ララが慌てた様子で、頭を撫でてくれる。


「だ、大丈夫ですわ。私がお力添えしますわ!」


 そう言ったララは、突如として部屋を出て行った。…かと思えば、大量の本と手紙を持って、すぐさま戻って来た。


「わぁ!ララ、すごいすごーい!」

「ふふっ。お嬢様のためなら、何でもいたしますわ。」


 得意気に胸を張るララが格好良くて、ぴょんぴょん跳ねる。ひとしきりはしゃいだ後、ララの手元の手紙を覗き込む。


「これは、ララが書いたの?」

「ええ、そうですよ。こちらが私、そちらは奥様が書いたものです。許可をいただいたので、ご覧ください。」

「ありがとう、ララ。……これは、お友だちあてで、これは、家族あて…それは、お客様あて?」

「ええ、そうですよ。…何か気づくことはありますか?」


 それぞれの手紙に目を通す私に、ララが問いかける。一通り読んでから、私は口を開いた。


「えっとね。…相手によって、言葉とか、ないようが、ちがうなって思ったよ!」

「ふふっ、そうですね。お手紙を書く時に大切なことは、沢山あります。その中でも、自分と相手の関係に合った言葉で書くことが、何よりも大切なんですよ。」

「…かんけいにあう?」

「どれだけ仲良しか、と考えるといいかもしれません。例えば、お嬢様は私に敬語を使いませんよね。それは、私とお嬢様が主従であり、仲良しだからです。けれど、お客様相手には、敬語を使いますよね?」

「うん。お父様たちから、お客様には、けいごを使うようにって、言われたの。失礼がないようにって。」

「そう、それがお手紙でも大切なんです。まだ会ったこともない人に、友達になりましょうって、いきなり言われたら、驚いちゃいますよね?」

「た、たしかに…。びっくりしちゃうかも…。」


 ──私、とんでもないことをしようとしていたのね…。


 ララからの説明を聞いて、ようやく四人に止められた理由が分かった。自分の言動を振り返って、しゅんとする私を、励ますようにララが言う。


「大丈夫ですわ。お嬢様には、私がいます。一緒に婚約者様へのお手紙の内容を考えましょう。そのためにも、お手紙や本を持って来たのですから。」

「…どんなご本を、もってきてくれたの?」


 ララの手元の本を覗き込むと、いろいろな言葉や花の絵が載っている。


「季節に合った言葉や絵が載っているんです。これらを書けば、手紙を書いている時に見た季節の美しさや、風景を伝え合うことができるんです。難しい言葉もありますから、一緒に頑張りましょう。」


 ララが優しい笑顔を向ける。幼い私でも分かるように、手紙や本を見せながら、丁寧に教えてくれるララ。私の心は、ララへの感謝の気持ちで、いっぱいになった。


「ありがとう、ララ。…私、がんばるわ!」


 二人で微笑み合ってから、お気に入りの便箋を取り出す。そうして、ララが持って来てくれた手紙や本を読みながら、書き進めていった。


 ◇◇◇


「できたー!!」

「流石です!お嬢様!!」


 書き終わったのが嬉しくて、思わず便箋を掲げた私に、ララが拍手してくれる。完成した手紙には、ルカス様に伝えたい言葉や、私の好きな花やお菓子の絵が、沢山詰まっている。


「あとは、ふうとうにいれて、ふうをするだけよね!」

「ええ、そうですね。」


 慎重に便箋を折り畳んで、封筒に入れる。この封筒は、便箋と同じデザインの可愛らしいものだ。封蝋は火を使うので、ララがしてくれた。


「えへへ、ルカス様、よろこんでくれるかな?」

「きっと喜んでくれますよ。お嬢様が、こんなにも頑張って書いたんですもの!」


 手紙を胸に抱く私に、ララが笑顔を向ける。温かな気持ちのこもった手紙を、伝書鳩に託した。そして、返事が届くのを、今か今かと、楽しみに待った。








 ────けれど、手紙の返事が届くことはなかった。

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