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In floreー無彩色の君へ  作者: ちょこまる。
第一章 幼少期編・アイリスの日常

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1.ドタバタ!8歳の誕生日!

 今、私の目の前には、一人の少年がいる。窓から差し込む光を受けて、彼の蜂蜜色の髪と瞳がキラキラしている。思わずぼーっと彼を見つめていると──


「おい。…俺の話、聞いてるのかよ。」


 酷く低い彼の声が、私の鼓膜を震わす。ハッとした私が、曖昧な思考を正そうとしているうちに、再び彼が言葉を紡ぐ。


「ハッ。…もう一度言ってやる。俺の話、聞いて「いえ!聞いていませんでした!」」


 彼の質問に間髪入れずに答えた瞬間、私の眼前には彼の手刀が迫っていた。


 ──な、何で──!!??


 その途端、私の頭の中で、これまでの出来事が駆け巡った。


 ◇◇◇


 とある春の日。

 窓からは、温かな日差しが降り注ぐ。白いフリルのワンピースを纏った私は、小さな花束をもち、鏡の前をクルクル回っていた。

 私は、ルミエール王国の一角を担うマーキア伯爵家の一人娘アイリス・マーキア。父譲りの空色の瞳と、母譲りの桃色の髪、そして、頭上のクルンとした髪が、私の自慢!


「お嬢様、よくお似合いですね。…プレゼントは、お気に召しましたか?」


 専属メイドのララが、キレイな黒い瞳を細めて、笑顔で尋ねてくる。幼い頃からそばにいてくれたララは、私にとって本物の姉のような存在だ。


「もちろん!だって、大切な家族からのプレゼントだもの。」


 今日は、私の8歳のお誕生日。今着ているワンピースは、お父様とお母様が、花束は1歳年下の弟・マシューが、朝餉の時にくれたプレゼント。朝から大好きな家族に祝われたことが嬉しくて、ニコニコしながら鏡を見てしまう。


「…お嬢様、そろそろ約束のお時間ですよ。執務室へ向かいましょう。」


 花瓶に花束の花を挿していると、ララが、優しい声で言う。


「うん!ララ、おててつなごう!」


 ララがクスッと笑いながら、手を差し出してくれる。ギュッと、その手を繋いだ私は、ルンルン気分でお父様の執務室へ向かった。


 ◇◇◇


「早速着たんだね。よく似合っているよ。」

「ええ、本当に。天使みたいだわ。」

「姉様、かわいい。」


 執務室に入るなり、笑顔で褒めてくれる家族に、思わず頬が緩む。付き添ってくれたララは、いつも通り、私の後ろに控える。私はマシューの隣に座って、家族団欒の時間を過ごした。しばらくすると、お父様が真剣な表情に切り替えて、口を開いた。


「今日は大切な話があるんだ。……アイリスの婚約者が決まったよ。」

「…こんやくしゃ、ですか?」


 私が聞き返すと、お父様が頷く。


「ああ、そうだよ。将来、アイリスが結婚する相手…これから先、互いに支え合っていく相手を、”婚約者”というんだ。」

「けっこん…、ささえあっていく…。」


 お父様の話を理解しようと、相槌を打ちながら聞き、内容を咀嚼していく。


 ──それって、それって…


「とーってもステキですわ!私、はやく会いたいです!」

「──うん、アイリスなら、そう言うと思ったよ。ただ、少し厄介でね…。」


 目をキラキラさせながら話す私に反して、お父様が苦笑いしながら、言葉に詰まった。それを見かねたお母様が、黄緑色の瞳を優しく細めて、口を開く。


「アイリスの婚約者は、ルカス・フォン・フィークス様よ。フィークス侯爵家の末っ子なのだけど…。…癇癪も…いつもプンプンしているそうなの。」

「いつもプンプン…。」


 私に分かりやすいよう、お母様が頭に両手の人差し指を立てる。そんなお母様の言葉と仕草を元に想像したのは、林檎みたいにお顔を真っ赤にして怒るルカス様と、すぐ怒られちゃう私。想像して青ざめた私が、アワアワしていると、少し落ち着いたのか、お父様が口を開く。


「…ただ、彼は誰とも会いたくないそうでね。婚約者同士の顔合わせは、未定なんだ。けれど、婚約が決まったのに、このままなのも良くないと思っていてね。…アイリスは、どうしたい?」


 お父様が一通りの事情を話してから、じっと私を見つめる。


 ──私がしたいこと…、誰とも会いたくないと思っている相手と、どうやって仲良くなればいいのかしら?


 まだ8歳の私は、家族以外で、同世代の子供と交流したことが殆どない。だから「仲良くなる方法」なんて、ララとの経験くらいしか思いつかない。

 ふと、後ろに控えているララを見つめる。引っ込み思案で、泣き虫だった私に、ララはずっと関わり続けてくれた。長い時間をかけて、私たちは仲良くなったのだ。そこまで考えた私は、お父様に向き直った。


「私、ルカス様に、お手紙を送りますわ!ずっと送り続ければ、きっと、なかよくなれますわ!」


 ララが私に関わり続けて仲良くなったように、私もルカス様に関わり続ければ、仲良くなれるかもしれない。そう思った私は、笑顔で宣言した。


「…そうか。アイリスは本当にいい子だね。婚約者同士、仲良くなれるように頑張るんだよ。」

「困ったら、お母様に言うのよ。力になるわ。」

「姉さま、ぼくも、力になる!」


 温かい眼差しを向ける両親と、ギューっと腕に抱きついてくる弟。そして、私の後ろには、ずっと静かに見守ってくれているララがいる。少し不安だったけど、みんながいれば、きっと大丈夫。


 ──婚約者同士、仲良くなれるように。


 心の中で、お父様の言葉を繰り返す。

 私にとって、初めての目標──“ルカス様と仲良くなること”。

 目標を実現するためにも、私がやることは、ただ一つ。私は、いつも持ち歩いているウサギのポシェットから便箋を取り出し、大きな文字で「お友だちになりましょう!!」と書く。


「さっそく送りますわー!!」


 私がそう言って、ソファから立ち上がった瞬間、凄まじい速さで四人に取り押さえられた。


 ──な、なぜ──!!??

初めての小説…分からないことばかりですが、書き出してみると、とっても楽しい!今後も気長に続けます〜

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