23.まぁるい!お日様のお花!
「お、アリスとララさん!買い出しか?」
「ぁ、アキレア。うん、そうなの。」
「そっか!俺にも持たせてくれ。」
「ありがとう、…重くない?」
「ははっ。このくらい大丈夫だ!俺に任せてくれ!」
ララと一緒に、リリーに頼まれた買い出しをしていると、アキレアに声をかけられた。ララは彼に一礼すると、私の後ろに控える。一方アキレアは、私の抱えていた荷物をひょいっと片手で持って、もう片手で私の手を自然と繋いでくれる。
最近はいつもこうだ。アキレアと知り合ってから、一週間。リリーやララと出かけていると、どこに行っても彼と会う。というのも、彼はいろんな人のお手伝いをしているらしい。リリーのパン屋さんのお手伝いや迷子探し、人助けなどなど、「困っている人を放っておけない。」と言って、いつも助けているみたい。
リリー伝いに、私とリリーが出会ったきっかけや私が王都に慣れていないことを知ってからは、気にかけてくれているのか、出会うたびに手を繋いで一緒にいてくれる。
「アリス、ちょっと寄り道しないか?」
「え?」
不意に、アキレアに尋ねられて、顔を上げる。彼が指差す先には、広場があった。広場には色とりどりの花が咲き乱れている。
「わぁ…、うん!寄り道する!したい!」
「ははっ、元気だな!ララさんも大丈夫か?」
「ええ、アリスが行きたいなら行きます。」
「よし!じゃあ、このベンチに座ろうぜ。」
私とララは、アキレアに案内されたベンチに座ろうとした。けれど、荷物を置くことを考えると、三人とも座るのは難しそう。そう思った私は、ララの袖口をちょんちょんと引いた。
「ふふっ、はいはい。こうですか?」
「うん!」
ララに先に座ってもらってから、その膝上に座る。ララのお膝は、私のお気に入り。私は思わずニコニコする。そんな私達を見つつ、アキレアは荷物を置いて、隣に座る。
「本当に仲良しだな。二人は姉妹なんだっけ?」
「ええ、そうですよ。アリスは、私の可愛い妹です。」
「確かに可愛いよな。いつも笑顔だし。」
「そうなんですよ!けれど、昔はそうじゃなかったんです。いつもぬいぐるみを抱きしめて、顔を隠しちゃって…。けど、寂しがりやで、ひょこっと顔を出しては、私をこっそり見つめたり、とことこと私の後を追ったり、それでいて目が合うとすぐ隠れちゃって…けれど、隠れているつもりみたいでも、バレバレで!それが可愛くて可愛くて!しかもしかも!」
アキレアが話題を振った途端、ララが昔の思い出を話し続ける。
──ララ、流石だわ!本当に演技が上手ね!
私はララに頭を撫でられつつ、そう思った。私が貴族令嬢であることをバレないためにも、ララは私の専属メイドであることを隠し、お姉ちゃんに成り切ってくれている。いつも冷静沈着で優しいララは、私のお姉ちゃんを演じる時、こういう風に早口になることが多い。本人曰く「私がメイドだとバレないためにも、いつもとは違う姿を見せないといけませんから。……我慢しなくていい絶好の機会ですし…。」だそうだ。
──後半の言葉の意味は、よく分からなかったけど…やっぱりララは凄いわ!
そう思いながら、私はアキレアを見つめた。ララが話し続けている間も、彼は「へぇ、そうなのか!」「ははっ、面白いな!」みたいに笑顔で相槌を打っている。
──やっぱり、お日様みたいな子だわ。
彼の笑顔を見ていると、こっちまで笑顔になる。アキレアと関わったのは、まだたったの一週間。だけど、何度も話しかけられたり、助けられたりするうちに、彼は信用できる人だと思えた。そう思いながら彼をじっと見つめていると、彼とパチリと目が合った。
「ん?どうしたんだ、アリス。俺の顔に何かついてるか?」
「ううん。アキレアは、いつもキラキラしてて、お日様みたいって思ってたの。」
「ははっ、そうか?ありがとう、嬉しいぜ!…そうだ!ちょっと待っててくれ。」
「…?」
アキレアは少し頬を染めながら、明るく笑うと、何かを思いついたのか、花壇に近寄った。花壇の花を摘む…かと思いきや、その近くに生えているお花を摘んで、戻ってきた。
「はい、これ。広場で育ててる花じゃないから、安心してくれ。色んなところで咲いてるんだ。」
「わぁ…。」
「まぁ、とても綺麗ですね。」
私はララと一緒に差し出された花を見つめる。赤、白、黄色、オレンジにピンク…明るい色の小さな花が、中心にまぁるく集まっていて、とてもかわいい。私は思わず手を伸ばした。
「お、ちょっと待っててくれよ。」
彼は、私の手が触れる前に、茎下のギザギザとした葉を取ってから、私に手渡した。私はお礼を言うと、夢中で花を見つめた。
「葉のないところを持つようにな。……気に入ったか?」
「うん!とっても気に入ったわ。こんなに素敵な花をありがとう。このお花って、何てお名前なの?」
「お、アリスは初めて見るのか?これはな、俺と同じ名前なんだぜ!」
「アキレアと同じお名前?…ってことは、このお花はアキレアって言うの?」
「ああ、その通りだ!俺のお気に入りの花なんだよ。」
「お気に入りのお花…。」
私は、アキレアの花と、目の前の彼を交互に見つめた。明るい色の小花がたくさん集まった綺麗な花と、そんなお花に負けないくらい明るくて眩しい彼。
「アキレアにピッタリのお花ね!」
「ははっ、そうだろ!」
アキレアが満面の笑みを向けてくれる。その笑顔を見ていると、私も嬉しくなって、ララと一緒に微笑み合った。
──王都に来てから、リリーやアキレア…素敵なお友達ができて、本当に嬉しいわ………そうだわ!
私は王都に来てからの二週間でできた友人との思い出を振り返りながら、とあることを思いついた。
──ルカス様にも、私のお友達のことを伝えたいわ!そのためにも…
アキレアからもらった花を見つめる。
──この花を一緒に贈れば、アキレアの明るさが伝わるかも。そして、リリーやアキレアとの思い出を、たくさん伝えるの!
そう思った私は、パッと顔をあげて、アキレアを見た。
「ねぇ、アキレア!私、このアキレアの花を贈りたい人がいるの。もっと摘んでもいいかしら?」
「贈るって…そんなに気に入ったのか?…どこにでも咲いてるし、摘むのは大丈夫だと思うけど。そんなに珍しくないし、贈るのには向いてないと思うぞ?」
「ううん。私はアキレアがいいの。この花の明るさをお裾分けしたいの。」
「…そうか。分かった!じゃあ、俺も摘むのを手伝うぜ!」
「私も手伝いますよ。」
「二人とも、ありがとう!」
そうして私達は、アキレアの花を摘んでから、リリーのパン屋さんに戻った。
「もう!遅いわね!…って、何でアキレアまでいんのよ!てか、その大量の花は何!?アリス!説明しなさい!!」
「ぇ、えへへ、ごめんなさい…。」
戻ってからは、リリーによる追求の嵐だった。リリーは「あぁ、もう!本当にあんたはバカなんだから!」と言いつつ、私の髪や服についた小花や葉を綺麗に取ってくれた。そんなところも優しくて好きだなぁと思いつつ、私はそんな友人の素敵さを、どんな風に伝えようか、ニコニコ笑顔で考えた。




