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ラインハトルの塔 (2026.6)  作者: MAYAKO


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ホントはこれが1話、もしくは序章でした ―路地裏の少年と少女―

今晩は。

今回はちょっと長いです。

 その日、少年は死ぬつもりだった。


 この世界は魔法の世界。

 魔法が支配している世界だ。

 病気も怪我も魔法で解決できた。

 いや、解決できない病気や怪我もあったが、それは稀であった。

 魔法は、一部の老いも先延ばしにできるのだ。


 そんな世界で少年は一人取り残された。

 その少年は、魔法無効なのだ。


 怪我をしても病気になっても、自然治癒がメインである。

 この世界、魔法の力が強すぎるため、医療が発達していない。

 薬草はほんの補助でしかなく、病気や怪我は、最終的に魔法で解決した。

 そんな世界で、あえて魔法を使わない医療の発達に貢献する者など皆無だった。


 必要ないのだ。


 ……この子は成人できないかもしれない……

 ……なんともまぁ不憫な子であろうか……

 ……重い病になれば、それまで……

 ……怪我の具合によっては、それまでだ……

 ……分家とはいえ、公爵家の跡取りがアレか……

 ……アイツは、なんという子を産んだんだ!……

 ……子も妻も離縁しろ!本家の命令だ!……

 ……捨ててしまえ!……

 ……公爵家だぞ!……


 少年は小さい頃から呪いの呪文を沢山浴びせられた。

 母親は一生懸命育てようとしたが、病で死んでしまった。


(実は母親も魔法耐性が高かったのではないか、と少年は思っている)


 父親は塔の虜で、家庭を顧みなかった。

 そして父親が連れてきた新しい母親は浪費家で、敵であった。

 何とかして財産を独り占めにしょうと、この母親は少年の命を狙った。


 この母親に少年は鍛えられる。

 気を抜くと、死が訪れるのだ。


 戦いの日々が少年を強くする。しかしそれと同時に少年の孤独は増し、心は虚しくなっていった。


 本家から派遣された執事とメイドも信用しなかった。

 助けてはくれるが、明らかに暗躍している。


 少年は自分の立ち位置を理解した。

 教えたのは召喚魔法で喚びだした小さなおじさん、お姉さん達だ。


 父の書庫で本を読みあさり、薬草や人体の仕組みを学習する。

 誰も助けてくれないのなら、自分でどうにかするしかない。

 薬草を作り、鍛練を怠らなかった。


 そして少年が強くなり、傭兵として活躍し始めると、周囲の者達は手のひらを返した!


 使い道があるのだ!


 魔法攻撃が無効の戦士。

 相手によっては無敵である。

 どうにかして、少年を利用しようと大人達が群がり始めた。


 そんな世界に少年は嫌気が差した。

 日々、苦闘の連続だ。

 未来は見えない。予想も想像もできない。

 理解者が一人もいない、できない。

 少年はそう思っていた。


 少年は森の中を彷徨う。

 そしていつしか街の路地裏に辿り着く。


「このまま塔に挑戦して、登れるだけ登って……父上みたいに……?」


 どこかで切ったのであろうか、森の中で怪我をしたようだ。

 左の人差し指から、血が流れていた。

 路地裏の湧き水で洗い流し、圧迫による止血を試みる。

 魔力を含んだ水でさえ、少年には効果が無い。

 この程度の傷だったら、この街の湧き水で簡単に回復するのだ。

 血は水に混じり、大袈裟に広がり流れていく。

 

  ……カァー……


「カラス?あ!黒カラスだ!」


 この世界には白カラスが多い。

 黒カラスは希少種なのだ。

 黒カラスは乱獲によって絶滅の危機にある。

 彼らは魔法耐性が高いのだ。

 その高い魔法耐性に目を付けた人族。

 彼らはカラスを生きたまま盾に打ち付け、魔法防御としたのだ。


 捕まり、生きたまま盾にされ戦場で殺されていく黒カラス達。

 魔法防御の盾にさられ、傷ついても治療してもらえない。

 少年は黒カラスにいつも自分を重ねる。


 そして黒いカラスは凶兆でもあった。

 戦場で死体に群がるカラスは、忌むべき存在でもあったのだ。

 不吉の象徴、それは黒いカラスなのだ。


 バンブは、一族から忌むべき存在として扱われてきた。

 そんなバンブが、黒いカラスに親近感を抱くのは自然な流れだった。

 いや、魔法耐性が高いだけでも彼らはバンブの友達なのだ。


「捕まる?速く逃げろ!」


 青い空に黒いカラス、彼らは見た目以上に大きく目立つのだ!

 大空に向って叫ぶバンブ!


 ヒュン!


「あっ!?」


 その黒カラスに矢が命中する!


「!?」


(なんてことしやがるっ!)


 怒りが込み上げ、走り出す少年!


「どこだっ!?」


 カラスは身動きできず、落ちていく。

 そこには5名の若者がいた。


 パーティーだろうか?


(襲撃者は見つけた!それよりカラスだ!どこに落ちた!?)


「おいユトラン、お前の弓しょぼいな、使いずれぇ」


「か、返して下さい!ユトランの弓!」


 ガラン!


「ほらよ、先に行くぜ!遅れるなよ?1時間後塔の前だ」


 矢を拾うと走り出す少女。


「どこ?どこに落ちたの!?」


 バサ……バサバサッ……


 矢の刺さったカラスは虚しく羽を動かしていた。

 少女はカラスを見つける。

 そしてその横には……。


(男の子?あ!捕まえた!)


 少年はカラスを捕まえたが、どうすることもできない。


(カラス、ごめんよ僕ではどうしようもないんだ……あっ?)


「そこにいたのね!」


「!?」


 少女はカラスに駆け寄り、呪文を唱え始める。


「あのね、しっかり握っていて!」


「え?」


「今からユトランが治療するから!ああ、速くしないとこの子が死んじゃう!」


 そして詠唱が始まる。


(簡易高速詠唱!?)


 矢を魔力で包み、(おもむろ)に引き抜く!


 ガアアアアッ!


「ごめんなさい、ごめんなさい!痛いよね?でもちゃんとユトランが飛べるようにしてあげるから!」


 再び呪文を唱え始める少女。

 横で見ている少年には、まったく興味を示さない。


(凄い集中力だな、それに高速詠唱!でも簡易じゃ)


「あれ?あれ?うまくいかない!?どうして!?」


「黒カラスは魔法防御が高いんだ」


「え?回復魔法も効かないくらい高いの!?」


「そうだよ、知らないの?」


「ならば!ホオオオオオオウウウウウウホケキョ!」


(!!!!!!!!!!!)


 驚く少年。


(本格詠唱だ!それも詠唱が速いっ!?)


 バサバサッ!


 翼を広げ、大空へ飛び立つ黒いカラス!


「よかった!あ、時間がっ!?」


 少女は振り向きもせず走り出す。


 ……遅れちゃうよぉ……


 その姿を呆然と見る少年。


 黒カラスを助けた?皆忌み嫌うのに?


「慌ただしい女の子だなぁ……!?……え?」


 少年の人差し指の怪我がなくなっていた。


「え?」


 消えているのだ、跡形もなく!


「どういうことだ!?」


 少年は路地裏で少女に出会った。

 少女は路地裏で少年に出会ったことを、憶えていない。

 

「カラスのとばっちりで僕の傷が癒えた?……あ、ありえない……」


 目の前の光景が信じられない少年。

 しかし、少年は、取敢えず死ぬことをやめた。


「ユトラン……ユトランッ!」


 少年は少女の名前を繰り返し叫んだ!


 そう、彼女は言ったのだ、そこにいたのね、と。


 あれは傷ついた黒カラスに投げかけられた言葉だ。

 しかし、少年には、まるで自分に投げかけられたような気がしてならない。


 そこにいたのね。

 ああ、ここにいたよ、ユトラン。


 今回はここまでです。

次回サブタイトルは未定です。

投稿も未定です。

毎回ご愛読ありがとうございます。

今回は、二人の出会い編でした。

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