第二六話 賑やかな食卓
今晩は。
投稿です。
「これは何です?」
オニギリを初めて見るユトラン。
「これはロボウの国の食べ物さ」
「バンお兄ちゃん、なんて言う料理なの?お名前は?」
「オニギリだよ」
「鬼斬り!?つ、強そうな名前!」
「一個、食べてみる?味見に!これは中に梅干し、こっちは鰹節でこっちが焼き明太子」
「それと今作っているのが、塩昆布ですぞ」
にぎにぎ。
器用にロボウがご飯を、ふっくらと握る。
かなり高齢に見えるロボウ。
オニギリを握る手は血管が浮き出て、シワシワである。
しかし口調も立振舞いも、衰えをまったく見せない。
「メンタイ……?」
知らない食材名ばかりで戸惑うユトランる。
「……バ、バンお兄ちゃんのお勧めは?」
「梅干しかなぁ、あ、種は抜いてるよ」
「種?」
ノリに巻かれた小さなオニギリ。
それを手にした瞬間!
ユトランの想像力が暴走し始めた!
「ぱく」
「どう?」
「お、美味しいっ!?」
(おいしいっ!き、きっとこれは伝説の英雄の食べ物だったに違いない!そうよ!だって鬼を斬るんだよ!?これを食べて、英雄は鬼退治に行くんだ!片手で持てそうだから、旅の途中、皆に配るんだろうなぁ)
「ユトラン?」
(鬼さん達は気性が荒く、強くて大きくて乱暴だから、皆困っているんだ!そこで……)
ここでユトランはルンルンを見る。
「ユトランさま?」
(力強い人狼族に鬼斬りを与えて……)
ロボウとチラ見するユトラン。
(知恵の詰まった人族にも与えて)
そしてバンブを見る。
(チキン?うーん、人鳥族にも与えて家来にする!そして鬼さんを懲らしめるのよ!それから鬼さん達を諭して皆で仲良く暮らす!これはそんな英雄譚の食べ物!)
「おーい、ユトラン?帰っておいで!」
「え!?あ?ご、ごめんなさい!鬼斬りって凄い食べ物なんですね!」
「おお、そうじゃよ!」
自国の食べ物を誉められて、とても嬉しいロボウ。
(いや、絶対なんか勘違いしているぞ、ユトランは!)
そう思うが、口には出さないバンブ。
「んじゃぁ、あたい肉焼くね!森で魔鹿を獲ったから」
「あ、手伝います!ホラーお姉ちゃん!」
「「!?」」
「ルンルンでいいよ、ユトランさま!恥ずかしいぜ!……みんなの前で……」
(坊ちゃん、ユトランさまは人たらしですか?あのルンルンが恥ずかしい!?)
(精霊の囁きだろ、欺すことはナイと思うけど)
「では私もお手伝いを致しましょうかな」
「あ、ロボウはオニギリを頼むよ!肉と他の料理は分けて調理しないと!料理の基本だぜ!」
「え?どうなるの?ホラーお姉ちゃん?」
「お腹痛くなるし、トリとかだったら麻痺が出たりする。魔鹿とか魔猪なんかの生肉は特に要注意だぜ」
ここでロボウが一言。
「マジかぁ」
「……」←バンブ。
「……」←ルンルン。
「え?」←ユトラン。
「あひゃひゃひゃひゃ」←ロボウ。
独特な笑い声で、笑い出すロボウ。
渋いクールなスタイルが台無しである!
(なぁルンルン、ロボウのヤツさぁ、これがなければ渋くてカッコいい執事なんだけど)
(ですよねぇ、バンブ様)
「?」←まだわからないユトラン。
「あ!」←わかったらしい。
そして笑い出すユトラン!
「あははっ!うふふふふっ!」
「え?」
驚くバンブ。
「バ、バンお兄ちゃん!だって魔鹿とマジかぁ、よ?うふふっ」
中々笑いが止まらない二人。
(え?ユトラン、ロボウと同じ感覚?)
「ロボウ様って、面白い方ですね!」
「ロボウで結構ですぞ、あひゃひゃひゃひゃ」
(バン様、まだ笑っているよ)
「んじゃ、あたいはこっちで肉切って焼くぜ」
そして綺麗に調理され、一口大に焼かれた魔鹿が大皿に列ぶ。
「さぁ食べようか!」
そして綺麗に声を合せる4人。
「「「「精霊よ、今日の糧に感謝します!いただきますっ!」」」」
ブンドルの街の住人達は、食事前に必ず感謝の言葉を述べるのだ。
4人での賑やかな食事。
場所は厨房のすみっこ、やや大きめのテーブルだ。
食堂は勿論あるのだが、広すぎるので今は使用していない。
そこまで手が回らないのだ。
「!」
「どうしたの?ユトラン?」
「……誰か来ました」
「え?」
食事中やトイレは無防備になりがちである。
クライマーズ48のユトランは、食事中必ず簡易結界を張り巡らせる。
それは塔内でも外でも同じである。
次に反応したのはルンルンだ。
「あ、この匂い、大丈夫だよ」
コツコツと足音が近づき、カチリ、とドアが開かれる。
今回はここまでです。
次回サブタイトルは 第二七話 チキンキャロット家の住人達 の予定です。
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